Snowly Kelz 〜琺夜族語り〜

 現実世界において、『人種』という言葉は生物学的に誤りであると言われています。
ネグロイドもコーカソイドもモンゴロイドも、みんな同じホモ・サピエンスですからね。「黒色人種」とか「白色人種」とかいう言い方は生物学的に間違っているだけでなく、時によっては差別用語となることも。

 しかし、
 この物語の世界では、本当に「人種」なるものが存在します。
まずは普通の人間。勿論、黒白黄色の肌の奴ら。
 それから、神様の子孫とされる、神霊属人〈ナプトびと〉と呼ばれる亜人間。
 ナプト人はほとんどの場合、ぱっと見普通の人間です。しかしながら、異なる人種間の交配で子供を作ることはできません。できたとしても、子供は繁殖能力を持たず、次世代の子孫を残すことができません。例外もありますが。


 琺夜族(ほうやぞく)は、思いっきりこの例外に当たります。破壊と殺戮の神ディーシェス(Deashes)の子孫である彼らの別名は、スノウリィ・ケルズ。「凍れる火山の魔人」です。
 琺夜族はあらゆるホモ属(Not同性愛)との間に子孫を残すことができます。人間だろうが他のナプト人だろうが、たぶん類人猿だろうがお構いなしの脅威の生殖力を持っています。が、女性は生涯たった一度しか妊娠できません。
 だから琺夜族の男性は、子供を残す為にも他人種の女性にちょっかい出します。
 そのような事情で、彼らの国、琺夜国では基本的に男女同権にも係わらず、一夫多妻が認められています。この国では妊娠前後を除き、夫が妻を養う法的義務はないので、貧乏人でも大勢の奥さんを持つことが可能ですが、婦女暴行は極刑、セクハラで懲役刑です。

 琺夜族はサフェイス暦の紀元前には“琺”(ファラン)族と“夜”(ノワール)族という異なる種族でした。ファラン族は破壊の神ダイシェス(Dieshes)の子孫で、モンゴロイド系の遊牧民族。ノワール族は死の神ディーシェル(Deaciel)の子孫で、コーカソイド系の狩猟民族。「黎明の書」を見て頂けば分かる通り、死の神と破壊の神は父子の関係です(おまけに名前も似ています)。だからかどうなのか、二つの移住の民がフィディック山脈辺りで出会った時、太古の恋人達は人種を越えて結婚し、突然変異の子供を作ることができました。
 その子孫は移動を続ける生活を止め、ガシュクジュール盆地の現在の琺夜国の辺りで定住を始めました。
(詳しい地図はその内UPします。)こうして琺夜族という人種が生まれたのですが、彼らは自分達の神様も、名前と性質が似てるからって一緒くたにしてしまいました。
 【ファラン族とノワール族は異なる歴史を歩みますが、ファラン族は紀元前、ノワール族はサフェイス暦1460年代に絶滅しました。】

 琺夜族は「戦と楽を愛する民」。好戦的で、文字通り国民皆兵(女性・未成年者含む)です。はいはいと同時に乗馬を覚え、歩けるようになったらすぐに戦闘訓練が始まります。武器と楽器の扱いが得意。普通に暮らしてる時でも、戦の前でも後でも、歌って踊って演奏する陽気な人々。
 小柄で髭が生えず、肌が白くて彫りの深い顔立ち。翡翠のような翠(みどり)色の瞳に、濡れ濡れと輝く黒髪の種族。夜行性だったノワール族の名残で、辺りが暗闇に閉ざされると赤外線によって熱を見ることができます。夜になると目が赤く光ります。

 ↑これが本来の琺夜族ですが、国際結婚が振興しすぎて、今や純血の琺夜族は僅か。
 それでも外見的形質は遺伝し易いようで、琺夜国には黒髪で翠の目の美人がたくさん。ただし、平均身長が年々伸びています。
 琺夜国内に限っては肥満の傾向はありませんが、どうやら琺夜族は種族的に肥満し易い体質のようです。軍事訓練から離れて外国で暮らす琺夜族は、大抵まるまると良く太っています。

 琺夜国の公用語は、世界標準語とスノゥリェンヌ語。ただし、周辺の国々との付き合いの為、セルズ語やラニオ語の習得率も高し。商人達はほぼ全員ミストーナ語を解します。

♪「時計台駅広場にて」 Music by Vagrancy.