――神の使いなる乙女よ 天に帰らないでくれ
神の使いは一人ではないが 私にはそなたしかいない
オシルが言った

天かける羽衣持つジァヴは 地にとどまることを許されぬ身
若者の願いを聞き入れることはできない

――わたしはあなたに父なる神の祝福をさずけました
あなたはヒペルニアの偉大な戦士
必ずやグラマール勢に打ち勝つでしょう

羽衣を翼に変え 飛び立たんとする乙女を
オシルはしかと抱き締めた

――私が欲しいのはそなただけだ!
そなたが私のもとにとどまるなら グラマールもヒペルニアもいらぬ

父なる神は オシルを祝福した
オシルの腕の中
緑の黒髪持つジァヴはとどまった
二度と飛び立つことのない 冷たい緑の石となって

翡翠の像となった乙女を抱き
取り返しのつかぬ過ちを犯したオシルは咽び泣いた

――ああジァヴよ! 父なる神よ!
願わくば 人でありながら女神を求めた私を罰せよ
父よ 罪なき乙女にむごい仕打ちを!
オシルは冷たき乙女の髪に菫の花を挿し カリストーヴァの山に隠した

カリストーヴァ山の翡翠にときおり紫色が混じっているのは
こういうわけなのだ


『巫女クドルーンの語り 戦乙女ジァヴの章』より抜粋