Under yonder verdant yew
love solfege 『奔流の協奏曲』より

"Lord Randall"のタイトルで知られる、
スコティッシュ・ボーダーズ地方の伝統バラッドをオマージュしたマーダー・バラッド。
古臭い英語も魅力。
Under yonder verdant yew♪リズミカルで大好き。

作詞・歌唱共に真名辺あやさん。

ご本家様特設ページ

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勿論惚れたらお金も払えます!
サブスク各種でも聴けます!

「おお、どこに行っていたの、息子よ?
どこに行っていたの、私のハンサムさん?
じきに夕暮れよ」
「緑の森に行っていたんです、母さん。
狩りで疲れてしまったので、是非とも横になりたいんです」

「それで、そこで何奴どいつに会ったの、息子よ?
それで、そこで何奴どいつに会ったの、私のハンサムさん?
じきに夕暮れよ。教えて、坊や」
「恋人と会ったんです、おお、恋人と会ったんです。
狩りに疲れてしまって、是非とも横になりたいんです」

「あそこの緑のイチイの下で、是非とも横になりたいんです。
日が沈む前に、可愛いたからと賢い犬らと。
俺は往きます。二十と四頭の乳牛を、あなたに遺します、
最愛の母さん。
※1それから俺の金と銀は愛しい妹に、
家と土地とはきれいな弟に」


「おお、私の息子はどうなったの?
おまえの恋人が、何をくれたの、ねえおまえ?
もうすっかり青ざめているじゃない」
「あのひとは鍋で揚げたウナギをくれたんです、母さん。
狩りで疲れてしまったので、是非とも横になりたいんです」

※2それで、何奴どいつがおまえの食べ残しを食べたの、息子よ?
何奴どいつがおまえの食べ残しを食べたの、私のいい子のハンサムさん?
おまえのたからも犬らも脚を伸ばして、
すっかり冷たくなっているわ。
おお、毒を盛られたようね、息子よ」
「おお、母さん。そうです、毒を盛られたんです。胸が痛んでいるんです」


「それで、そこで何奴どいつに会ったの、息子よ?
そこで何奴どいつに会ったか、言ってくれるわね、私のハンサムさん?
もうすっかり青ざめているじゃない。教えて、坊や」
「恋人と会ったんです、おお、恋人と会ったんです。
胸が痛んでいて、是非とも横になりたいんです」

「あそこの緑のイチイの下で、是非とも横になりたいんです。
日が沈む前に、可愛いたからと賢い犬らと。
俺は往きます。二十と四頭の乳牛を、あなたに遺します、
最愛の母さん。
それから俺の金と銀は愛しい妹に、
家と土地とはきれいな弟に」

「それで、息子よ、おまえの恋人には、何を遺したいの?
日が沈む前に、緑の森にいるおまえの恋人には?」
「俺は往きます。あのひとには、地獄と永劫消えない業火を遺します、
母さん。
あそこの緑のイチイの下で、そろそろ横になる時です。
俺のたからと犬たちと、愛するひとへの呪いと共に。
おお、あそこの緑のイチイの下で」

※1. "my beloved sister"と"my fair brother"は「愛しい姉さん」、「美しい兄さん」かもしれん。
 主人公、土地の領主なんだろうから、brotherはたぶん弟さんだろうけど。
※2. "And what got your leaving, son?"。この"leaving"、複数形になってないけど「食べ残し」でいい?
 「何があなたの死去をもたらしたの?」みたいな意味じゃないよね?

 毒入り鰻のフライを恋人に振る舞われ、残り物を食べた鷹たちや猟犬たち諸共、今まさに死のうとしている貴族の男と、その母親との対話。何だこのシュールな場面。恋人が男に毒を盛った理由は誰も知らないし、どこかで明かされることもない。詩では珍しいことでもないけど、恋人をmy true-loveって呼んでるの凄いな。まあ、「我が真実の愛」に裏切られてるんですけどね。
 最近、Cécile Corbelさん関係で調べものしててチャイルドバラッド読んでたから、個人的にタイムリー。嬉しい。
 歌のリスペクト元に関しては、こちらのサイト様がとても詳しい。
 主人公がベッドではなく「緑のいちいの木(verdant yew)の下に横たわりたい」と言うのが、真名辺さんのオリジナル要素。だよね?バラッドってヴァージョン違いいっぱいあるから、私の知らない元ネタがないとは言い切れないが。同じ主題の"Henry My Son"というタイトルのバラッドもめちゃくちゃあるらしい。
 ヨーロッパイチイの木は、古くから弓の材料になり、また、果実以外は強い毒性があって矢毒の材料にもなったことから、「死」を強くイメージする植物だった。主人公が恋人に盛られたのは、このイチイの毒だったかもしれない。一方で、この木は寒さや乾燥、剪定に強い常緑樹で、樹齢数千年を重ねることもあり、「不死」や「再生」、「永遠」という真逆のイメージも持っている。バラッドの本場たるイングランドやスコットランドでは、教会、墓地の敷地によく植えられている木でもあるので、主人公が「櫟の木の下」に横たわろうとしているのは至極尤もなことである。

 オーギュスト棒さん曰く『非常にセカセカしている(落ち着きのない)曲』。まあ、何てころころと耳に心地いいピアノに、心弾む楽しげなボーカルが合わさっていることでしょう!とても人が人を呪いつつ死に往く場面を歌ってるとは思えませんね!まあ、トラディショナルの殺人マーダーバラッドも、めっちゃ明るくて楽しそうな曲に合わせてるのがいっぱいあるんで、ある意味伝統継承?

 ところで、真名辺さん作詞の殺人バラッド、Rose Pannaさんが歌うbonny ebony black swan(『metamartia』収録)も好きなんだよな。あっちは日本語歌詞で、歌詞の内容に相応しい重く激しく劇的な曲調だけど、テーマのブラックさと裏腹なタイトルの軽快さが共通してる。
 ※bonny ebony black swanのリスペクト元はこちらを参照。ここで紹介されている"Child Ballad 10 The Twa Sisters"のヴァージョン違いで、"The Bonny Swans"とか"The Wind and Rain"などのタイトルのバラッドも存在する。

この文章書いてる人は英語に関して勉強不足のド素人です。
バラッド知識もあんまりありません。
このページはあくまで『奔流の協奏曲』CD等買った人向け、
センスのない翻訳もどきであって、
著作権侵害の意図はありません。が、もし怒られたら消えます。

参考資料
・『アドバンスト フェイバリット英和辞典』(東京書籍 2003 第2刷)
・『魅惑の物語世界 やまなかみつよしのバラッド・トーク第2部バラッド詩』内『第15話 鰻のフライで恋人毒殺 『ロード・ランドル』』
 https://www.balladtalk.com/1-20/15-15.html#%E5%8E%9F%E8%A9%A9%EF%BC%88%E8%8B%B1%E8%A9%A9%EF%BC%89%E3%81%AE%E7%AE%B1
・『魅惑の物語世界 やまなかみつよしのバラッド・トーク第2部バラッド詩』内『第17話 独りでに鳴り出した琴 『二人の姉妹』』
 https://balladtalk.com/1-20/17-17.html#%E8%A8%B3%E8%A9%A9%E3%81%AE%E7%AE%B1-1