『SHADOW HEARTS FROM THE NEW WORLD』より、
 「Oh smania! oh furie! 〜D'Oreste e d'Aiace〈エレットラのアリア〉」。
 「オペラ座の怪人」というステージの「エリック劇場」のBGMということで、ガチにオペラです。聴き所は高笑いのコロラトゥーラ。・・すみません、ゲーム全然知らないから、サントラ歌詞カードの情報以上に書けることがない・・
 ところで、「大地の精霊」用のコーラスを作ろうとしたら「汗が飛び散る男たちの裸の祭典」になってしまったという志方さんにきゅんときました。・・なんて素敵可愛いお人なんだ。


IDOMENEO RE DI CRETA:SCENA ](部分)

Wolfgang Amadeus Mozart(1756-1791):作曲
Giambattista Varesco(1735-1805):作詞

[29. Recitativo accompagnato]
Idomeneo
Oh ciel pietoso!
Idamante
Ilia...
Ilia
Idamante, udisti?
Arbace
Oh gioia, oh amor, oh Numi!

※初稿台本? ※初演バージョン
Elettra
Oh smania! oh furie!
oh disperata Elettra!...
Addio amor, addio speme!
Ah il cor nel seno già m'ardono
l'Eumenidi spietate.
Misera, a che m'arresto?
Sarò in queste contrade
della gioia e trionfi
spettatrice dolente?
Vedrò Idamante alla rivale in braccio,
e dall'uno e dall'altra
mostrarmi a dito?...Ah no: il germano Oreste
ne' cupi abissi io vuo'
seguir.Ombra infelice!
lo spirto mio accogli, or or compagna
m'avrai là nell'inferno
a sempiterni guai, al pianto eterno.

[29a.Aria]
D'Oreste, d'Aiace
ho in seno i tormenti,
d'Aletto la face
già morte mi dà.
Squarciatemi il core,
ceraste, serpenti,
o un ferro il dolore
in me finirà.
Elettra
Oh smania! oh furie!
oh disperata Elettra!...
Vedrò Idamante alla rivale in braccio?...
Ah no, il germano Oreste
ne' cupi abissi io vuo' seguir.
or or compagna
m'avrai là nell'inferno
a sempiterni guai, al pianto eterno.


"IDOMENEO RE DI CRETA"
 『クレタの王 イドメネーオ』
 1781年1月29日、Munchner Residenz(ミュンヘンのレジデンツ宮殿)のCuvillies Theater(クヴィリエ劇場)にて初演。ジャンルはドランマ・ペル・ムジカ(音楽劇)またはオペラ・セリア(シリアスなオペラ)。トロイア戦争――即ちギリシア古典を題材にした正統派オペラで、日本でもそこそこ有名な作品です。
 作曲者がザルツブルク出身、初演はバイエルンだけど、『イドメネーオ』の台本はドイツ語ではなくイタリア語。何故なら、当時はオペラと言えばイタリア語が世界の常識。そんなこと言いつつ、実は少し前のフランス語オペラ“Idoménée(イドメネー)”の焼き直しだけど。パクリじゃないよ!アレンジだよ!
 作詞はジャンバッティスタ・ヴァレスコさん。この人はトレント生まれで、ザルツブルクの宮廷礼拝堂付司祭。地理的に独伊バイリンガルっぽい坊さま。説明するまでもなく有名なヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトさんも、作曲だけに留まらず、かなり脚本に手を加え、スコアにはAmadeo Wolfgango Mozartとイタリアちっくに署名してたそうです。アマデーオ・ヴォルフガンゴ・モッツァルトと読むのだろーか?

 ところで、なんとこのオペラ、初演では、ヒーロー王子、ヒロイン王女、そして恋のライバル王女と三角関係を演じるメインキャラが全員ソプラノです。えぇ〜?そこはライバルをメッゾかアルトぐらいにして個性を・・つーか王子がソプラノかよ!?物語終盤に突然出てくる「神の声」だけバッソでその他の年食った男性役は皆テノール・・全体的に高いよ!なんか、少年少女の切ない心情を歌うソプラノ×3と試練に苛まれる男盛りちょい過ぎのテノール×1の四重唱を際立たせる狙いがあったらしく。しかしながらモーツァルト自身、公演の度に声部も台本も色々と変えてたみたいです。今となっては、初演の割り振りで演じられることはないでしょう。昔はカストラート(去勢歌手)がいただろうけど、ヘルデンテノールっぽい声質のソプラノって・・。

物語の舞台:
 ホメーロスやアイスキュロスを初めとする古代ギリシアの詩人達による叙事詩群から、更にそこから話が広がった後世の作品諸々を含めて、初演当時にこのオペラを鑑賞した人々が心得ていたであろう前知識について。
 物語によって顛末が色々違ったり、時系列が無茶苦茶ばらばらだったりしますが、だいたいこんな↓感じの前景があったと踏まえておけばよろしいかと。

 時はだいたい紀元前1260年ぐらい(誤差±20年)。関係ないけどエジプトではラムセス2世がぶいぶい言わせてた頃。トロイアの王子パリスによるスパルタ王妃ヘレネーの略奪に端を発する(もっと大元の元凶は、大神ゼウス様の人口縮小計画)トロイア戦争は、多くの犠牲と武勲を生んで、遂にギリシア連合軍の勝利に終わった。トロイアの街は完全に破壊され、10年の長きに渡った戦に倦み疲れたギリシアの武将達は、戦利品と奴隷達を得て帰国の途に着く。
 ギリシアの諸侯を束ねた総大将アガメムノーンは、トロイアの王女カッサンドラーを得て祖国ミケーネへ凱旋するも、王妃クリュタイムネーストラーと姦夫アイギストスの凶刃に斃れる。姉エーレクトラーの助力により父の仇を討ったミケーネの王子オレステースは、母殺しの罪によって、復讐の女神たちエリニュエスに付き纏われる。
 そして、ここにも不運な英雄が一人。海神ポセイドーンの加護を受け、戦場で一騎当千の武勇を示したクレタ王イードメネウス。嵐に船を翻弄され、海の藻屑と消えんとした時、彼はこう祈った。「荒波の支配者ポセイドーンよ!我らをクレタ島に帰し給え!さすれば我が祖国で目にした最初の者を生贄として捧げよう!」と。


 それにしても、なんつー息の長いn次創作だ。

ここからオペラのあらすじ:
 トロイア王プリアモスの娘イーリアは、捕虜としてクレタに囚われている。祖国と一族の被った悲劇を嘆き、ギリシアを強く恨みながらも、敵国クレタの王子イダマンテに心惹かれるのを止めることができない。イダマンテも心優しく美しいイーリアに恋焦がれ、彼女のためにトロイアの囚人達を解放する。
 クレタとトロイアの人々は平和を喜ぶが、面白くないのはアルゴス(ミケーネの隣)の王女エレットラ(エーレクトラー)。血塗られた因縁に縛られた彼女はクレタに身を寄せ、イダマンテを愛するようになっていた。そこへ不幸な知らせが届く。クレタ王イドメネーオ(イードメネウス)が、帰還の洋上で水死したというのだ。
 さてその頃、難破したイドメネーオとその一行は、ネプチューン(ポセイドン)への誓願によって命辛々岸辺に辿り着いていた。遅まきながら己の誓いの恐ろしさに震えるイドメネーオ。そこへ、絶望したイダマンテがふらりとやって来る。すっかり成長したその少年が我が子だと知り、イドメネーオは更なる絶望に突き落とされる。
 何も知らず再会を喜ぶ息子を冷たく退けたイドメネーオは、腹心アルバーチェと相談し、イダマンテをエレットラ王女の故郷アルゴスへと逃がすことにした。エレットラは歓喜し、イダマンテは父の態度とイーリアとの別れを悲しみ、イドメネーオはイーリアの示した思いがけない優しさから、亡国の王女が我が子と恋仲にあると察する。ますます悲嘆に暮れながらイダマンテとエレットラを送り出そうとした時、突然の嵐が巻き起こり、海から恐ろしい怪物が姿を現した。そして、逃げ惑うクレタの人々に襲い掛かる。イダマンテは命を懸けて怪物と戦うことを誓い、イーリアは遂に己の想いを告げ、エレットラは嫉妬を募らせ、イドメネーオは嘆く。
 大いなる災禍を前にして、王イドメネーオは集まった民衆に己の誓願とイダマンテが犠牲に選ばれたことを告げる。人々は恐れ戦き、祭司たちは海神の許しを乞う。そこへ、勝利の歓声が響き渡る。王子イダマンテが海の怪物に戦いを挑み、見事打ち倒したのだ。勝利を収めたイダマンテは、誓約通りに己の命を捧げて神の怒りを鎮めるよう父を説き伏せる。父子が最後の抱擁を交わし、犠牲を捧げようとした時、突然イーリアが現れてイドメネーオを押し留める。
 そして、
SCENA ] Ilia frettolosa; Elettra e detti.
「シーン10 焦るイーリア エレットラと前場からの登場人物たち」

 イーリアは叫ぶ。「どうか私を生贄に!」。それを見ていたエレットラは呟く。「おお、私とこの娘はなんと違うことだろう!」。イーリアは続ける。「神々がギリシアから取り除こうとしているのはイダマンテではありません。生まれながらにギリシアの敵である私なのです!」。
 その時、突然ネプチューンの彫像が揺れ動き、重々しく神託が告げられた。「イドメネーオは退位し、イダマンテが王となれ。イーリアはその妃となるが良い」。

Idomeneo:Oh ciel pietoso!
 イドメネーオ:「おお、慈悲深き天よ!」
Idamante:Ilia...
 イダマンテ:「イーリア・・」
Ilia:Idamante, udisti?
 イーリア:「イダマンテ、聞きましたか?」
Arbace:Oh gioia, oh amor, oh Numi!
 アルバーチェ:「おお、喜びよ!おお、愛よ!おお、神意よ!」

 ・・てなところから、エレットラのパートに続きます。ちなみにモーツァルトさん、恋に破れたエレットラに長々と恨みつらみを語らせる台本だと「脇役の出番長いよ!」と思ったのか、初演ではせっかく作曲したアリアをばっさり削って、短いレチタティーヴォ(叙唱)の後に退場させています。
 志方さんは、この短いレチタティーヴォからアリアに繋げる、という形でBGMを作っていますが、せっかくだから長いバージョン訳してみっか。はい、痴情の縺れはどーでもいいけど、ギリシア神話大好きなんです。

ーニア ーリエ
Oh smania! oh furie!
間投詞 名詞 間投詞 名詞
おお 苛立ち、熱望 おお 激怒(複)
おお、苛立ちよ!おお、激怒(フリアエ)よ!

女性名詞複数形furieは、頭が大文字ならローマ神話のFuriae(フリアエ)、
つまりギリシア神話の復讐の女神たちΕρινύες(エリニュエス)を指す。

ディスペータ ットラ
oh disperata Elettra!...
間投詞 形容詞 固有名詞
おお 絶望した エレットラ
おお、絶望したエレットラ!

Elettraはギリシア語ならΗλέκτρα(エーレクトラー)。「琥珀」さん。
イタリア語でも、男性名詞elettroは、「琥珀」または「琥珀金(エレクトラム)」のこと。

アッディーオ ール アッディーオ ーメ
Addio amor, addio speme!
間投詞 名詞 間投詞 名詞
さらば さらば 希望
さらば、愛よ!さらば、希望よ!

amoreがトロンカメント(語尾脱落)。
spemeは女性名詞speranzaの詩形だって。

イル ール ネル ーノ ジャ ルドノ
Ah il cor nel seno già m'ardono
間投詞 冠詞 名詞 縮約冠詞 名詞 副詞 人称代名詞mi+他動詞(原形:ardere)
ああ in il 〜の中で 既に (それらは)私を焼く
ああ、胸の内の心で 既に私を焼いている。

cuoreの詩形coreがトロンカメント。

レウニディ スピエーテ
l'Eumenidi spietate.
冠詞+固有名詞(複) 形容詞
エウメニディ 無慈悲な、残酷な
無慈悲なエウメニディが。

Eumenidiはギリシア神話のΕυμενίδες(エウメニデス)。「慈悲深いものたち」という意味。
これも復讐の女神たちΕρινύες(エリニュエス:怒れるものたち)の別名。
spietateという形容詞をつけて皮肉ってる感じ。

ーゼラ マッスト
Misera, a che m'arresto?
名詞 前置詞 疑問代名詞 再帰動詞(arrestarsi)
惨めな者(女) 〜のために どうして 私は立ち止まる(自らを止める)
みじめな女(私)よ、どうして立ち止まるの?

miseroは辞書には形容詞としてしか載ってないけど、これでいいよな?

イン ステ コントーデ
Sarò in queste contrade
自動詞(原形:essere) 前置詞 指示形容詞 名詞
(私は)〜であるだろう 〜で これらの 地方、街(複)
これらの土地で私は〜になるの?

queste contradeってのはギリシアの諸都市国家のこと?

デッラ ジョイヤ トリンフィ
della gioia e trionfi
縮約冠詞 名詞 接続詞 名詞
di la 〜の 喜び 大勝利(複)
喜びと凱旋の

contradeにかかる。なんでtrionfiに冠詞がないんだ?

スペッタトーチェ ンテ
spettatrice dolente?
名詞 形容詞
観客(女) 悲痛な
悲しい観客に。


ヴェド イダンテ アッラ ヴァーレ イン ッチョ
Vedrò Idamante alla rivale in braccio,
他動詞(原形:vedere) 固有名詞 縮約冠詞 名詞 前置詞 名詞
(私は)見るだろう イダマンテ a la 〜に ライバル 〜の中で
私は恋敵の腕の中にイダマンテを見るの?

短縮バージョンではbraccioの後に?がついてる。

ダッーノ ダッルトラ
e dall'uno e dall'altra
接続詞 縮約冠詞+代名詞 接続詞 縮約冠詞+代名詞
そして da il 一人(男)によって da la もう一人(女)によって
一人の男によって、もう一人の女によって、

dall'unoがイダマンテでdall'altraがイーリア。

モストルミ ディート イル ジェルーノ ーステ
mostrarmi a dito? ...Ah no: il germano Oreste
他動詞(原形:mostrare)+人称代名詞mi 前置詞 名詞 間投詞 副詞 冠詞 形容詞 固有名詞
私を示すこと 〜で ああ 違う 同じ父母から生まれた オレーステ
私が指差されるのを?ああ、だめだ。血を分けたオレーステ、

Oresteは前述のΟρέστης(オレステース)のこと。エーレクトラーの弟で、母を殺して父の仇を討った人。

ーピ ッシ ーオ
ne' cupi abissi io vuo'
縮約冠詞 形容詞 名詞 代名詞 ?助動詞(原形:volere)?
in i 〜の中に 漆黒の、暗い 深淵、地獄 私は (私は)〜したい
暗い地獄へと、私は

現代語なら、volereの直説法現在一人称単数形はvoglio。
後ろに不定詞を伴って、「〜したい、〜するつもり」。

セグール ンブラ インフェーチェ
seguir. Ombra infelice!
他動詞 名詞 形容詞
後を追うこと 亡霊 不幸な
不幸な亡霊の後を追いたい!

seguireの不定詞がトロンカメント。

ールト ーオ アッッリ コンンニャ
lo spirto mio accogli, or or compagna
冠詞 名詞 所有形容詞 他動詞(原形:accogliere) 副詞 名詞
精神、魂 私の (君が)受け取れ さあ 仲間、道連れ
私の魂を受け入れよ。さあ今こそ道連れを

spirtoは男性名詞spiritoの詩形。頭がs+子音なので冠詞はlo。
oraがトロンカメント。

マヴ ネッリンフェルノ
m'avrai nell'inferno
人称代名詞mi+他動詞(原形:avere) 副詞 縮約冠詞+名詞
(君は)私を持つだろう そこに in l' 地獄の中に
地獄の中で、そこにおまえは私を得るだろう

seguireの不定詞がトロンカメント。
オレーステに語ってるみたい。

センピルニ アル ント ールノ
a sempiterni guai, al pianto eterno.
前置詞 形容詞 名詞 縮約冠詞 名詞 形容詞
〜の 永遠に続く 苦境(複)or悲鳴 a il 〜の 涙、悲嘆 永遠の
永遠に続く悲鳴の 永遠の涙の

ここはinfernoにかかる。

・・と、ここまでがレチタティーヴォ。

ここからハ短調のアリア。

ーステ ダイーチェ
D'Oreste, d'Aiace
前置詞+固有名詞 前置詞+固有名詞
オレーステの アイアーチェの
オレーステの、アイアーチェの

オレーステについては、前述の通り。
アイアーチェは、英雄Αίας(アイアース)のこと。
トロイア戦争で名を馳せたアイアースは二人いて、
 一人はテラモーンのアイアース。通称、大アイアス。勇敢で情に厚いけどぷっつん頭。英雄アキレウスの死後、形見分けの競技の裁定に納得いかずに暴れ出し、女神アテーナーに頭を狂わされて死んだ人。
 もう一人はロクリスのアイアース。通称、小アイアス。大胆不敵だけどちょっとお頭が足りない不敬者。女神アテーナーの像にしがみつくカッサンドラー王女を強姦して女神の怒りを買った上に、難破したところを助けてくれようとした海神ポセイドーンまでも虚仮にして溺死した人。

 ・・この場合はテラモーンのアイアースのことじゃないかな?

イン ーノ トルンティ
ho in seno i tormenti,
他動詞(原形:avere) 前置詞 名詞 冠詞 名詞
(私は)持っている 〜の中に 苦痛、苦悩
苦悩を私は胸の内に持っている。


ット ファーチェ
d'Aletto la face
前置詞+固有名詞 冠詞 名詞
アレットの 松明、情熱
アレットの松明は

AlettoはΑληκτώ(アレークトー)のこと。
復讐の女神たちΕρινύες(エリニュエス)の一人。

ジャ ルテ
già morte mi dà.
副詞 名詞 人称代名詞 他動詞(原形:dare)
既に 私に (それは)伝える 割り当てる
既に私に死を用意している。

dareの意味が多過ぎる。

スクワルチャーテミ イル ーレ
Squarciatemi il core,
他動詞(原形:squarciare)+人称代名詞mi 冠詞 名詞
(君たちが)私を引き裂け 
私を引き裂け この心を


チェステ セルンティ
ceraste, serpenti,
名詞 名詞
ツノヘビ ヘビ(複)
ツノヘビよ、ヘビよ

Ερινύες(エリニュエス)の髪はヘビとツノヘビで出来てるらしい。
ダンテさんが言ってた。

ウン フェッロ イル ーレ
o un ferro il dolore
接続詞 不定冠詞 名詞 冠詞 名詞
あるいは 苦痛、悲しみ
さもなくばこの苦しみを鉄で

ferroは「剣」の暗示。

イン フィニ
in me finirà.
前置詞 人称代名詞 他動詞(原形:finire)
〜の内で (それは)終えるだろう
私の内で終えるだろう。

meはmiの強勢形。


・・つーことで意訳してみっけども、なんかイタリア名だといまいち乗れないんで、固有名詞勝手に変換!

おお、苛立ちよ!おお、激昂フリアエよ!
おお、絶望のエーレクトラーよ!
恋よ、さらば 希望よ、さらば
ああ、この胸の内で
無慈悲な慈悲ある女神たちエウメニデスが私の心を灼き焦がす

惨めな私よ、どうして立ち止まっているの?
歓喜と勝利に沸くこの土地で
私は悲しい観客になるつもりなの?

恋敵の腕の中に、イダマンテを見出すの?
あの男が、そしてあの女が、私を指差すのを見ると言うの?
ああ、耐えられない!血を分けたオレステースよ!
私はいっそ暗黒の深淵へと
不幸な亡霊となったおまえを追って行きたい!

私の霊魂を受け入れて!さあ!
今すぐにおまえはこの姉を
地獄の道連れとすることでしょう
永劫止まぬ嘆きと永久とわなる涙に満ちた場所で


オレステースの アイアースの苦悩が
この胸の内を灼いている
アレークトーの松明は、既に私に死を告げている
私を引き裂くが良い!この胸を!
ツノヘビよ!ヘビよ!
さもなくばこの内なる悲嘆を
剣を以って締め括ろうぞ


 ・・と、そんな感じで荒れ狂いつつエレットラさん退場。何事もなかったかのように平和な最終場へと場面転換。
 ハッピーエンドめでたしめでたし。

 三角関係に焦点を絞れば、「ツンデレが素直になったらヤンデレに勝ち目はありませんでした」というお話(違)。物騒な台詞ばっかりだけど、エレットラさんも一途で可愛い人なんだよな。最後は幸せなカップルを傷つけるより自分の破滅を願うし。そこは「神託に逆らえない」という謎のファクターのせいかもしれないけど。

 神様が悪代官兼御老公・・それがギリシア神話の世界。
 この作品のように、人間関係がぐだぐだに縺れ合ってどーしよーもなくなったところに神様登場で一発解決、万事神様の思し召し通りという超展開オチを、葵の紋所じゃなかったDeus ex machina(デウス・エクス・マキナ)と言います。ギリシア悲劇からオペラまで連綿と受け継がれてきた歴史ある手法ですが、昨今の同人小説やゲームなんかでコレをやっちゃうと「厨二乙w」とか絶賛されます。


オペラのあらすじは、主に曖昧な記憶と古いプログラムを参考に書きました。
ギリシア神話の人名はカタカナでは古典読みしてるけど、古典語の記号表示できないから現代語綴り。
イタリア語はいつもながら間違っている可能性大。
つまり全体的にいい加減。

↓素材を使わせて頂きました。オペラ・ガルニエです。


http://www.rodoni.ch/MOZART/idomeneo_libretto.pdf
歌詞は↑のサイト様より。