Istoria~Kalliope~ ギリシア語(ギリシャ語)メモ1.Thrylos‐伝承‐
Thrylos Θρύλος |
※志方さんのδはやっぱり「ザ、ズィ、ズ、ゼ、ゾ」より「ダ、ディ、デュ、デ、ド」の方が近いよなぁ。公式でδのルビはダ行になってるもんなぁ・・と思いつつ、相変わらずザ行で読み仮名振ってます。気になる方は適当に置き換えてお読み下さい。
※ギリシア文字による単語表記、( )内カナ読みに続いて、( )内が綴りに準拠したローマ字転写、[ ]内が発音に準拠したローマ字転写となっています。
※動詞の相(アスペクト)は、「アオリスト相」とか「完了相」とか書いてない限り継続相、態(ヴォイス)は受動とか中動とか断りがなければ能動態、法(ムード)は接続法とか命令法とか書いてなければ直説法です。
※ここでは、「古典語」=「だいたいコイネー、そのちょっと前後も含む」、「現代語」=「基本的にディモティキ」です。授業科目の「古文」と「現代文」ぐらいざっくり。
・Θρύλος(スリロス)(thrylos)[thrilos]・・「口頭で語り継がれた英雄伝説、言い伝え」。男性名詞。
・έλα(エーラ)(ela)[éla]・・「(君が)来い、さあ」。異態動詞έρχομαι(来る、やって来る、行く、~になる)の命令法アオリスト相(二人称)単数形。
・τραγούδα(トラグザ)(tragoyda)[tragúða]・・自動詞τραγουδώ(歌う)の命令法(継続相二人称)単数形、または別形τραγουδάωの命令法アオリスト相(二人称)単数形。この場合は「歌い続けろ」じゃなく「さあ、歌え」だからアオリスト相か。
・ένα(エナ)(ena)[éna]・・基数詞の1、または不定冠詞の男性(単数)対格あるいは中性主格または対格。
・μύθο(ミソ)(mytho)[mítho]・・「神話を」。男性名詞μύθος(伝承、神話、伝説、寓話)の単数対格。
・δικό(ズィコ)(diko)[ðikó]・・所有形容詞δικόςの中性形。所有代名詞とセットで「~のもの」を表す。
・σου(ス)(soy)[su]・・「君の」。二人称単数の所有代名詞。後接する。
『さあ、あなたの来し方を歌って下さい』
・η(イ)(ē)[i]・・女性名詞単数主格につく定冠詞。
・μητέρα(ミテラ)(mētera)[mitéra]・・「母は」。女性名詞単数主格か対格。ここでは主格。
・σου(ス)(soy)[su]・・「君の」。二人称単数の所有代名詞。後接する。
・είναι(イーネ)(einai)[íne]・・「(それは)~である」。連辞動詞είμαι(存在する、~だ:be動詞的なもの)の直説法三人称単数もしくは複数現在形。ここでは単数現在形。
・η(イ)(ē)[i]・・女性名詞単数主格につく定冠詞。
・μεγάλη(メガリ)(megalē)[megáli]・・「偉大な」。形容詞μεγάλος(大きな、高い、偉大な)の女性単数主格形または対格形。
・Μνημοσύνη(ムニモスィニ)(mnēmosynē)[mnimosíni]・・「ムネモシュネ(が)」。女性固有名詞。単数主格か対格。この場合は主格。ギリシア神話の記憶の女神。古典語でも同綴りだけど、読み方は「ムネーモシュネー」みたいな感じ。女性名詞 ἡ μνημοσύνη(記憶、追憶、思い出)が人格化したもの。ちなみに現代語の「記憶」はη μνήμηやη ανάμνηση。
天空の神ウラノスと大地の女神ガイアの娘で、ゼウスとの間にムーサたち九姉妹を儲けた。
『神統記』の記述を引用すると、
『彼女たちを ピエリアで 父神ゼウスに添寝して 生みたもうたのは/エレウテルの丘陵(おか)を治めるムネモシュネ/彼女らを 災厄を忘れさせ悲しみを鎮めるものとして生みたもうたのだ』(引用文献3:P14/53-55行)
『ゼウスが髪美しいムネモシュネに情けをかけると/彼女からは 黄金(こがね)の冠つけた 詩歌女神(ムウサ)たちが生まれた』(引用文献3:P114/915-916行)
『あなたの母は偉大なムネモシュネ』
・ο(オ)(o)[o]・・男性名詞単数主格につく定冠詞。
・πατέρας(パテラス)(pateras)[patéras]・・「父は」。男性名詞単数主格。
・σου(ス)(soy)[su]・・「君の」。二人称単数の所有代名詞。後接する。
《πατέρας σου(パテラス)》
・είναι(イーネ)(einai)[íne]・・「(それは)~である」。連辞動詞είμαι(存在する、~だ:be動詞的なもの)の直説法三人称単数もしくは複数現在形。ここでは単数現在形。
・ο(オ)(o)[o]・・男性名詞単数主格につく定冠詞。
・Δίας(ズィアス)(dias)[ðías]・・「ゼウス(が)」。男性固有名詞単数主格。古典語ではΖεύς「ゼウス」、より古い主格またはドーリス方言ではΔίς「ディス」という形もある。言わずと知れたギリシア神話の大神。
クロノスとレイアーの息子。オリュンポスを統べる雷霆の神。
『神統記』によると『賢いゼウス 神々と人間どもの父/その雷鳴で広い大地も 震えるのだ』(引用文献3:P60/457-458行)。
古典語の格変化の不規則さは異常。主格:Ζεύς(ゼウス)、属格:Διός(ディオス)、与格:Διί(ディイ)、対格:Δία(ディア)、呼格:Ζεῦ(ゼウ)とか、意味わからん。現代語だと主格:Δίας(ズィアス)、属対呼格:Δία(ズィア)なので、活用が単純化した感じ。ちなみに現代語でΖευς(Ζεύς)と言っても通じるけど、読み方は「ゼフス」になる。
『あなたの父はゼウス』
・είσαι(イーセ)(eisai)[íse]・・「(君は)~である」。連辞動詞είμαι(存在する、~だ:be動詞的なもの)の現在二人称単数形。
・η(イ)(ē)[i]・・女性単数主格につく定冠詞。
・μεγαλύτερη(メガリテリ)(megalyterē)[megalíteri]・・形容詞μεγάλος(大きな、高い、偉大な)の優等比較級μεγαλύτερος(より大きな、年長の)の女性単数主格形または対格形。ここでは定冠詞を伴って最上級。"η μεγαλύτερη"で「最も年長の」または「最も偉大な」。
・Μούσα(ムサ)(moysa)[músa]・・「ムーサ(が)」。女性固有名詞。単数主格か対格。この場合は主格。ギリシア神話の芸術の守護女神。九姉妹。古典語ではΜοῦσαと書いて「ムーサ」みたいに読む。οῦは必ず長音。
かつてアレクサンドリアにあった古代随一の学術機関の名がムーセイオン(Μουσεῖον)だったことを考えれば、幾何学、力学、医学、地学、化学、文学、形而上学、音楽etc、人類のありとあらゆる文化的、知的活動を守護、推進する女神たちと言っていいと思う。ヘーシオドスさんが『神統記』で「ムーサは九人姉妹なんだよ」と言ってるけど、複数形Μοῦσαι(ムーサイ)じゃなく単数形で語られることもある。「ムーサの誰それ」じゃなく「ムーサ」という名の女神として認知されてた時代もあるのかもしれない。
この女神(たち)の主要な役割は、詩人に霊感を与える、あるいは詩人の口を借りて語ること。有名なホメーロスの『イーリアス』は『怒りを歌え、女神よ、ペーレウスの子アキレウスの、おぞましいその怒りこそ』とムーサに語りかけるところから始まる(呉茂一訳 岩波文庫 1953/P9より引用)。
九人姉妹元ネタの『神統記』では、
『さあ 詩歌女神(ムウサ)たちのことから始めよう 彼女たちは オリュンポスに住みたもう/父神ゼウスの大御心を喜ばされるのだ/今在ること この先起ること すでに生じたことがらを/声をあわせて賛え歌うて。麗わしい歌声が疲れも知らず/詩歌女神(ムウサ)たちの口から流れ 彼女たちの百合花(ゆり)にも似た歌声が/広がりゆくとき 雷(いかずち)轟かす父神ゼウスの館は笑いにさんざめき/雪を戴くオリュンポスの高嶺(たかね)と不死の神々の館は木魂(こだま)を返す』
とか、美々しくそのお役目が紹介されている(引用文献3:P12‐13/36-42行)。
『あなたはムーサたちの長女(最も年嵩のムーサ)』
・η(イ)(ē)[i]・・女性名詞単数主格につく定冠詞。
・Καλλιόπη(カリオピ)(kalliopē)[kaliópi]・・「カリオペ」。女性固有名詞。単数主格か対格。この場合は主格。ギリシア神話における、ムーサたちの一人。古典語では同綴りで「カ(ッ)リオペー」みたいに読む。より古くは、ホメーロスさんがΚαλλιόπεια「カ(ッ)リオペイア」とも呼んでいる。原意は形容詞καλός(カロス:美しい)+女性名詞ὄψ(オプス:声)辺りだろうから、まさに「美声」という名の女神。
『神統記』にあるカリオペに関する唯一の記述が、
『この方(カリオペ)はみんな《註:ムウサたち》のなかで第一等の位にある/というのも彼女は畏(かしこ)い貴族(バシレウス)たちの世話をなさるのだから。/ゼウスの愛でる貴族たちの誰であれ/大いなるゼウスの娘たちが愛で その出生を/見守りたもう者には その者の舌に 甘い露を滴らす。/すると その者の唇からは優美な言葉が流れ出すのだ。』
というもの。(引用文献3:P17‐18/79-84行)
『カリオペ』
・ηλίθια(イリスィア)(ēlithia)[ilíthia]・・「愚かな」。形容詞ηλίθιος(白痴の、馬鹿な、間の抜けた)の中性複数呼格形または主格形か対格形。
・κορίτσια(コリトスィア)(koritsia)[korítsia]・・「少女たち(は/よ)」。中性名詞κορίτσι(女の子、少女、若い娘)の複数呼格または主格か対格。冠詞ないから呼格かと思ったけど主格かな?
・που(プ)(poy)[pu]・・「~するところの、that」。関係代名詞。 ・προκάλεσαν(プロカレサン)(prokalesan)[prokálesan]・・「(それらは)挑んだ」。他動詞 ※行為の完結や結果を表したり、過去を時系列順に淡々と並べて語ったりするのがアオリスト相過去の用法。 ・τον(トン)(ton)[ton]・・男性名詞の単数対格につく定冠詞。 ・Θεό(セオ)(theo)[theó]・・「神に」。男性名詞 ※単数形になってるので「神々」ではない。 |
※枠内は・"ηλίθια κορίτσια・・"のバックで歌ってるようです。聞き取れてたまるか。
『神に挑んだ愚かな少女たちは』
・τιμωρήθηκαν(ティモリスィカン)(timōpēthēkan)[timoríthikan]・・「(それらは)処罰された」。他動詞τιμωρώ(罰する、処罰する、懲らしめる)の受動アオリスト相過去三人称複数形。
・και(キェ)(kai)[kje]・・「~と、そして」。接続詞。
・πέταξαν(ペタクサン)(petaksan)[pétaksan]・・「(それらは)飛んだ」。自・他動詞πετώ(飛ぶ、飛行する、投げる)のアオリスト相過去三人称複数形。
・στον(ストン)(ston)[ston]・・「~に、~で、~において、~の中で」。対格につく前置詞σε(幅広くat in onの意味を持つ)と定冠詞τον(男性単数対格につく)の省略形。
・ουρανό(ウラノ)(oyrano)[uranó]・・「天(を)」。男性名詞ουρανός(空、天空)の単数対格。
『罰されて 空へ飛んだ』
・η(イ)(ē)[i]・・女性名詞単数主格につく定冠詞。
・Σειρήνα(スィリナ)(seirēna)[sirína]・・「セイレーンが」。女性固有名詞。単数主格か対格。ここでは主格。ギリシア神話における海の精。美しい歌声で船乗りを惑わせ、難破を誘う。古典語ではΣειρήνと書いて「セィレーン」みたいに読む。
・αποθαρρύνει(アポサリニ)(apotharrynei)[apotharíni]・・「(それは)阻む」。他動詞αποθαρρύνω(がっかりさせる、失望させる、落胆させる、阻む)の現在三人称単数形。
※ここからしばらく「歴史的現在」。過去の出来事を臨場感をもって話している。
・την(ティン)(tēn)[tin]・・女性名詞の単数対格につく定冠詞。
・πορεία(ポリア)(poreia)[poría]・・「進路を」。女性名詞単数主格か対格。ここでは対格。「前進、行進、コース、進路、道筋、針路、経過」を意味する。
・του(トゥ)(toy)[tu]・・男性または中性名詞の単数属格につく定冠詞。
・πλοίου(プリウ)(ploioy)[plíu]・・「船の」。中性名詞πλοίο(船、船舶)の単数属格。
『セイレーンが航路を阻み』
・την(ティン)(tēn)[tin]・・「彼女を」。人称代名詞。三人称単数女性対格弱形。
・αποτινάζει(アポティナーズィ)(apotinazei)[apotinázi]・・「(それは)振り払う」。他動詞αποτινάζω(振り払う)の現在三人称単数形。
・με(メ)(me)[me]・・「~で、~をもって」。対格につく前置詞。
・τον(トン)(ton)[ton]・・男性名詞の単数対格につく定冠詞。
・αγνό(アグノ)(agno)[agnó]・・形容詞αγνός(けがれのない、清らかな、純潔の)の男性単数対格形(または中性単数主格形か対格形)。
・ήχο(イホ)(ēcho)[íxo]・・「音(を)」。男性名詞ήχος(音、音声)の単数対格。
・της(ティス)(tēs)[tis]・・女性名詞の単数属格につく定冠詞。
・λύρας(リラス)(lyras)[líras]・・「リュラー(リラ)の」。女性名詞λύρα(古代のリュラー型、現代のライアー型の竪琴)の単数属格。
『清らかなリラの音色をもってそれを打ち払う』
※ここもμε以下はどう歌ってるのかあんまり分かりません。
・ανησυχώντας(アニスィホンダス)(anēsychōntas)[anisixóndas]・・自・他動詞ανησυχώ{(~が)心配である、落ち着かない、(~に)心配をかける}の能動分詞。この場合は自動詞。
・για(ヤ)(gia)[ja]・・対格につく前置詞。ここでは"ανησυχώντας για~"で「~を心配して」。
・την(ティン)(tēn)[tin]・・女性名詞の単数対格につく定冠詞。
・άσπλαχνη(アスプラフニ)(asplachnē)[ásplaxni]・・「無慈悲な」。形容詞άσπλαχνος(無慈悲な、残忍な、情け容赦のない)の女性単数主格形か対格形。
・μοίρα(ミラ)(moira)[míra]・・「運命(を)」。女性名詞単数主格か対格。ここでは対格。「部分、分け前、(軍の)中隊、運命」などの意味がある。頭が大文字ならギリシア神話の運命の女神。古典語ではμοῖραと書いて「モィラ」みたいに読む。
・του(トゥ)(toy)[tu]・・男性または中性名詞の単数属格につく定冠詞。
・αδελφού(アゼルフ)(adelphoy)[aðelfú]・・「弟(または兄)の」。男性名詞αδελφός(兄、弟、男のきょうだい)の単数属格。
・του(トゥ)(toy)[tu]・・「彼の」。三人称単数男性の所有代名詞。
『彼の弟の無慈悲な運命を心配して』
・ο(オ)(o)[o]・・男性名詞単数主格につく定冠詞。
・Θεός(セオス)(theos)[theós]・・「神が」。男性名詞単数主格。
・του(トゥ)(toy)[tu]・・男性または中性名詞の単数属格につく定冠詞。
・γάμου(ガム)(gamoy)[gámu]・・「結婚の」。男性名詞γάμος(結婚、婚礼)の単数属格。
・παίζει(ペズィ)(paizei)[pézi]・・「(それは)演奏する」。自動詞παίζω(遊ぶ、戯れる、演奏する)の現在三人称単数形。
・φλάουτο(フラウト)(phlaoyto)[fláuto]・・「フルートを」。中性名詞単数主格または対格。ここでは対格。
※外来語。元はイタリア語の男性名詞flauto(フラウト)。
『結婚の神はフルートを奏でる』
・φωνάζει(フォナズィ)(phōnazei)[fonázi]・・「(それは)呼ぶ」。自・他動詞φωνάζω(叫ぶ、大声を出す、呼ぶ、呼びかける)の現在三人称単数形。
・συνέχεια(スィネヒィア)(synecheia)[sinéçia]・・「続けて、連続して」。ここでは副詞的に使われている女性名詞(単数主格か対格)。名詞としては「連続、続き」などを意味する。
・το(ト)(to)[to]・・中性名詞単数主格または対格につく定冠詞。
・όνομα(オノマ)(onoma)[ónoma]・・「名前を」。中性名詞単数主格または対格。ここでは対格。
・της(ティス)(tēs)[tis]・・女性名詞の単数属格につく定冠詞。
・αγάπης(アガピス)(agapēs)[agápis]・・「愛しい人の」。女性名詞αγάπη(愛、愛情、恋、愛しい人)の単数属格。
・του(トゥ)(toy)[tu]・・「彼の」。三人称単数男性の所有代名詞。
『彼の愛しい人の名を何度も呼び』
・περιπλανιέται(ペリプラニエテ)(periplanietai)[periplaniéte]・・「(それは)彷徨う」。異態動詞περιπλανιέμαι(あてもなく彷徨う、放浪する)の現在三人称単数形。
※異体動詞とは、動詞の見かけは中・受動態なのに能動態の意味を持つ動詞のこと。
・στον(ストン)(ston)[ston]・・「~に、~で、~において、~の中で」。対格につく前置詞σε(幅広くat in onの意味を持つ)と定冠詞τον(男性単数対格につく)の省略形。
・σκοτεινό(スコティノ)(skoteino)[skotinó]・・「暗い」。形容詞σκοτεινός(暗い、暗闇の、はっきりしない、見通しが暗い)の男性単数対格形または中性単数主格形か対格形。
・δρόμο(ズロモ)(dromo)[ðrómo]・・「道(を)」。男性名詞δρόμος(走ること、速度、レース、道、コース、行程)の単数対格。
・του(トゥ)(toy)[tu]・・男性または中性名詞の単数属格につく定冠詞。
・Άδη(アズィ)(adē)[áði]・・「ハデスの」。男性固有名詞。Άδης(ハデス)の単数属格か対格。ここでは属格。ギリシア神話の冥府の神。古典語ではἍιδηςと書いて「ハーィデース」とかᾍδηςと書いて「ハーデース」とか。更に古くは、ホメーロスさんがἈΐδης「アイデース」、ヘーシオドスさんがἈϊδωνεύς「アイドーネゥス」とも呼んでいる。
クロノスとレイアーの息子。『神統記』によると『地の下の館に住み 冷酷な心もつ強いハデス』(引用文献3:P60/455行)。
『暗いハデスの道中で彷徨う』
・σκουπίζοντας(スクピゾンダス)(skoypizontas)[skupízondas]・・「拭き取って」。他動詞σκουπίζω(掃く、掃除する、拭き取る)の能動分詞。
・τα(タ)(ta)[ta]・・中性名詞の複数主格または対格につく定冠詞。
・δάκρυα(ザクリア)(dakrya)[ðákriá]・・「涙(複)を」。中性名詞δάκρυ(涙、雫)の複数主格または対格。ここでは対格。
※歌詞カードでδάκρυάになっているのは、次のτηςと繋げて発音し易いようにするため。ギリシア語のアクセントは単語の終わりから一番目、二番目、三番目の音節どれかにつくけど、弱形の代名詞が単語の後ろにつくと、名詞と代名詞が区切りなく一単語みたいに発音される。その際、終わりから三番目までの音節にアクセントがないとギリシャ人的に落ち着かないらしく、単語の最終音節にもう一個アクセントがつくようになる。
・της(ティス)(tēs)[tis]・・「彼女の」。三人称単数女性の所有代名詞。
・που(プ)(poy)[pu]・・「~するところの、that」。関係代名詞。
・τρέχουν(トレフン)(trechoyn)[tréxun]・・「(それらが)流れる」。自・他動詞τρέχω(走る、急ぐ、奔走する、流れる、漏れる、走らせる)の現在三人称複数形。
『溢れ出るその涙を拭い』
・αποχαιρετάει(アポヒィェレタイ)(apochairetaei)[apoçeretái]・・「(それは)別れを告げる」。他動詞αποχαιρετώ(別れを告げる、さよならを言う)の現在三人称単数形。
・το(ト)(to)[to]・・中性名詞の単数主格または対格につく定冠詞。
・πνεύμα(プネヴマ)(pneyma)[pnévma]・・「魂に」。中性名詞単数主格か対格。ここでは対格。「息、精神、魂、才能」などの意味がある。
・του(トゥ)(toy)[tu]・・男性または中性名詞の単数属格につく定冠詞。
・υιού(イウ)(yioy)[iú]・・「息子の」。男性名詞υιός(息子)の単数属格。
※カサレヴザ(純正語)の単語。ディモティキではγιος(ヨス)の方が一般的。
・της(ティス)(tēs)[tis]・・「彼女の」。三人称単数女性の所有代名詞。
・του(トゥ)(toy)[tu]・・男性または中性名詞の単数属格につく定冠詞。
・ήρωα(イロア)(ērōa)[íroa]・・「英雄の」。男性名詞ήρωας(英雄、ヒーロー、主人公)の単数属格または対格。ここでは属格。
『英雄たる 彼女の息子の魂に別れを告げる』
・τη(ティ)(tē)[ti]・・女性名詞の単数対格につく定冠詞。 ・χαρά(ハラ)(chara)[xará]・・「喜びを」。女性名詞単数主格か対格。ここでは対格 ・και(キェ)(kai)[kje]・・「~と、そして」。接続詞。 ・τη(ティ)(tē)[ti]・・女性名詞の単数対格につく定冠詞。 ・θλίψη(スリプスィ)(thlipsē)[thlípsi]・・「悲しみを」。女性名詞単数主格か対格。ここでは対格。「悲しみ、苦しみ、嘆き、苦悩」などを意味する。 『喜びを 悲しみを』 ・την(ティン)(tēn)[tin]・・女性名詞の単数対格につく定冠詞。 『深い愛を』 ・κάντες(カンデス)(kantes)[kándes]・・「する、行う」を基本として意味の広い自・他動詞κάνωの・・ 『音と言葉を為して 歌え』 |
※枠内、どこで歌ってるのか分かりません。『天つ神の手~』辺りからのバックコーラス・・なの?
・εκθειάστε(エクスィアステ)(ektheiaste)[ekthiáste]・・「(君たちが)褒め称えろ」。他動詞εκθειάζω(褒め称える、絶賛する)の命令法アオリスト相(二人称)複数形。
・πολλές(ポレス)(polles)[polés]・・「多くの」。形容詞πολύς(多くの、たくさんの)の女性複数主格形または対格形。
・τιμές(ティメス)(times)[timés]・・「栄光を」。女性名詞τιμή(値段、価格、価値、尊敬)の複数主格または対格。ここでは対格。複数形になると「儀礼、叙勲、名誉、名声」のような意味になる。
・τις(ティス)(tis)[tis]・・女性名詞の複数対格につく定冠詞。
・οποίες(オピエス)(opoies)[opíes]・・代名詞οποίοςの女性複数主格形または対格形。ここでは冠詞と共に関係代名詞。"τις οποίες~"で「~する(人、もの)を」。
・θα (サ)(tha)[tha]・・小辞。ここでは継続相過去と共に話者の推量を表している。
・ζήλευαν(ズィレヴァン)(zēleyan)[zílevan]・・自・他動詞ζηλεύω{(人のものを)欲しがる、羨望する、妬む、やきもち焼きである}の過去三人称複数形。"θα ζήλευαν"で「(それらは)羨んだであろう」。継続相なので「羨み続けた」ニュアンス。
・και(キェ)(kai)[kje]・・接続詞。ここでは副詞的に「~ですらも」。
・οι(イ)(oi)[i]・・男性または女性名詞の複数主格につく定冠詞。
・Θεοί(セイ)(theoi)[theí]・・「神々が」。男性名詞θεόςの複数主格。
『讃えよ 神々さえも羨んだ栄光の数々を』
※最後、『英雄葬』の歌詞の一部を歌っているようです。
この文章書いてる人は素人です。結構適当書いてます。
このページはあくまで『Istoria~Kalliope~』買った人向け、参考にならない辞書もどきであって、
著作権侵害の意図はこれっぽっちもありません。が、もし怒られたら消えます。
主要参考・引用文献
1.『現代ギリシア語辞典』(リーベル出版 第3版増補版 2004)
2.『現代ギリシア語文法ハンドブック』(白水社 2009)
3.『神統記』(岩波文庫 1984)
紀元前8世紀の詩人ヘーシオドス(Ἡσίοδος)さんの著作テオゴニアー(Θεογονία)の邦訳版。ギリシア神話に登場する神々の系譜を壮大に物語る。コイネーよりもかなり古いギリシア語で書かれている。廣川洋一さんの訳。注釈が非常に充実してる。
4."An intermediate LIDELL AND SCOTT'S Greek-English Lexicon"(Oxford
Univ Pr. 1945 7th Edition)
古典ギリシア語→英語辞書。