Istoria~Kalliope~ ギリシア語(ギリシャ語)メモ3.ピエリス
Pieris Πιερίς |
※志方さんのδはやっぱり「ザ、ズィ、ズ、ゼ、ゾ」より「ダ、ディ、デュ、デ、ド」の方が近いよなぁ。公式でδのルビはダ行になってるもんなぁ・・と思いつつ、相変わらずザ行で読み仮名振ってます。気になる方は適当に置き換えてお読み下さい。
※ギリシア文字による単語表記、( )内カナ読みに続いて、( )内が綴りに準拠したローマ字転写、[ ]内が発音に準拠したローマ字転写となっています。
※動詞の相(アスペクト)は、「アオリスト相」とか「完了相」とか書いてない限り継続相、態(ヴォイス)は受動とか中動とか断りがなければ能動態、法(ムード)は接続法とか命令法とか書いてなければ直説法です。
※ここでは、「古典語」=「だいたいコイネー、そのちょっと前後も含む」、「現代語」=「基本的にディモティキ」です。授業科目の「古文」と「現代文」ぐらいざっくり。
・Pīeris(ピーエリス)・・原意は「ピーエリアの者(女)」。ギリシア語に由来するラテン語の女性名詞単数主格。複数主格はPīerides(ピーエリデス)。
1.ギリシア・ローマ神話におけるムーサの別称。マケドニアのピーエリア地方(Πιερία)に坐すことから。
2.ギリシア・ローマ神話における、マケドニアの王ピーエロス(Πιέρος/Pīeros)とパイオニアのエウイッペ(Ευίππη/Euippe)の間に生まれた9人の娘のこと。
ローマの詩人たちに好まれた呼称。古典ギリシア語で書くとἡ Πιερίς(ヘー ピーエリス)なんだろうけど、辞書には複数で「ムーサたち」を意味するαἱ Πιερίδες(ハィ ピーエリデス)しか載ってなかった。現代ギリシア語ならη Πιερίς(イ ピエリス)かな。
ピエリデスを描いた神話原典としては、紀元前後1世紀に生きたローマの詩人オウィディウスさんの著作『変身物語』が有名。第5巻の294~678行目までに渡って、ムーサの一人が女神ミネルウァに語りかける形で、この9人の娘たちとムーサの長姉カリオペとの歌くらべが描写されている。
ピーエロス王の娘たちは、『うわべの甘さで無知な俗衆をあざむくのはおやめなさい!ヘリコンの女神さまたち、自信がおありなら、わたしたちと競技をなさることです。わたしたち、声にかけても、技にかけても、負けはいたしませんよ。数も、同じ九人なのですし。わたしたちが勝てば、メドゥーサにゆかりのヒッポクレネの泉と、同じくボイオティアのアガニッペの泉を頂きましょう。そうでなければ、わたしたちのほうが、マケドニアの野を、雪深いパイオニアまで、お譲りいたしますわ。競技の審判は、妖精(ニンフ)たちにやらせましょう』とムーサたちを挑発して歌くらべに挑み、敗北してなお女神たちに罵詈雑言を浴びせかけたので、罰として森で喧しく喚き立てるカササギに姿を変えられたことになっている(『変身物語(上)中村善也訳』 岩波文庫 1981 P193~194より引用)。
・ακούω(アクオ)(akoyō)[akúo]・・「(私は)聞く」。自・他動詞ακούω(聞く、聞こえる、耳が聞こえる、有名である)の現在一人称単数形。
・τις(ティス)(tis)[tis]・・女性名詞の複数対格につく定冠詞。
・καρακάξες(カラカクセス)(karakakses)[karakákses]・・「カササギを」。女性名詞καρακάξα{カササギ、(転じて)おしゃべり婆}の複数主格または対格。ここでは対格。
・να(ナ)(na)[na]・・動詞の接続法につく接続詞。
・κράζουν(クラーズン)(krazoyn)[krázun]・・「(それらが)鳴くこと」。自・他動詞κράζω{(鶏やカラスが)鳴く、(人が)叫ぶ、(人を)呼ぶ}の接続法アオリスト相三人称複数形。
※ここでの接続法は動詞を名詞化して「鳴くこと」の意味。古典語時代には「定冠詞τό+不定法」で表した動名詞的用法の代替表現。
『カササギたちが鳴いているのが聴こえる』
・ακούγεται(アクゲテ)(akoygetai)[akújete]・・「(それは)聞かれる」。自・他動詞ακούω(聞く、聞こえる、耳が聞こえる)の中動態現在三人称単数形。
※主語がないけど男性名詞ήχος(音、音声)かな。
・πολύ(ポリ)(poly)[polí]・・「とても、非常に」。副詞。
・λυπητερό(リピテロ)(lypētero)[lipiteró]・・「悲しげな」。形容詞λυπητερός(悲惨な、痛ましい、悲しげな、愁いを帯びた)の男性単数対格形(または中性単数主格形か対格形)。
『(その声は)とても悲しげに(聞かれる)』
・ακούγεται(アクゲテ)(akoygetai)[akújete]・・「(それは)聞かれる」。自・他動詞ακούω(聞く、聞こえる、耳が聞こえる)の中動態現在三人称単数形。
・πολύ(ポリ)(poly)[polí]・・「とても、非常に」。副詞。
・χαρούμενο(ハルメノ)(charoymeno)[xarúmeno]・・「楽しげな」。形容詞χαρούμενος(嬉しげな、楽しげな、陽気な)の男性単数対格形(または中性単数主格形か対格形)。
『(その声は)とても楽しげに(聞かれる)』
・είναι(イーネ)(einai)[íne]・・「(それは~である」。連辞動詞είμαι(存在する、~だ:be動詞的なもの)の現在三人称単数もしくは複数形。ここでは単数現在形。
・απληστία(アプリスティア)(aplēstia)[aplistía]・・「貪欲、飽くなき願望(が)」。女性名詞単数主格または対格。ここでは主格。
・είπε(イーペ)(eipe)[ípe]・・「(それは)言った」。他動詞λέω(言う、述べる、話す)のアオリスト相過去三人称単数形。
・κάποιος(カピオス)(kapoios)[kápios]・・「誰かが」。不定代名詞男性主格形。
『貪欲だと、誰かが言った』
・είναι(イーネ)(einai)[íne]・・「(それは~である」。連辞動詞είμαι(存在する、~だ:be動詞的なもの)の現在三人称単数もしくは複数形。ここでは単数現在形。
・μια(ミア)(mia)[mia]・・「ひとつの」。基数詞の1、または不定冠詞の女性(単数)主格または対格。
・ευχή(エフヒ)(eychē)[efxí]・・「心からの願望、望み、祈り(が)」。女性名詞単数主格または対格。ここでは主格。
・είπε(イーペ)(eipe)[ípe]・・「(それは)言った」。他動詞λέω(言う、述べる、話す)のアオリスト相過去三人称単数形。
・κάποιος(カピオス)(kapoios)[kápios]・・「誰かが」。不定代名詞男性主格形。
『ひとつの切望だと、誰かが言った』
・τα(タ)(ta)[ta]・・中性名詞の複数主格か対格につく定冠詞。 ・πουλία(プリャ)(poylia)[pulía]・・「鳥たちは」。中性名詞 ・πέταξαν(ペタクサン)(petaksan)[pétaksan]・・「(それらは)飛んだ」。自・他動詞 『鳥たちは飛んで行った』 ・πέταξαν(ペタクサン)(petaksan)[pétaksan]・・「(それらは)投げ捨てた」。自・他動詞πετώ(飛ぶ、飛行する、投げる)のアオリスト相過去三人称複数形。 『きれいな衣を脱ぎ捨てた』 ・απέκτησαν(アペクティサン)(apektēsan)[apéktisan]・・「(それらは)得た」。他動詞αποκτώ(得る、獲得する、身に着ける)のアオリスト相過去三人称複数形。 『飛ぶための翼を手に入れて』 ・εξαφανίστηκαν(エクサファニスティカン)(eksaphanistēkan)[eksafanístikan]・・「(それらは)姿を消す」。他動詞εξαφανίζω(完全に見えなくする、消滅させる、抹殺する、削除する)の中動態アオリスト相過去三人称複数形。 『遥か遠くに消え失せた』 |
※枠内、多重で何度も繰り返しています。これまた実に聴き取り難し。
この文章書いてる人は素人です。結構適当書いてます。
このページはあくまで『Istoria~Kalliope~』買った人向け、参考にならない辞書もどきであって、
著作権侵害の意図はこれっぽっちもありません。が、もし怒られたら消えます。
主要引用・参考文献
1.『現代ギリシア語辞典』(リーベル出版 第3版増補版 2004)
2.『現代ギリシア語文法ハンドブック』(白水社 2009)
3.『羅和辞典 田中秀央編』(研究社 2005 第39刷)
4.『変身物語(上)中村善也訳』(岩波文庫 1981)
スルモー生まれの詩人プブリウス・オウィディウス・ナーソーさん(Publius Ovidius Naso:BC43~AD17)による叙事詩メタモルポーセース(Metamorphoses)の邦訳版。ラテン文学の傑作で、いわゆる「ギリシア神話」原典の一つ。タイトルの通り「変身」をメインテーマに、ギリシア・ローマの神々や人々が織り成す交々を描いている。
5."An intermediate LIDELL AND SCOTT'S Greek-English Lexicon"(Oxford
Univ Pr. 1945 7th Edition)
古典ギリシア語→英語辞書。