デヴォイカ・マルタ&ノヴァ・プローレット
ブルガリア語メモ
love solfege 『反響するプシケー』より
真名辺あやさんのベストアルバムに入ってる2曲の、
タイトル及び日本語歌詞にちょっと混じってるブルガリア語のメモと、
ブルガリアの祭りに関するあれこれ。
ご本家様特設ページ
bandcampで無料で聴けるようになりました。
勿論惚れたらお金も払えます。
・девойка(デヴォイカ)・・「若い女性、思春期の少女」。女性名詞単数形。
・Марта(マルタ)・・「マルタ」。女性固有名詞。無変化の男性名詞март(マルト 3月)にаをつけて女性形にしたもの。
『三月の乙女』
・нова(ノーヴァ)・・「新しい」。形容詞нов(ノーフ 新しい、斬新な、今の)の女性単数形。
・пролет(プローレット)・・「春」。女性名詞単数形。
『新しい春』
《揺り椅子》
・люлеещ(リュレーシュト)・・不完了体動詞люлея(リュレーヤ 揺らす)の能動現在分詞男性単数形。ここでは形容詞。
・се(セ)・・「自分自身を」。再帰代名詞対格短形。"люлеещ се"で「自分で揺れる(自分を揺らす)」。
・стол(ストール)・・「椅子」。男性名詞単数形。"люлеещ се стол"で「ロッキングチェア」。
《春の訪れを祝う》
・честита(チェスティータ)・・「おめでとう」。形容詞честит(チェスティート 名誉ある、めでたい)の女性単数形。
・нова(ノーヴァ)・・「新しい」。形容詞нов(ノーフ 新しい、斬新な、今の)の女性単数形。
・пролет(プローレット)・・「春」。女性名詞単数形。
『おめでとう、新しい春』
《挨拶》
・добро утро(ドブロー・ウートロ)・・「おはよう」。形容詞добър(ドバール 良い)の中性単数形+中性名詞утро(ウートロ 夜明け、朝)の単数形。
『おはよう』
ブルガリアの神話、民間伝承に、Баба Мартаという女神がいる。
ババ・マルタ(マルタばあちゃん)はмарт(三月)が擬人化した女神で、януари(一月)の化身Голям Сечко{大きい噛むやつ(寒気)}、февруари(二月)の化身Малък Сечко{小さい噛むやつ(寒気)}の兄弟と共に高い山の上に住んでいる。二月が「小さい」のは、寒さが一月よりましなんじゃなくて日数が短いからみたい。
このセチコ兄弟が彼女のワインを全部飲んでしまうだとか、人が彼女を「セチコたちほど強くも厳しくもないだろう」などと侮るだとかでババ・マルタを怒らせると、天気が酷いことになる。ブチ切れたおばあちゃんは容赦なく氷雪を見舞ってくる。彼女が機嫌を直して笑うと太陽が照るが、気まぐれな彼女はまたいつ腹を立てるか分からない。故にブルガリアの3月の天気は変わり易い。
ババ・マルタは3月の季節そのものであり、最も重要な3月1日のПразникът на Баба Марта(ババ・マルタの祝日) だけでなく、キリスト教の祝日である9日のМладенци(セバステの40人の殉教者の祝日)、25日のБлаговец(受胎告知の祝日)にも祭られる。
ブルガリアの3月1日はババ・マルタの祝日。辛い冬の終わりと春の始まり、新しい季節の巡りの始まりを祝う日。人々は夜明け前に家を掃き清めて火を焚き、赤いテーブルクロスや敷物を外に広げて飾る。金属製のものを打ち鳴らして家から蛇やトカゲを追い出し、"Честита
Баба Марта!(チェスティータ・バーバ・マルタ)"と言い交わして、家族や友人たちと紅白の縒り糸で作られたアクセサリーや人形(伝統的にはブレスレット)мартеницаを贈り合う。ババ・マルタの心を楽しませ、彼女が人々に良いものだけを贈ってくれるように。
マルテニツァは3月末まで身に着ける。コウノトリやツバメ、果樹の蕾など春の先触れを見かけたら、このお守りを木に結んで一年の健康と幸福を祈る。かつては、マルテニツァを身に着けて着飾るのは若い女性と子供たちだけ、ババ・マルタの嫌う年配の女性は3月1日に家から出るべきではないなどと決まりがあったものの、最近ではそこまでこだわらず、老若男女に動物までマルテニツァを着けて祝うという。
バルカン半島とその周辺(ブルガリアの他にセルビア南東部、北マケドニア、ルーマニア、モルドバ、アルバニア、ギリシャの一部地域)には、名前やルールが多少違えど広く同様の風習がある。地域によって、お守りを身に着けるのは子供だけ、あるいは女性と子供だけだとか、大人の男性が身に着ける場合は外から見えない場所に限るだとか、様々。
アルバム『philosophilia』にも収録された真名辺あやさんの「デヴォイカ・マルタ」の物語は、上記の祭りを創造の種として書かれたものと思われる。
生まれ故郷で、訪れた春を寿ぐ祭りの主役になったものの、役目を果たせなかった一人の乙女、最後の「三月の乙女」の歌。
そして、かつてのдевойка(乙女)がбаба(おばあちゃん)になった晩年に春を迎える歌が「ノヴァ・プローレット」。
内容については、めっちゃ聴いて!めっちゃ歌詞読んで!としか言わない。
民族音楽的であり、教会音楽的でもあり、高揚感と哀しげな響きが入り混じる「デヴォイカ・マルタ」。穏やかで温かい日だまりにいるみたいな「ノヴァ・プローレット」。全然雰囲気違うのに、どっちも素敵な物語なんだよ、本当に。真名辺さんの歌声がとても優しいんだよ。このお嬢さん、色々あったけど良い年の取り方したんだなぁって。
『反響するプシケー』だと、個人的には「デヴォイカ・マルタ」の後に世界が違うけど近いものがある「ユキ、オトメ。(2019 ver.)」が入ってるのもポイント高い。
この文章書いてる人はブルガリア語の入門書をちょっと読んだ程度のにわかです。
Google翻訳等に頼りつつ纏めましたが、間違ったことを書いているかもしれません。
このページはあくまで『反響するプシケー』CD等買った人向け、参考にならない辞書もどきであって、
著作権侵害の意図はありません。が、もし怒られたら消えます。
参考資料
・『ニューエクスプレス+ブルガリア語』(白水社 2019)
・"Oxford Bulgarian Dictionary" https://apps.apple.com/jp/app/oxford-softpress-mini-dict/id1100620964
2013年にSoftpress Publishing HouseとOxford University Pressの共同で出版された勃⇔英辞書"Oxford
SoftPress English Minidictionary"のアプリ版。
・"Уикипедия"Wikipediaブルガリア語版内"Баба Марта"
https://bg.wikipedia.org/wiki/%D0%91%D0%B0%D0%B1%D0%B0_%D0%9C%D0%B0%D1%80%D1%82%D0%B0
・БНР RADIO BULGARIA
・Мартеници или родопски байници – символ на надеждата за хубавото, което
предстои(24/03/01の記事)
https://bnr.bg/radiobulgaria/post/101954922/martenici-ili-rodopski-bainici-simvol-na-nadejdata-za-hubavoto-koeto-predstoi
・Баба Марта и нейните братя Голям и Малък Сечко(11/02/18の記事)
https://bnr.bg/radiobulgaria/post/100228684/baba-marta-i-neinite-bratya-golyam-i-malyk-sechko