I See the great mountains ゲール語メモ
ゲール語とは、アイルランドやスコットランドの高地地方、
それとマン島でちょこっと使用されているケルト系言語。
何百年か遡ったら、全部古アイルランド語になるよ。
音韻的には外国語の中で一番好きかもしれない。
セシルさんの"Song Book vol.2"歌詞カードでは"irish traditional"とあるけど、
この歌のコーラスはガーリック(スコットランド・ゲール語)ですな。
母音記号は私が分かり易いよう、勝手につけました。
英語とゲール語混合歌詞ですが、ゲール語部分のみ訳してみました。
カナ読みは辞書の発音の手引を参考にしていますが・・日本語の音声体系とは英語よりかけ離れてるのに、カナ当てようとする方がどうかしてる。
希、伊、西語なら、子音いくつかを除けば「まあ近似値だろ」って感じになるんだけど・・
・O(オ)・・「おお」。間投詞。
・chì(ヒー)・・「見るだろう」。"will see"。不規則動詞faic(見る、眺める、理解する)の未来独立形。
アイルランド語なら、辞書形feic、未来形feicfidh。
※[çi:]音。
・chì(ヒー)
・mi(ミ)・・「私は」。"I, me"。一人称単数の人称代名詞。ゲール語では動詞の後ろに主語、その後ろに目的語が来るのが基本。
・na(ナ)・・"the"。名詞の複数形(主格か与格)につく定冠詞。
・mòrbheanna(モール・ヴョナ)・・「偉大な(大きな)山々を」。形容詞mòr(great, big,)+女性名詞beinn(高い丘、山)の複数(主格か与格)beanntanの異形だと思う。
セシルさんの発音に近づけるなら、(モール・ヴェナ)。
※òは英語taughtの[au]音。mòrは女性名詞につくと頭語を軟音化(hを挿入して軟らかい音に)する。
※bheannaの発音は[vjauna]って感じ。アイルランド語だとbinn(複主.beanna)なので、アイルランド語のスペルに近い。
『おお 私はあの壮大な山々を見るだろう』
・O(オ)・・「おお」。間投詞。
・chì(ヒー)・・「見るだろう」。"will see"。不規則動詞faic(見る、眺める、理解する)の未来独立形。
・chì(ヒー)
・mi(ミ)・・「私は」。"I, me"。一人称単数の人称代名詞。
・na(ナ)・・"the"。名詞の複数形(主格か与格)につく定冠詞。
・corrbheanna(コル・ヴョナ)・・「尖った山々」。接頭辞corr-(corra-とも:尖った、"point")+女性名詞beinn(高い丘、山)の複数形。
セシルさんの発音に近づけるなら、(コル・ヴェナ)。
『おお 私はあの聳え立つ山々を見るだろう』
・O(オ)・・「おお」。間投詞。
・chì(ヒー)・・「見るだろう」。"will see"。不規則動詞faic(見る、眺める、理解する)の未来独立形。
・chì(ヒー)
・mi(ミ)・・「私は」。"I, me"。一人称単数の人称代名詞。
・na(ナ)・・"the"。名詞の複数形(主格か与格)につく定冠詞。
・coireachan(コレヒャン)・・「圏谷(複)を」。"corries"。"kettle(ヤカン)"の意味もある。男性名詞coire(圏谷)の複数(主格か与格)形。
セシルさんの発音に近づけるなら、(コルシェン)かな。
※地理の授業ではドイツ語読みの「カール(Kar)」で習うあれ。氷河が山腹を削ってできた、ボウル状に窪んだ地形のこと。
『おお 私はあの圏谷を見るだろう』
・chì(ヒー)・・「見るだろう」。"will see"。不規則動詞faic(見る、眺める、理解する)の未来独立形。
・mi(ミ)・・「私は」。"I, me"。一人称単数の人称代名詞。
・na(ナ)・・"the"。名詞の複数形(主格か与格)につく定冠詞。
・sgoran(スコラン)・・「割れ目を」。男性名詞sgor(亀裂、大きな割れ目)の複数(主格か与格)形。一面を覆う霧を刃物で裂いたように現れる切り立った峰・・って感じ?
セシルさんの発音に近づけるなら、(スカレン)。
・fo(フォ)・・「〜の下」。前置詞。
・cheò(ヒョー)・・「霧」。男性名詞ceòの軟音化。
セシルさんの発音に近づけるなら、(ヒャー)。
※[ço:]音。
『あの霧(の下)の裂け目を見るだろう』
"Chì mi na mòrbheanna"(John Cameron 1856)
作詞者は、スコットランド・ハイランド地方出身の英語名John Cameron/ゲール語名Iain
Camshroinさん。故郷を懐かしむ歌で、セシルさんのコーラスはその冒頭部分。オリジナルはもっと長くて、セシルさんの歌う英語歌詞部分に対応するゲール語歌詞もある。言葉はGàidhligだけど、「アイルランド人のこと歌ってるんじゃないの?」と言われることもあるらしい。
セシルさんも、この歌にアイルランド移民の歴史を重ね合わせて歌っているみたい。1840年代、ジャガイモ胴枯れ病の蔓延によって、本国で食べて行けなくなったアイルランドの人々は大挙してアメリカ大陸に移住した訳だけども。セシルさんは歌詞カードで、「過ぎ去った世紀のアイルランド移民たちは、彼らの家族や土地を夢見て、誰よりも上手にこの歌を歌うかもしれない」と語っている。
参考文献
"The Gaelic-English Dictionary Am faclair Gàidhlig-Beurla"(Routledge 2004)
語彙、文例が豊富で文法解説もある、充実したスコット・ゲール語→英語辞書。著者はColin
Markさん。たまにしか開かないけど、重宝してます。amazon見たら目ん玉飛び出る値段。こんな高かったっけ?Google
Booksでも読めるけど。ちなみに、Routledge社はロンドンの大学書林みたいな会社で、こういう頭の堅い本ばかり出版してます。Good
job!
「ブルターニュ出身の歌手がフランス語訛りのスコットランド・ゲール語を歌っているところに、
ボロ耳の日本人が無理矢理カタカナ読みを当てつつ直訳した」らこうなった。
特にボロ耳の日本人は英語やアイルランド語もよく分かってないド素人だよ!色々とこいつのせいだよ!
このページはあくまで"CECILE CORBEL Song Book vol.2"買った人向け(なのか!?)、自己満足なメモ書きであって、
著作権侵害の意図はないけど・・場合によってはすぐ消すかも。