Arthur フランス語メモ
Cécile Corbel " Graal "より
" Graal "9曲目、アーサー王の歌。
Rex quondam, Rexque Futurus
※動詞の法は、特に断りがない限り直説法です。
・Arthur(アルテュール)・・「アルテュール、アーサー」。男性固有名詞。人名。
『アーサー』
・Arthur(アルテュール)・・「アルテュール、アーサー」。男性固有名詞。人名。
・depuis(ドゥピュイ)・・「~から」。前置詞。
・l'autre(ロートル)・・「もう一方、もう片方」。頭語が母音またはhの単数名詞につく定冠詞l'+不定代名詞autre(他のもの)。
・monde(モーンド)・・「世界」。男性名詞単数形。
『アーサー、もう一つの世界から』
・vois-tu(ヴォワテュ)・・「君は~が見えるだろうか?」。他動詞voir(見る)の二人称単数現在形+二人称単数主格の人称代名詞tu。倒置疑問文。
・les(レ)・・名詞の複数形につく定冠詞。
・hommes(オム)・・「人々」。男性名詞homme(人間、人類、男)の複数形。
・et(エ)・・「そして、~と」。接続詞。
《les hommes et(レゾメ)》
・les(レ)・・名詞の複数形につく定冠詞。
・rois(ロワ)・・「王たち」。男性名詞roi(王)の複数形。
『人々と王たちが見えますか?』
・vois-tu(ヴォワテュ)・・「君は~が見えるだろうか?」。他動詞voir(見る)の二人称単数現在形+二人称単数主格の人称代名詞tu。倒置疑問文。
・leur(ルル)・・「彼らの、彼女らの、それらの」。三人称複数の所有形容詞。単数形。
・folie(フォリ)・・「狂気、正気を失っていること、狂気の沙汰」。女性名詞単数形。
・qui(キ)・・「~するところの」。関係代名詞。
・gronde(グロンドゥ)・・「(それは)爆発寸前である」。自他動詞gronder{(子供を)叱る、(大砲、雷が)轟く、(獣が)うなる、(暴動、怒りが)爆発寸前である}の三人称単数現在形。
『一触即発の、彼らの狂気が見えますか?』
・reviendrais-tu(ルヴィアンドラテュ)・・「君は戻って来るだろうか?」。自動詞revenir(戻って来る、再び来る)の二人称単数単純未来形+二人称単数主格の人称代名詞tu。倒置疑問文。
・ici-bas(イスィバ)・・「この世に、現世に」。副詞。
『あなたはこの世に帰って来てくれますか?』
・sur(スュル)・・「~の上に」。前置詞。
・l'île(リル)・・「島」。頭語が母音またはhの単数名詞につく定冠詞l'+女性名詞île(島)の単数形。
・aux(オ)・・「~に、~の」。縮約冠詞。前置詞àと複数形につく定冠詞lesの縮約。
《l'île aux(リロ)》
・morts(モール)・・「死者たち」。男性名詞mort(死者、死体)の複数形。
・tu(テュ)・・「君は」。二人称単数主格の人称代名詞。
・reposes(ルポズ)・・「(君は)休む」。自他動詞reposer(~を休める、~の疲れを癒す、もたせかける、休む、横たわる)の二人称単数現在形。
『あなたは死者の島で憩われる』
・Avallon(アヴァロン)・・「アヴァロン」。女性?固有名詞。伝説上の地名。Avalonとも。
『アヴァロンで』
・parmi(パルミ)・・「~の間に、~の中で」。3つ以上のものを表す複数名詞または集合名詞につく。
・les(レ)・・名詞の複数形につく定冠詞。
・lys(リス)・・「百合(複)」。無変化の男性名詞。
・et(エ)・・「そして、~と」。接続詞。
《lys et(リセ)》
・les(レ)・・名詞の複数形につく定冠詞。
・roses(ローズ)・・「薔薇(複)」。女性名詞rose(バラ)の複数形。
・les(レ)・・名詞の複数形につく定冠詞。
・chardons(シャルドン)・・「薊(複)」。男性名詞chardon(アザミ)の複数形。
『百合に薔薇、薊の咲く中で』
・Arthur(アルテュール)・・「アルテュール、アーサー」。男性固有名詞。人名。
・tu(テュ)・・「君は」。二人称単数主格の人称代名詞。
・dors(ドール)・・「(君は)眠る」。自動詞dormir(眠る)の二人称単数現在形。
・d'un(ダン)・・「~の」。前置詞de+男性名詞単数形につく不定冠詞un。
・si(スィ)・・「それほど、とても、大変」。副詞。
・profond(プロフォン)・・「深い、奥行きがある、甚だしい、深遠な」。形容詞男性単数形。
・sommeil(ソメイユ)・・「眠り、眠気、休止」。男性名詞単数形。
『アーサー、あなたはとても深い眠りに就いています』
・mais(メ)・・「だが、でも、いったい、さて」。接続詞。
・est-ce que(エスク)・・「~ですか?」。疑問副詞。
・tu(テュ)・・「君は」。二人称単数主格の人称代名詞。
・vois(ヴォワ)・・「(君は)~を見る」。他動詞voir(見る)の二人称単数現在形。
・en(アン)・・「~の中に」。前置詞。
・rêve(レーヴ)・・「夢、幻想、憧れ」。男性名詞単数形。
・une(ユヌ)・・女性名詞単数形につく不定冠詞。
・épée(エペ)・・「剣」。女性名詞単数形。
《une épée(ユネペ)》
・d'or(ドール)・・「金色の」。前置詞de+男性名詞or(黄金、富、金色、貴重なもの)の単数形。
・d'un(ダン)・・「~の」。前置詞de+男性名詞単数形につく不定冠詞un。
・éclat(エクラ)・・「(飛び散った)破片、(突然の)大きな音、輝き、輝かしさ」。男性名詞単数形。
《d'un éclat(ダネクラ)》
・sans(サン)・・「~のない」。前置詞。
・pareil(パレイユ)・・「同様の人、物、比肩する人、物」。男性名詞単数形。"sans pareil"で「比類のない」。
『けれど夢の中では、比類なき輝きの黄金の剣を見ているのですか?』
・que(ク)・・「何を」。疑問代名詞。
・met(メ)・・「(それが)着ける」。他動詞mettre(置く、備え付ける、着る、着せる)の三人称単数現在形。
・la(ラ)・・女性名詞単数形につく定冠詞。
・dame(ダム)・・「女性、奥さん、貴婦人、淑女」。女性名詞単数形。
・à(ア)・・「~に」。前置詞。
《dame à(ダマ)》
・ton(トン)・・「君の」。二人称単数の所有形容詞男性単数形。
・bras(ブラ)・・「腕」。無変化の男性名詞。狭義には肩から肘までの上腕、広義にはavant-bras(前腕)も含む肩から手首までの腕全体を指す。
『その貴婦人は、あなたの腕に何を着けているのでしょう?』
・Arthur(アルテュール)・・「アルテュール、アーサー」。男性固有名詞。人名。
・depuis(ドゥピュイ)・・「~から」。前置詞。
・l'autre(ロートル)・・「もう一方、もう片方」。頭語が母音またはhの単数名詞につく定冠詞l'+不定代名詞autre(他のもの)。
・monde(モーンド)・・「世界」。男性名詞単数形。
『アーサー、もう一つの世界から』
・vois-tu(ヴォワテュ)・・「君は~が見えるだろうか?」。他動詞voir(見る)の二人称単数現在形+二人称単数主格の人称代名詞tu。倒置疑問文。
・les(レ)・・名詞の複数形につく定冠詞。
・hommes(オム)・・「人々」。男性名詞homme(人間、人類、男)の複数形。
・et(エ)・・「そして、~と」。接続詞。
《les hommes et(レゾメ)》
・les(レ)・・名詞の複数形につく定冠詞。
・rois(ロワ)・・「王たち」。男性名詞roi(王)の複数形。
『人々と王たちが見えますか?』
・vois-tu(ヴォワテュ)・・「君は~が見えるだろうか?」。他動詞voir(見る)の二人称単数現在形+二人称単数主格の人称代名詞tu。倒置疑問文。
・leur(ルル)・・「彼らの、彼女らの、それらの」。三人称複数の所有形容詞。単数形。
・folie(フォリ)・・「狂気、正気を失っていること、狂気の沙汰」。女性名詞単数形。
・qui(キ)・・「~するところの」。関係代名詞。
・gronde(グロンドゥ)・・「(それは)爆発寸前である」。自他動詞gronder{(子供を)叱る、(大砲、雷が)轟く、(獣が)うなる、(暴動、怒りが)爆発寸前である}の三人称単数現在形。
『一触即発の、彼らの狂気が見えますか?』
・reviendrais-tu(ルヴィアンドラテュ)・・「君は戻って来るだろうか?」。自動詞revenir(戻って来る、再び来る)の二人称単数単純未来形+二人称単数主格の人称代名詞tu。倒置疑問文。
・ici-bas(イスィバ)・・「この世に、現世に」。副詞。
『あなたはこの世に帰って来てくれますか?』
アルテュール(アーサー)王は本当に実在したのだろうか?
確かな事は何もない。歴史家たちがウェールズの小編や古代の年代記の中に、彼と一致するかもしれない、そして12世紀初頭のアーサー王伝説の最初期の作家たちに原初のインスピレーションを与えたかもしれない何人もの歴史上の人物の痕跡を見つけたとしても。
註1ブリトン人の口伝によって言い伝えられた様々な歴史上の人物の様々な生涯についてのいくつもの物語が、アーサーという神話上の人物を創造する役に立ったかもしれない。
全ての物語の中で、アーサーは最も高貴な心――王権、威厳、強さ、勇気、だがそれと同時に賢明さと権力の節制を体現している。
アーサーは死後も生き延びて、伝説は彼を希望の担い手にした――ヴィヴィアンと同じように、彼の眠りは一時的なものでしかなく、彼はいつの日か、人々と※註2「二つのブリテン」を統合しに戻って来ると言われる。
けれど、アヴァロンで微睡むアーサーは、時折私たちの世界に関心を寄せて、たまには心地良い夢からこっそり抜け出して、私たちの境遇を気にかけてくれるだろうか?
彼はそれを見て、人々を救うために戻りたいと、僅かでも思ってくれるだろうか?
私が彼だったら、躊躇うだろう。
(Cécile Corbelによる楽曲解説)
※人名等固有名詞は、「ヴィヴィアーヌ(ヴィヴィアン)」のようにフランス語名カナ読みの隣に日本で馴染みのある表記(概ね英語風)を並べ、二度目以降の登場は後者に統一しています。
※註1 « les traditions orales bretonnes »。普通、形容詞bretonは「ブルターニュの、ブルトン人の、ブルトン語の」を指すけど、たぶんここはブリトン系民族全般の口伝を指してるんじゃないかな?
※註2 « les deux Bretagnes »。グレートブリテン島とフランスのブルターニュ地方(英語ではLittle Britainとも呼ばれる)のこと。
12世紀半ば、詩人ウァースさんによって書かれた※註1" Roman de Brut(ブリュ物語) "によると、
「記録の伝えるところによると、アーサー王も瀕死の重傷を負い、治療のためにアヴァロンに運ばれた。ブリトン人たちは、王は今でもそこにいると信じて言い合っている。アーサー王はそこから必ず生きて帰ってくると」
「本当のところ、キリスト受肉後五四二年に王はアヴァロンに運ばれた」〔参3〕 p168-169より引用
13世紀に書かれた散文" Lancelot-Graal(ランスロ聖杯) "最後の巻※註2" La Mort Artu(アルテュスの死) "では、アルテュス(アーサー)は、反逆者にして実の息子であるモルドレ(モードレッド)と戦い、敵を槍で刺し貫くも、自分も剣で頭蓋を割られて致命傷を負う。
激しい戦いの末、モードレッドに与する騎士たちは全滅し、アーサー王の側も、生き残っているのは瀕死のアーサーの他、酒倉長リュカン(ルーカン)とその弟ジルフレ(グリフレット)ばかりとなった。
死期を悟ったアーサーは、黒い礼拝堂(la Noire Chapele)に向かい、夜通し亡き臣下たちのために祈りを捧げる。
朝になって、王の苦悩を痛ましく見つめ、慰めを口にしたルーカンを、アーサーは力いっぱい抱き締めた。その抱擁が強過ぎて、意図せず己の酒倉長を絞め殺してしまう。(何て!?)
更に悲憤慷慨したアーサーは、馬に乗り、グリフレットと共に海辺に向かった。腰からエスカリボール(エクスカリバー)を外して、最後に残った臣下に命じる。塚へ登り、そこから見える湖へ、剣を投げ込んでくるように、と。
あまりに優れた剣が失われることを残念に思い、グリフレットは二度躊躇ったが、王の叱責を受け、三度目にようやく湖に向かって剣を投擲する。すると、湖から一本の腕が飛び出して剣の柄を握り、三度、四度と宙に振ってから水中に沈んだ。
それをアーサーに告げると、王は、自分を残してここを去れと言う。グリフレットが涙ながらに馬に乗り、王と別れると、突如激しい驟雨が降った。
ある塚の近くの木の下に馬を止め、来た道を振り返ると、俄雨が止んだ後の水面に、一艘の舟がやって来るのが見えた。
アーサーのいる岸に着いた舟には大勢の貴婦人が乗っていて、その内の一人が舟に乗るようにと呼びかけている。貴婦人たちの中に異父姉妹モルガーヌ(モーガン)の姿を見た王は、馬を曳き、武具甲冑を持って舟に乗り込んで行った。
王を失ったことを悟ったグリフレットは、悲嘆に暮れたまま黒い礼拝堂へ戻る。
そこには美しく立派な墓が二つできていて、一つにはルーカンの名が、より立派なもう一つの墓にはこのように刻まれていた。
「《ここにアーサー王眠る。その武勇により、十二の王国を順わしめたりき》」〔参4〕 p243より引用。
15世紀のトマス・マロリーさん作"le morte Darthur/Le Morte d'Arthur(アーサー王の死)"だと、グリフレットの役割を果たすのはベディヴィア(ベディヴィエール)になっているけど、やっぱりアーサーはモーガンやニミュエ(ヴィヴィアン)を含む貴婦人たちのいる舟に乗り、「この傷を治すためにアヴァロンへ行く」と告げる。
そして王を送り出したベディヴィエールが礼拝堂に辿り着くと、新しい墓ができている。真夜中に大勢の貴婦人たちがやってきて、ある方の遺体を埋葬するよう頼んで行った、と言う。
「しかしながらイギリスの各地方では、アーサー王は死んだのではない、主イエスの御心によって違うところに連れて行かれたのだ。そして異なる十字架を勝ち取るために、いつの日にかまた帰って来るのだと言われている。だが、わたしにはそうは思えないのだ。かえって言いたいのは、王はこの世での生を、別の世界のものに変えたということである。多くの人々は王の墓の上には次のように書いてあったと言っている。『ここにアーサー王は眠る。過去の王にして未来の王』。」〔参5〕 p254-255より引用
グラストンベリーには、12世紀の終わりに発見されたというアーサー王の墓がある。発掘の際、遺骨と共に「アーサー王(またはアーサーとグィネヴィア)がここアヴァロンで眠っている」とラテン語で彫られた鉛の十字架が出土したと言う。
1193年頃にウェールズのジェラルド(Gerald of Wales/Giraldus Cambrensis)さんが"De Instructione
Principis(君主の教育のために)"に書いたところによると、
"HIC IACET SEPULTUS INCLYTUS REX ARTHURUS CUM WENNEVERIA UXORE SUA
SECUNDA IN INSULA AVALLONIA."〔参6〕より引用
だが、他にも実物を見たという人による、他の文だったという記録もある。
その十字架も今は失われており、大体の歴史家、研究者には信憑性が疑われている。
※註1 日本語では『ブリュット物語』とも。フランス語(と言ってもアングロ・ノルマン語)で書かれた最古のアーサー王物語を含む作品。歴史家ジェフリー・オブ・モンマス(Geoffrey
of Monmouth)さんによるラテン語の"Historia Regum Britanniae(ブリタニア列王史)"を元にしている。まだ聖杯もランスロットも出て来ないが、甥のモルドレ(モードレッド)が反逆して王妃を寝取り、やっぱり激しい戦いの末円卓は崩壊する。
※註2 Artus(被制格:Artu)は、古フランス語でのアーサー王の名前。
ともあれ、「アヴァロンに行ったアーサー王はいつか帰って来る!」のが大昔からの言い伝えらしい。
セシルさんの歌だと諦め気味だけど。
間奏のケルトっぽさが特に大好き。
CDブックはいいぞ。セシルさんご本人による挿絵がすごく美しいぞ。こちらの公式ホームページ通販で買えるぞ。
参考・引用資料
1.『ロワイヤル仏和中辞典 第2版』(旺文社 2005)
2." CNRTL Lexicographie " https://www.cnrtl.fr/definition/
3.『フランス中世文学名作選』(白水社 2013)
4.『フランス中世文学集4 奇蹟と愛と』(白水社 1996)
5.『アーサー王物語 Ⅴ』Kindle版(筑摩書房 2020)
6."Jones's Celtic Encyclopedia"内"Glastonbury Cross" https://www.maryjones.us/jce/glastonburycross.html
ネイティブのフランス語にボロ耳の日本人が無理矢理カタカナ読みを当てつつ訳したらこうなった。
訳にセンスがないのも、カナが発音とかけ離れてるのも仕様です(が、明らかな誤訳があれば指摘プリーズ)。
このページはあくまでCDブックや配信サービスの" Graal "買った人向け、仏語ド素人によるメモ書きであって、
著作権侵害の意図はありません。が、怒られたらすぐ消します。