Dan Y Dŵr ウェールズ語メモ

『The Celts』より

1986年にBBCが放送したドキュメンタリー"The Celts"の挿入曲。
アイルランド・ゲール語の多い"The Celts"アルバム収録曲の中で、
唯一のウェールズ語曲。

 ウェールズ語は、ゲール語に比べたら綴りから発音が分かり易い言語。
が、文法は鬼畜。bod動詞とか、なにあれ意味分からん。
三人称単数現在肯定形だけでmaeだのywだのydyだのsyddだのsyだのいくつあるんだよ。使い分け方が分からんよ。

 ※単語ごとにカナ読みを当てていますが、あくまで目安程度のものです。ぶっちゃけ、カナ読みなんぞ土台無理です。
  辞書等を参考に発音記号っぽいものも書いてみましたが、これも目安程度のものです。分からないところも適当に書いていたりします。分からないところも適当に書いていたりします!

dan(ダン/dan)・・「~の下に」。前置詞。
y(ァ/ə)・・定冠詞。
《dan y(ダナ)》
dŵrドゥール/du:r)・・「水」。男性名詞単数形。
 ※日本盤『ケルツ』の歌詞カードではdẃrになっている。

tawelwchゥエル/'tawelux)・・「静か、静寂」。男性名詞単数形。形容詞tawel(ゥエル['tawel]/静かな)の名詞形。
syddスィ/si:ð)・・「(~であるところの)(それは)ある、which there is」。存在動詞、助動詞bod([bo:d]/ある、いる、存在する)の三人称単数現在関係節形。この形では文末に使われることが多い。
 bodは英語のbe動詞よろしく、ウェールズ語においては基本中の基本の動詞。役割によって変化しまくる上に、方言(北ウェールズと南ウェールズ)によって、または話し言葉と書き言葉によっても使われる変化形が違ったりする。学習者にとっては厄介極まりない。

『その水底には 静寂がある』

dan(ダン/dan)・・「~の下に」。前置詞。
y(ァ/ə)・・定冠詞。
《dan y(ダナ)》
dŵrドゥール/du:r)・・「水」。男性名詞単数形。

galwafルア/'galuav)・・「(私は)呼ぶ」。動詞galw(ル['galu]/呼ぶ)の一人称単数現在形。
i(イ/i)・・「私」。一人称単数の人称代名詞。
《galwaf i(ルアヴィ)》

『その水底に 私は呼びかける』

nid(ニ/nid)・・「~ない」。否定の小辞。話の焦点の当たる語句を否定する時に使われる。話し言葉では否定の代名詞dim(ディ['dim]/何も~ない)の方が良く使われる。
 ※『ケルツ』の歌詞カードでは"ni"になっている。
yw'r/'iur)・・存在動詞、助動詞bod([bo:d]/ある、いる、存在する)の三人称単数現在形yw(イゥ['iu])+定冠詞y(ァ[ə])が母音の後に続く時の形'r。ywはどっちかっつーと文語的だけど、口語でも疑問や同定の際に使われる。南ウェールズで使用頻度が高い?らしい。"Nid yw ~"で「~(それ)は存在しない」。
《nid yw'r(ニディ)》
 "Nid yw ~"は文語的表現で、口語では"Does dim(エス ディ['does 'dim]) ~"の言い回しが一般的とか何とか。"Does dim(Nid yw) ~ gyda fi."で「~は私と共にない」=「私は~を持っていない、I don't have ~」という意味になる。
 ※『ケルツ』の歌詞カードでは"yẃr"になっている。

sŵnーン/su:n)・・「音、雑音」。男性名詞単数形。
 ※『ケルツ』の歌詞カードでは"cum"になっている。
 これが"cwm(ーム/cu:m)"なら、「谷」を意味する男性名詞単数形。Enyaさんの発音だと、ぶっちゃけsŵnのところ全部こっちに聞こえるんだけど、どうなんだろう?
 あと、"gyda fi."の前に1つ2つ単語が挟まってるように聞こえるけど、よく分からない。

gyda(ガダ/gəda)・・「~と一緒に、~を使って」。(ギダ[gida])とも発音する。
fi(ヴィー/vi:)・・「私(を)」。一人称単数、基本的には目的格の人称代名詞。命令形の後、母音で終わる動詞名詞やその他一部の動詞名詞の後、前置詞(合体して前置代名詞になるものを除く)の後に続く時に使われる。「私」に特に焦点を当てる場合の主格として使われることもある。
 ※動詞名詞=verbnoun。ウェールズ語特有の文法用語。何と訳せばいいんだ?まあ、動名詞のような不定詞のようなもんなんだけど、verbal noun(動名詞)とはちょっと違う。

『何も聞こえない』
 その音は私と共にない


dan(ダン/dan)・・「~の下に」。前置詞。
y(ァ/ə)・・定冠詞。
《dan y(ダナ)》
dŵrドゥール/du:r)・・「水」。男性名詞単数形。

tawelwchゥエル/'tawelux)・・「静か、静寂」。男性名詞単数形。形容詞tawel(ゥエル['tawel]/静かな)の名詞形。
am(ア/am)・・「for、~のために、~時に」。前置詞。後に続く単語を軟音化する。
《tawelwch am(ゥエルハ)》
byth(ビ/'biθ)・・「never, ever」。副詞。"am byth"で「永遠に、forever」。
 ※普通amの後は軟音化して"am fyth"になるはずなんだけど、bythは例外的に軟音化しない。軟音化して"fyth"になると「even、より、もっと」に意味が変わって、比較級とセットでしか出て来ない。

『その水底には 永遠の静寂』

dan(ダン/dan)・・「~の下に」。前置詞。
y(ァ/ə)・・定冠詞。
《dan y(ダナ)》
dŵrドゥール/du:r)・・「水」。男性名詞単数形。

galwafルア/'galuav)・・「(私は)呼ぶ」。動詞galw(ル['galu]/呼ぶ)の一人称単数現在形。
i(イ/i)・・「私」。一人称単数の人称代名詞。
《galwaf i(ルアヴィ)》

『その水底に 私は呼びかける』

nid(ニ/nid)・・「~ない」。否定の小辞。話の焦点の当たる語句を否定する時に使われる。話し言葉では否定の代名詞dim(ディ['dim]/何も~ない)の方が良く使われる。
yw'r/'iur)・・存在動詞、助動詞bod([bo:d]/ある、いる、存在する)の三人称単数現在形yw(イゥ['iu])+定冠詞y(ァ[ə])が母音の後に続く時の形'r。
《nid yw'r(ニディ)》
sŵnーン/su:n)・・「音、雑音」。男性名詞単数形。
 ※『ケルツ』の歌詞カードでは"swm"になっている。
ddimズィ/'ðɪm)・・「nothing, no, not」。否定代名詞、否定の小辞dim(ディ['dim])が軟音化。
fwyーイ/vu:i)・・「より、もっと、より大きい、more, bigger」。形容詞、副詞mwy(ーイ[mu:i])が軟音化。"ddim fwy"で「もはや~ない、no more, no longer」的な意味になるんだろう。たぶん。
gyda(ガダ/gəda)・・「~と一緒に、~を使って」。(ギダ[gida])とも発音する。
fi(ヴィー/vi:)・・「私(を)」。一人称単数、基本的には目的格の人称代名詞。命令形の後、母音で終わる動詞名詞やその他一部の動詞名詞の後、前置詞(合体して前置代名詞になるものを除く)の後に続く時に使われる。「私」に特に焦点を当てる場合の主格として使われることもある。

『もう何も聞こえない』

nid(ニ/nid)・・「~ない」。否定の小辞。話の焦点の当たる語句を否定する時に使われる。話し言葉では否定の代名詞dim(ディ['dim]/何も~ない)の方が良く使われる。
yw'r/'iur)・・存在動詞、助動詞bod([bo:d]/ある、いる、存在する)の三人称単数現在形yw(イゥ['iu])+定冠詞y(ァ[ə])が母音の後に続く時の形'r。
《nid yw'r(ニディ)》
sŵnーン/su:n)・・「音、雑音」。男性名詞単数形。
ddimズィ/'ðɪm)・・「nothing, no, not」。否定代名詞、否定の小辞dim(ディ['dim])が軟音化。
fwyーイ/vu:i)・・「より、もっと、より大きい、more, bigger」。形容詞、副詞mwy(ーイ[mu:i])が軟音化。"ddim fwy"で「もはや~ない、no more, no longer」的な意味になるんだろう。たぶん。
gyda(ガダ/gəda)・・「~と一緒に、~を使って」。(ギダ[gida])とも発音する。
fi(ヴィー/vi:)・・「私(を)」。一人称単数、基本的には目的格の人称代名詞。命令形の後、母音で終わる動詞名詞やその他一部の動詞名詞の後、前置詞(合体して前置代名詞になるものを除く)の後に続く時に使われる。「私」に特に焦点を当てる場合の主格として使われることもある。

『もう何も聞こえない』

 北ウェールズ、グウィネズ、アヴォン・トラウエリン(トラウエリン川)の流れる谷にかつて存在した村、カペル・ケリン(Capel Celyn)。ウェールズ文化が色濃く残り、ウェールズ語のみを話すウェールズ人たちが暮らしていた集落。
 1956年、リバプール市議会は、リバプールとウィラル半島に工業用水を供給するため、トラウエリンの谷に貯水池を作る法案を上げた。住民たちの激しい反対運動と闘争の甲斐もなく、1965年、その村は、その名が示す礼拝堂(チャペル)もろともに水の底に沈んだ。
 これは、失われたカペル・ケリンを悼み、水底に残る思い出を偲ぶ歌。

――"The Celts"ライナー・ノーツ並びにhttps://en.wikipedia.org/wiki/Capel_Celyn参照


 新しい何かが始まりそうな雰囲気の音楽だなー。個人的にはちょっと『春の海』っぽくも感じるし、ファンタジー・ゲームのオープニングっぽいなー。
 とか思って聞き流してたけど、思いの外に悲しくて仄暗い歌だった。

 ところで、日本盤『ケルツ』に歌詞と対訳を載せてくれたことはありがたいんだけど・・
 サーカムフレックスがアキュートアクセントなのはいい。アポストロフィーとアキュートアクセント間違ってるけど、手書きを写したとかなら仕方ない。
 問題は、歌詞カード通りに引用するなら『Ni yẃr cum gyda fi.』の部分。
 実際どうなんだろう?Enyaさんが歌ってるのを聞くと、「スーン」より「クーム」っぽいんだよな。彼女もウェールズ語はネイティブじゃない上に私のボロ耳が一番当てにならんけども。"Nid yw'r sŵn gyda fi."「私には音が(聞こえ)ない」が"Nid yw'r cwm gyda fi."になると、「谷は私と共にない」って全然別の意味になる。歌詞カードに載った英訳が"The vallery is no longer with me."になってるところを見ると、やっぱりcwmのつもりで訳してるんだろうし。その後のswmになってるところも同じ訳語なのが解せないけど。
 何よりワケ分からんのが、ここの日本語訳が『丘には私の想いは伝わらない』。…what? 丘がどこから出て来たよ?
 私の訳も怪しいもんだけど。チェックする人、いなかったのか?


↑素材をお借りしています

参考文献
『ウェールズ語の基本』(三修社 2011)
 2015年末現在、日本語からウェールズ語が学べる学習書は、これと『毎日ウェールズ語を話そう』(大学書林 1996)のみ。
 この本は日常会話主体で基本を教えてくれる。練習問題付き。これで扱っていない文法に関しては、今のところ英語の本に頼る他なし。

"Modern Welsh Dictionary: A guide to the living language"(Oxford University Press  2007)
 Welsh⇔English。安定のオックスフォード大学出版。用法用例多数、教科書レベルで説明しっかり。いい仕事してる。その分、収録語数は"20,000 words and phrases, 30,000 translations"ってことで、多くはない。レートによるけど2,000円前後で買える。

"The Welsh Learner's Dictionary"(Y Lolfa 1998)
 Welsh⇔Englishのポケット辞書。大きな強みは、(イギリス人の)超初心者向けにアルファベットで単語の発音が書いてあること。"over 20,000 words and phrases"ってことで、収録語数は↑と同程度か、多いぐらい。が、用例は期待できない。セールでむっちゃ安かった(換算して700円ぐらい)んで文句なし。


アイルランド人の歌うウェ-ルズ語に、
ボロ耳ド素人の日本人が発音記号やらカタカナ読みやらを当てたらこうなった。
このページはあくまで"The Celts"買った人向け、
参考にならない辞書もどきであって、
著作権侵害の意図はありません。が、怒られたら消します。


BACK