Norwiegan Rune Poem(ノルウェールーン詩)

古ノルド語(古ノルウェー語)メモ

13世紀、中世の古ノルウェー語(Old Norwegian)、広義の古ノルド語(Old Norse)で書かれた詩。
16文字の新フサルク(ルーン文字)の名前と意味を紹介するもの。

当サイトでは、カナで適当な発音書くのが習慣なので、
綴りを概ねそのまま読む古典再建音もどきと、
(13世紀にはもうáは[ɔu]かも?øとǫはどっちも[ɔ]になってた?知らん)
古ノルド語学習でよく使われる現代アイスランド語発音もどきを元にカナ読みを書いてみた。

これらは、特にどなたかの朗読、歌唱に準拠している訳ではない。
ラテン語なんかもそうだけど、古ノルド語も人によって結構発音違うんだよなー。
古典再建音だとしても、どの時代想定かによっても違うし。
何にせよカタカナで表せる訳ないんだけども。

 
 Norwiegan Rune Poem

ᚠ Fé vældr frænda róge;
føðesk ulfr í skóge.

ᚢ Úr er af illu jarne;
opt løypr ræinn á hjarne.

ᚦ Þurs vældr kvinna kvillu;
kátr værðr fár af illu.

ᚬ Óss er flæstra færða
fǫr; en skalpr er sværða.

ᚱ Ræið kveða rossom væsta;
Reginn sló sværðet bæzta.

ᚴ Kaun er barna bǫlvan;
bǫl gørver nán fǫlvan.

ᚼ Hagall er kaldastr korna;
Kristr skóp hæimenn forna.

ᚾ Nauðr gerer næppa koste;
nøktan kælr í froste.

ᛁ Ís kǫllum brú bræiða;
blindan þarf at læiða.

ᛅ Ár er gumna góðe;
get ek at ǫrr var Fróðe.

ᛋ Sól er landa ljóme;
lúti ek helgum dóme.

ᛏ Týr er æinendr ása;
opt værðr smiðr blása.

ᛒ Bjarkan er laufgrønstr líma;
Loki bar flærða tíma.

ᛘ Maðr er moldar auki;
mikil er græip á hauki.

ᛚ Lǫgr er, fællr ór fjalle
foss; en gull ero nosser.

ᛦ Ýr er vetrgrønstr viða;
vænt er, er brennr, at sviða.
 

※「~の異形」が多発しています。辞書、入門書が古アイルランド語ベースであったり、古文書に標準綴りが存在しなかったりするが故の表記です。
※黒字のカナ読みが、エセ古典風発音もどきです。無理矢理カナ読みしています。あくまで目安程度のものです。
 áなどのアクセント記号がついている母音は長く、母音æ、ø、子音þ、ðは英語の発音記号でお馴染みの通りに、母音ǫは[ɒ]で、同じ子音が二つ並んだ時は長めに(kvilluを「クウィッル」と書いてはいるけど詰まった音にならずに)読めばいいんじゃないかな?

灰色字のカナ読みは、現代アイスランド語風発音もどきです。発音がかなり日本語とかけ離れているのを、無理矢理カナ読みしています。


フェ ヴェールドル ーンダ ーゲ
vældr frænda róge;
フィエ ヴァイルドル ラインダ ロウギェ
名詞 動詞 名詞 名詞
property causes friend's, kinsmen's strife
財産は (それは)~を引き起こす 友達の、親戚たちの争い(に)
財産は親戚の争いの原因になる

(牛、家畜、財産、お金)は中性名詞。単数主格。
vældrは動詞valda{(与格を)振るう、~を引き起こす、~の原因になる}の直接法現在三人称単数形veldrの異形。
frændaは男性名詞frændi{友人、(男性の)親戚}の、ここでは複数属格。
rógeは中性名詞róg(争い、中傷)の単数与格rógiの異形。

フューゼスク ルヴ ーゲ
føðesk ulfr í skóge
フューゼスク ルヴ コウギェ
動詞 名詞 前置詞 名詞
lives wolf in forest
(それは)自活する 狼は  ~の中に 森(に)
狼は森の中で生きる(餌を食う/生まれる)

føðeskは動詞fǿða(養う、食べ物を与える、引き上げる、産む)の中動態直接法現在三人称単数形fǿðiskの異形。
 「自分自身を養う(生きる)、食事をとる、生まれる」みたいな意味になるはず。
ulfr(狼)は男性名詞単数主格。
íは前置詞。ここでは与格と共に「~の中で」。
skógeは男性名詞skógr(林、森)の単数与格skógiの異形。

『ᚠ(フェー)〈財産〉は身内の諍いの元 狼は森に生きる』

ール ヴィッル ルネ
Úr er af illu jarne;
ール エル ヴェィッツル ルトネ
名詞 動詞 前置詞 形容詞 名詞
slag is from bad iron
スラグは (それは)~である  ~から 悪い 鉄(に)
スラグは悪い鉄からである

úr(霧雨、スラグ)は中性名詞。単数主格。
erは動詞vera(be)の直接法現在三人称単数形。
afは前置詞。ここでは与格と共に「~から、~によって」。
illuは形容詞illr(悪い、嫌な、難しい)の中性単数与格強変化形。
jarneは中性名詞jarn(鉄)の単数与格jarniの異形。

フト リュイプル ーインナー ヒャルネ
opt løypr ræinn á hjarne.
フプト リュイフプル ライインナウ  ヒャルトネ
副詞 動詞名詞前置詞名詞
often leaps, runs, slips reindeer on hard frozen snow
しばしば (それは)跳ねる トナカイは~でかたく凍った雪(に)
トナカイはしばしば硬く凍った雪の上を走る

løyprは動詞hlaupa(走る、跳ねる、飛び移る、逃げる、滑る、流れる)の直接法現在三人称単数形hleyprの異形。現代ノルウェー語だとブークモールでløpe、ニーノシュクでlaupaが「走る、流れる」らしいので、たぶんそんな感じ。
※〔原文〕の英語訳読むと、"the reindeer often races over the frozen snow."になってるんだけど、辞書〔参5〕によると「(急斜面を)、または(押されて)滑る」って意味もあるみたい。これløyprを"runs"や"leaps"と取るか"slips"と取るかで全然意味が変わってきちゃうぞ。
ræinnは男性名詞hreinn(トナカイ)の異形。単数主格。
áは前置詞。与格と共に「(場所)に、~で」。
hjarneは中性名詞hjarn(かたく凍った雪)の単数与格hjarniの異形。

『ᚢ(ウール)〈鋼滓〉は粗悪な鉄より生じる ※馴鹿は頻りに氷原を駈ける』
※"slips"の方を採用するなら、『馴鹿はしばしば締雪で滑る』で。
 トナカイさんの足の裏は、蹄が大きくてよく開き、縁が鋭くてスパイクみたいで、滑り止めになる毛も生えてるから、雪上移動にはすこぶる強いとか。


ᚢ(Úr:鋼滓)は、古フサルクのŪruz(ゲルマン祖語で「牡牛」)が元だという。意味が変わってしまったのは、スカンジナビアには野牛がいなかったかららしい。〔参3〕

ルス ヴェールドル ウィンナ ウィッル
Þurs vældr kvinna kvillu;
スュールス ヴァイルトル ヴィンナ ヴィッツル
名詞 動詞 名詞 名詞
Giant causes women's ailment
巨人は (それは)~を引き起こす 女たちの 病気(に)
巨人は女たちの病気を引き起こす

þurs{(北欧神話の)巨人、愚か者}は男性名詞。単数主格。
vældrは動詞valda{(与格を)振るう、~を引き起こす、~の原因になる}の直接法現在三人称単数形veldrの異形。
kvinna(女性、妻)は女性名詞。ここでは複数属格。konaの複数属格kvennaの異形。
kvilluは男性名詞kvilli(病気)の、ここでは単数与格。

ートル ヴェールズル  ファール ヴィッル
kátr værðr fár af illu
カウートル ヴァイルズル ファウ ヴェィッツル  
形容詞 動詞 形容詞 前置詞 形容詞
cheerful becomes few from evil
楽しい (それは)~になる  僅か ~によって 悪い
悪によって楽しくなるのは僅か(である)

kátr(楽しい、陽気な、朗らかな)は形容詞。男性単数主格強変化形。
værðrは動詞verða(~になる)の直接法現在三人称単数形verðrの異形。
fár(僅かの)は形容詞。男性単数主格強変化形。
afは前置詞。ここでは与格と共に「~から、~によって」。
illuは形容詞illr(悪い、嫌な、難しい)の中性単数与格強変化形。ここは名詞的に「悪いこと」かな?

『ᚦ (スルス)〈巨人〉は女たちを病み患わす 悪事によって喜ぶ者は僅か』
※「あなたにはスルスのルーネ文字と、ほかに肉欲、狂気、不安の三つの文字を彫ろう。ですが、必要があれば、彫ったとおりを、削って消してあげますが」
〔参1〕p66より引用

"Skírnismál(スキールニルの歌)"に、フレイの召使スキールニルが巨人の娘ゲルズに「フレイの求婚を受け入れないとルーンでひっでえ呪いをかけるぞ!」と脅して言うことを聞かせるシーンがある。
しかしこのエピソードだと、むしろ巨人が被害者じゃね?それともスキールニルが巨人だった(謎解釈)!?そういやこいつ「アース神でも賢いヴァンル神の子でもない」らしいけど、巨人でないとは言ってないな?
kátrやfárがかかる名詞は書かれてないけど、maðr(男)なんだろうか。そんでそいつはフレイなんだろうか。

ーッス ーストラ フェールザ
Óss er flæstra færða
オウッス フライストラ ファイルザ
名詞 動詞 形容詞 名詞
river-mouth is most of voyages
河口は (それは)~である  ほとんどの 旅(複)の
河口はほとんどの旅の~である

óss(河口)は男性名詞。単数主格。
erは動詞vera(be)の直接法現在三人称単数形。
flæstraは形容詞margr(多くの)の最上級flestrの女性複数属格強変化形flestraの異形。
færðaは女性名詞ferð(旅、旅路)の複数属格ferðaの異形。

フォール エン ルプル ウェールザ
fǫr; en  skalpr  er sværða.
フォェ エン ルプル ヴァイルザ
名詞 接続詞 名詞 動詞 名詞
journey and sheath is of swords
旅路(は) そして 鞘は (それは)~である  剣(複)の
道 そして、鞘は剣の(もの、場所)である

fǫr(旅路、攻撃、運命)は女性名詞。ここでは単数主格。
※ここは珍しく句またがり。
enは接続詞。「しかし、そして」。
skalprは男性名詞skálpr(革の鞘)の異形。単数主格。
erは動詞vera(be)の直接法現在三人称単数形。
sværðaは中性名詞sverð(剣)の複数属格sverðの異形。

『ᚬ (オーッス)〈河口〉は旅程の大方で通る路 そして鞘は剣の居場所』

※〔原文〕によると、このᚬ (Óss:河口)はキリスト教会の影響で意味が歪んだものであるらしい。ᚬ を「河口」とするのは、ラテン語のōs(口)由来。ᚬの原形は古フサルクのᚫ(ansuz:ゲルマン祖語で「アース神」)であった筈なので、óss(ǫ́ss)はáss(アース神)と同じ意味の方が自然である。
事実、アイスランドのルーン詩では、
Óss er algingautr
ok ásgarðs jǫfurr,
ok valhallar vísi.
Jupiter oddviti.
〔原文〕p39より引用

ᚬ (オーッス)〈神〉はガウトル老
そしてアズガルズの君主
そしてヴァルハラの長
ユピテル 首長

と、なっている。
 ※gautr(ガウトル)はオーディンの別名の一つ。

ーイズ ウェ ッソム ヴェースタ
Ræið kveða rossom væsta;
ライイズ ヴェ ッソム ヴァイスタ
名詞 動詞 名詞 形容詞
riding say for horses worst
乗馬を (それらは)言う  馬たちに最悪
乗馬を馬たちにとって最悪だと(人は)言う

ræiðは女性名詞reið(乗馬、乗り物、馬車)の異形。ここでは単数対格。
kveða(言う、話す)は動詞。ここでは直接法現在三人称複数形。主語ないけど、不定人称文かな?
rossomは中性名詞hross(馬)の複数与格hrossumの異形。
væstaは形容詞illr(悪い)の最上級verstrの女性単数対格強変化形verstaの異形。

ギン ウェールゼト ーツタ
Reginn sló sværðet bæzta.
レイーイン ストロウ ヴァイルゼト バイスタ 
固有名詞 動詞 名詞 形容詞
Regin forged the sword best
レギンは (それは)打った  その剣を 最高の
レギンは最高の剣を打った

Reginn(レギン)は男性固有名詞主格。人名。シグルド(シグルズ)の養父。
 「身の丈は小人であったが、頭がよく、厳しく、魔術に長じていた。彼はシグルズを養育し、教え、とても可愛がった」〔参1〕p133より引用
 ・・末路が、なぁ(北欧神話にはよくあること)。
slóは動詞slá{打つ、叩く、攻撃する、(楽器の)弦を弾く}の直接法過去三人称単数形。
sværðetは中性名詞sverð(剣)の後置定冠詞付き単数対格sverðitの異形。
bæztaは形容詞góðr(良い、善良な)の最上級beztr(最も良い)の中性単数対格弱変化形beztaの異形。修飾する名詞に定冠詞ついてると、形容詞は概ね弱変化形になる。

『ᚱ(レーイズ)〈乗馬〉は馬には最悪であると言う レギンは至高の剣を鍛えた』
※"Reginsmál(レギンの歌)"によると、
「レギンはグラムという剣をシグルズに与えた。この剣はすこぶる鋭くて、ライン河の中に突っ込んで、毛糸の房を流れの上手から流すと、水を切るように一刀両断にしてしまう。この剣でシグルスは、レギンの鉄敷を真二つに打ち割った」

〔参1〕p135より引用
もしかして一行目も、シグルドの騎馬Grani(グラニ)のことを言ってるのかな?

カウ ルナ ルウァン
Kaun er barna bǫlvan;
コェイ ルトナ ボェルヴァン
名詞 動詞 名詞 名詞
adscess is children's curse
腫れ物は (それは)~である  子供たちの 不幸の元(は)
おできは子供たちの不幸のもと

kaun(おでき、腫れ物)は中性名詞。単数主格。
erは動詞vera(be)の直接法現在三人称単数形。
barnaは中性名詞barn(子供)の複数属格。
bǫlvan(罵り、呪い、わざわい、不幸の元)は女性名詞。単数主格。

ギュルウェル ーン フォルウァン
bǫl gørver nán fǫlvan.
ボェ ゴェルヴェル ーン フォェルヴァン
名詞 動詞 名詞 形容詞
misfortune makes corpse pale
不幸は (それは)~にする  死体を 青ざめた
不幸は死体を青白くする

bǫl(災い、不幸、災難)は中性名詞。単数主格。
gørverは動詞gøra(do, make)の直接法現在三人称単数形gørirの異形か?え?本当に?
nánは男性名詞nár(死体、死人)の男性単数対格。
fǫlvanは形容詞fǫlr(青白い、青ざめた)の男性単数対格強変化形。ここではnánを直接修飾してるわけじゃなく、gørverについて「青白くする」かな。

『ᚴ(カウン)〈おでき〉は子供の不幸の元 凶事は死者を蒼褪めさせる』

※古フサルクのᚲ(Kaunaz)からできた文字。原意は不明らしい。アングロサクソン詩のᚳ(Cen 松明)に対応する。〔参3〕

ガッル ルダストル ルナ
Hagall er kaldastr korna;
ガッツル ルダストル ルトナ
名詞 動詞 形容詞 名詞
hail is coldest of grains
雹は (それは)~である  最も冷たい 穀物(複)の
雹は穀物の(中で)最も冷たい

hagall(霰、雹)は中性名詞。文字名ではない普通名詞としてはhagl。単数主格。
erは動詞vera(be)の直接法現在三人称単数形。
kaldastrは形容詞kaldr(寒い、冷たい)の最上級(男性単数主格強変化形)。
kornaは中性名詞korn(穀物)の複数属格。

ストル ープ ーイメン フォルナ
Kristr skóp hæimenn forna.
ストル コウ ハイイメン フォルトナ
名詞 動詞 名詞 形容詞
Christ shaped, created the world old, ancient
キリストは (それは)創造した  世界を 古い
キリストは古い世界を創造した

Kristr(キリスト)は男性固有名詞主格。人名。
skópは動詞skapa(形作る、作る、創造する)の直接法過去三人称単数形。
hæimennは男性名詞heimr{世界、地球、領域、土地、地域、(神話における)ヘイム}の後置定冠詞付き単数対格heiminnの異形。
fornaは形容詞forn(古い、古の)の男性単数対格弱変化形。

『ᚼ(ハガッル)〈雹〉は最も冷たい穀物 キリストは古の世界を創り成した』
※ノルウェーには10世紀頃にキリスト教が伝わったらしい。ここでのキリストは神と同一の存在みたい。三位一体的な?

ナウズル レル ーッパ ステ
Nauðr gerer næppa koste;
ノェイーズル ギェーレル ナイフパ ステ
名詞 動詞 形容詞 名詞
bondage makes scant choices
束縛は (それは)~にする  乏しい 選択(複)を
束縛は選択を乏しくする

nauðrは女性名詞nauð(必要、困難、束縛)の異形。単数主格。
gererは動詞gera(do, make ※gøraと同じ)の直接法現在三人称単数形gerirの異形。
 Kaunの詩節ではgørverだったじゃん?何で同じ詩で違う形使ってんの?
næppaは形容詞hneppr(乏しい、不十分な)の男性複数対格強変化形hneppaの異形。ここではgererについて「乏しくする」。
kosteは男性名詞kostr(選択)の複数対格kostiの異形。

ニュクタン ール ステ
nøktan kælr í froste.
ノェフタン キャイ ーステ
形容詞 動詞 前置詞 名詞
naked (man) cools in frost
裸の(人、男)を (それは)冷やす  ~で 霜(に)
裸の人を霜で冷やす

nøktanは形容詞nǫkkviðr(裸の、むきだしの)の男性単数対格強変化形。・・なんやこのあたまおかしい変化は?
 mann{maðr(人、男)の単数対格}が省略されてるか、形容詞自体が名詞化してる?
kælrは動詞kæla(冷やす、冷える)の直接法現在三人称単数形。非人称構文かな?
íは前置詞。ここでは与格と共に「~(の中)で」。
frosteは中性名詞frost(霜)の単数与格frostiの異形。

『ᚾ(ナウズル)〈束縛〉は選択の幅を狭める 裸の人は霜で凍える』
※「〈困難〉は選択の余地を奪う」かもしれない。

ース ッルム ーイザ
Ís kǫllum brú bræiða;
ース コェッツルム ライイザ
名詞 動詞 名詞 形容詞
ice call bridge broad
氷を (私たちは)呼ぶ  橋(を) 広い
氷を私たちは広い橋と呼ぶ

ísは男性名詞íss(氷)の単数対格。
kǫllumは動詞kalla(呼ぶ、名付ける、叫ぶ)の直接法現在一人称複数形。
brú(橋、土手道)は女性名詞。ここでは単数対格。
bræiðaは、形容詞breiðr(幅が広い)の女性単数対格強変化形breiðaの異形。

ンダン ルヴァト ーイザ
blindan þarf at læiða.
ンダン ールヴァト ライイザ
名詞 動詞 小辞 動詞
blind (man) needs to lead
盲目の(男、人)を (それは)必要である  導くことが
盲目の人を導かねばならない

blindanは形容詞blindr(盲目の、目が見えない)の男性単数対格強変化形。
 やっぱりここもmann{maðr(人、男)の単数対格}が省略されてるか、形容詞自体が名詞化してるかも。
þarfは動詞þurfa(必要とする、必要がある)の直接法現在三人称単数形。これも非人称構文かな?
atは、続く動詞が不定詞であることを示す小辞。
læiðaは動詞leiða(導く、案内する、指揮する、手を取って連れて行く)の異形。不定詞。

『ᛁ(イース)〈氷〉を、我らは「広い橋」と呼ぶ 盲者の手を引き導かねばならぬ』

ール ンナ ーゼ
Ár er gumna góðe;
アウ グュンナ ゴウ
名詞 動詞 名詞 名詞
hail is men's boon
豊穣は (それは)~である  人々の恩恵(は)
豊穣は人々の恵みである

ár(年、年間生産量、たっぷり、豊富、豊穣)は中性名詞。単数主格。
erは動詞vera(be)の直接法現在三人称単数形。
gumnaは男性名詞gumi(人、男)の複数属格。散文ではほぼ使われない詩的な言葉らしい。
góðeは男性名詞góði(恩恵)の異形。単数主格。

ゲテ アト ルル ヴァ ーゼ
get ek at ǫrr var Fróðe.
ギェーテク  アト オェルル ヴァ ロウ
動詞 人称代名詞 接続詞 名詞 動詞 名詞
guess I that open-handed was Frodi
(私は)~と思う 私は  ~ということを 気前がいい (それは)~だった フロージは
フロージは気前が良かったと私は思う

・getは動詞geta(得る、言及する、推測する、~であると思う)の一人称単数現在形。
・ekは一人称単数主格の人称代名詞。
・ǫrr(寛大な、気前がいい)は形容詞。男性単数主格。
・varは動詞vera(be)の直接法過去三人称単数形。
・Fróðeは男性固有名詞Fróðiの異形。人名。

『ᛅ(アール)〈豊穣〉は人々の与る恵み フロージは寛大であったと思い做す』
※Fróðiは、フリズレイヴの子フロージ、「フロージの平和」を築いたデンマーク王のこと。彼の治世では治安が維持されて国が豊かに富み栄えたという。サガにも結構出て来る。
 "Grottasöngr(グロッティの歌)"においては、この平和の終わりが描かれた。
 フロージは二人の下女、フェニヤとメニヤを手に入れた。彼はこの女巨人たちに、魔法の石臼(Grótti)を碾くよう命じ、碌な休みも与えなかった。大力無双で未来を読める下女たちに、彼は己の破滅を聞かされる。
「フロージに富をひき出そうぞ。しあわせをひき出そうぞ。幸運の石臼でたんと黄金をひき出そうぞ。彼が富の上に坐り、羽毛の上に寝、喜んで目を覚ますように。それでこそよくひいたといえる。
ここでは他人を傷つけてはならぬ。不幸をはかってはならぬ。他人の生命を狙ってはならぬ。鋭い剣をふるって切ることはならぬ。兄弟を殺した者が縛られているのを見つけても」
〔参1〕p213より引用
 "Fróða fáglýjaðra þýja meldr(フロージの幸薄い女奴隷たちの粉)"や"mjǫl Fróða(フロージの粉)"は、どちらも「黄金」を表すケニング〔参8〕。

ール ンダ リョーメ
Sól er landa ljóme
ール ンダ リョーメ
名詞 動詞 名詞 所有形容詞
Sun is of lands light
太陽は (それは)~である  土地(複)の、国々の 光(は)
太陽は国々の光である

sólは女性名詞(太陽)の単数主格。
erは動詞vera(be)の直接法現在三人称単数形。
landaは中性名詞land(土地、陸地、国)の複数属格。
ljómeは男性名詞ljómi(光、光線、輝き)の異形。単数主格。

ーティ ルグン ーメ
lúti ek helgum dóme
ーティ ルグュン ドウ
動詞 人称代名詞 形容詞名詞
bow down I holy judgement, doom
{私(たち?)は}身を屈めよう 私は 神聖な 意見に
私は神聖な意見(裁き/運命)に頭を下げよう

lútiは動詞lúta{お辞儀をする、(敬意や崇拝で)身を屈める}の、接続法現在一人称単数形lútaの異形かな?"vér lúti"なら接続法現在一人称複数で「(私たちが)頭を下げよう」なんだけど、主語がek(私)なんだよな。かといって直接法現在一人称単数形はlýt。ちょいと違う気がする。
ekは一人称単数主格の人称代名詞。
helgumは形容詞heilagr(神聖な)の、男性単数与格強変化形。
dómeは男性名詞dómr(意見、判決、運命)の単数与格dómiの異形。

『ᛋ(ソール)〈太陽〉は国々の光 我は神意にひれ伏さん』

※"Gylfaginning(ギュルヴィたぶらかし)"によると、太陽は神々がムスペルヘイムから飛んできた火花から世界を照らすために作ったものである。ムンディルフェーリという男が、自分の息子にマーニ(月)、娘にソール(太陽)と名付けたことで神々の怒りを買い、二人はそれぞれ月と太陽を牽く馬たちの馭者にされてしまった。〔参1〕

 しかし、ここでは、太陽を牽く女神ソールは意識されていない。光り輝く神々の貴公子バルドルか、その息子フォルセティのことを言っているように読める。
 同じく"Gylfaginning(ギュルヴィたぶらかし)"によると、
「彼(=バルドル)は最もすぐれた神で、誰一人彼をたたえない者はない。容貌が、それは美しく、輝いているので、彼から光が発しているほどだ。(中略)彼はアース神のうちで最も賢く、雄弁で優しい神なのだ。だが、彼の裁きが不変ではないというのも彼の性質だ」
〔参1〕p244より引用
「フォルセティという神はバルドルと、ネブの娘であるナンナの間に生れた子だ。この神はグリトニルという館を天にもっている。そして、何かもめごとをもって彼のところにやってくる者は、一人残らず和解して帰って行く。そこは神々と人間のための最もよい法廷というわけだ」
〔参1〕p248より引用
 Glitnir(グリトニル)は「glitra(光り輝く、きらびやかな)館」。

テュール ーイネンドル ーサ
Týr er æinendr ása;
ティール アイイネンドル アウ
名詞 動詞 形容詞 名詞
Tyr is single-handed of Aesir
テュールは (それは)~である  片手の アース神たちの
テュールはアース神族の片手の(神)である

Týrは男性固有名詞。主格。ちなみに男性名詞týrは「神」の意味。
erは動詞vera(be)の直接法現在三人称単数形。
æinendrは形容詞ein-hendr(片手の)の異形。男性単数主格強変化形。数詞einn(1)と女性名詞hǫnd(手)がくっついたやつ。hendrは複数形なので、字義通りなら「片両手」かな?
ásaは男性固有名詞áss(アース神)の複数属格。ここでは複数形æsirを団体「アース神族」として扱ってる感じ。

フト ヴェールズル ズル ーサ
opt værðr smiðr blása.
フト ヴァイルズル ーズル ラウ
副詞 動詞 名詞 動詞
often has to smith to blow the bellows
しばしば (それは)~しなければならない 鍛冶師は ふいごを吹くことを
鍛冶師はしばしばふいごを吹かなければならない

værðrは動詞verða(~になる)の直接法現在三人称単数形verðrの異形。ここでは不定詞と共に「~しなければならない」。
smiðr(鍛冶師、職人)は、男性名詞単数主格。
blása(吹く、口で吹く、ふいごを吹く)は、動詞の不定詞。atが省略されてる?

『ᛏ(テュール)は片手のアース神族 鍛冶師は頻りに鞴を吹かねばならぬ』

※"Gylfaginning(ギュルヴィたぶらかし)"によると、
 アース神たちは、神ロキと女巨人アングルボザの間に生まれた恐ろしい狼フェンリスウールヴ(フェンリル)に足枷(グレイプニル)を嵌めようと試みた。神々は後でちゃんと解き放つことを約束し、保証として、テュールが狼の口の中に右手を入れた。神々は勿論狼を解放しなかったので、テュールの手首は食いちぎられてしまった。〔参1〕
※2行目は、"Skáldskaparmál(詩語法)"にある以下のエピソードのことかもしれない。
 ドワーフ(小人)のブロックルとエイトリ兄弟は、ある日三つの宝物を携えたロキにより、「お前らにこれよりすごい宝物が作れるか」と挑発を受けた。イーヴァルディの息子たちが作り上げた三つの宝物は、シヴの髪、スキーズブラズニル、グングニル。ロキの頭を賭けた挑戦を受けた二人は、早速仕事にかかる。
 エイトリに「炉の中のものを取り出すまでふいごを止めるな」と指示されたブロックルは、ハエに手を刺されても首を刺されてもふいごを動かす手を止めず、黄金の毛の猪グリンブルスティ、黄金の腕輪ドラウプニルを作り上げた。最後にまぶたを刺された時、目に入った血で何も見えなくなり、ハエを追い払うのに一瞬手を放してしまった。危うく台無しになるところだったが、どうにか鉄のハンマーミョルニルが完成した。ミョルニルは、柄の部分がかなり短いという欠点があったものの、アース神たちによって最高の宝だと判定された。〔参2〕

ビャルカン ラウヴ・グリュンストル ーマ
Bjarkan er laufgrønstr líma;
ビャルカン ロェイヴ・グロェンストル ーマ 
名詞 動詞 形容詞 名詞
birch is greenest leaves of limbs
白樺は (それは)~である  葉色が一番緑の 枝の
白樺は一番緑の葉の枝をしている

bjarkan(白樺)は女性名詞。文字名ではない普通名詞としてはbjǫrk。複数主格がbjarkar。
erは動詞vera(be)の直接法現在三人称単数形。
laufgrønstr(葉色が最も緑の)は形容詞。中性名詞lauf(葉)と形容詞grǿnn(緑の)の最上級grønstrがくっついたやつ。
límaは男性名詞limr(手足、枝)の複数属格limaの異形。

ールザ ティーマ
Loki bar flærða tíma.
ーキ ライルザ ティーマ
名詞 動詞 名詞 名詞
Loki bears of deceits (good) times
ロキは (それは)生んだ  欺瞞(複)の時(複)を
ロキは欺瞞の幸福(良い時)を生んだ(運んだ)

Loki(ロキ)は男性固有名詞主格。人名。
barは動詞bera(運ぶ、生む、耐える)の直接法過去三人称単数形。
flærða(偽り、欺瞞)は女性名詞flærðの複数属格。
tímaは男性名詞tími(時間、期間、音節の長さ、幸運、幸福)の複数対格。

『ᛒ(ビャルカン)〈白樺〉は最も緑濃き葉枝を持つ ロキは欺瞞によって時を得た』

※"Gylfaginning(ギュルヴィたぶらかし)"によると、
「アース神の中傷者、あらゆる嘘の張本人、神々と人間の恥と、何人かの者が呼んでいる者が、アース神の仲間にいる。それは、ロキ、またはロプトといい、巨人ファールバウティの息子だ」
「ロキは容貌は美しいのだが、性質がひねくれていて、行動がひどく気まぐれなのだ。悪知恵にかけては誰にもひけをとらず、何事にもずるい手だてを心得ていた。いつも神々を苦境におとしいれたが、そのはかりごとで救い出したこともしばしばある」

〔参1〕p248より引用
 特にバルドルを策略で死なせたことを言っているらしい。
「フリッグ、もっとおれの毒舌をききたいっていうんだな。バルドルがこの先、館に馬でやってくるのを拝めなくなるのは、おれのせいなんだぞ」
〔参1〕p83より引用

ズル ルダル アウ
Maðr er moldar auki;
ーズル ールダル オェイ
名詞 動詞 名詞 名詞
mankind is of dirt addition
人間は (それは)~である  土の増加
人間は土の増加である

Maðr(人間、男)は男性名詞。単数主格。
erは動詞vera(be)の直接法現在三人称単数形。
moldarは、女性名詞mold(土、土壌)の単数属格。
auki(増加、追加)は男性名詞。単数主格。

キル ーイー  ハウ
mikil er græip á hauki.
メィキル  ライパウ ホェイ
形容詞動詞 名詞 前置詞 名詞
great is grip on hawk
偉大な (それは)~である  握り~による 鷹(に)
偉大なのは鷹による掴み(鷹による掴みは凄い)

mikilは形容詞mikill(大きな、広い、高い、偉大な、多くの)の女性単数主格強変化形。
erは動詞vera(be)の直接法現在三人称単数形。
græipは女性名詞greip(親指と他の指の間のスペース、握り、掴み、把握)の異形。単数主格。
áは前置詞。与格と共に「~による」。
haukiは男性名詞haukr(鷹)の単数与格。
主語と述語がひっくり返っている。

『ᛘ(マズル)〈人間〉は土の累加なり 強大なるは鷹の握力』

※これもキリスト教の思想だな。
「あなたは顔に汗してパンを食べ、ついに土に帰る、あなたは土から取られたのだから。あなたは、ちりだから、ちりに帰る」
〔参11〕p4(創世記3-19)より引用
 一方、"Völuspá(巫女の予言)"においては、最初の人間アスクとエムブラは、なんか海岸にいたところをオーディンとヘーニルとローズルによって息と心と生命の温かさと良い姿を与えられている。
"Gylfaginning(ギュルヴィたぶらかし)"においては、ボルの息子たち(オーディン、ヴィリ、ヴェー)が、海岸に落ちていた二つの木から最初の男アスクと女エムブラを作っている。〔参1〕
 「人間」、「男」、「女」を意味するケニングにも「木」を使ったものが非常に多い。例えば"viðr hnossa(宝の木)"=「男」、"lind línu(頭飾りのシナノキ)"=「女」など。〔参8〕

グル フェーッルール フャッレ
Lǫgr er, fællr ór fjalle
ロェグル  ファイッツルロウ フャッツレ
名詞 動詞 動詞 前置詞 名詞
Water, Lake is falls from mountain
水(湖)は (それは)~である  (それは)落ちる ~から 山(に)
水は山から落ちる~である

lǫgr(湖、海、水、液体)は男性名詞。単数主格。
erは動詞vera(be)の直接法現在三人称単数形。
fællrは動詞falla(落ちる)の直接法現在三人称単数形fellrの異形。
órは前置詞。与格と共に「~から」。
fjalleは中性名詞fjall(山、岩礁)の単数与格fjalliの異形。

フォッス エン ッル ッセル
foss; en  gull ero nosser.
フォーッス エン グュッツル ーロ ッセル
名詞 接続詞 名詞 動詞 名詞
waterfall and gold(s) are costly things
滝(は) そして 黄金(は) (それらは)~である  高価なもの(複)は
滝 そして、黄金である 高価なものは

fǫr(旅路、攻撃、運命)は女性名詞。ここでは単数主格。
※句またがり。
enは接続詞。「しかし、そして」。
gull(金、黄金、宝、貴重なもの)は中性名詞。単数または複数主格。
eroは動詞vera(be)の直接法現在三人称複数形eruの古形。
nosserは女性名詞hnoss(高価なもの、装飾品)の複数主格hnossirの異形。

『ᛚ(ログル)〈水〉は山より流れ下る滝 しかし価値あるものは黄金でできている』

ール ヴェトル・グリュンストル ヴィ
Ýr er vetrgrønstr viða;
ール ヴェトル・グロェンストル ヴェイ
名詞 動詞 形容詞 名詞
yew is greenest in winter of trees
イチイは (それは)~である  冬に一番緑の 木々の(中で)
イチイは木々の中で冬に最も緑である

ýr(イチイの木、イチイの弓)は男性名詞。単数主格。
erは動詞vera(be)の直接法現在三人称単数形。
vetrgrønstrは、男性名詞vetr(冬、年)と形容詞grǿnn(緑の)の最上級grønstrがくっついたやつ。男性単数主格強変化形。
 形容詞vetr-grænnは「常緑の」。
viðaは男性名詞viðr(木、森)の複数属格。

ヴェーント ンンル アト ヴィ
vænt er, er brennr, at sviða
ヴァイント ンンル  アト ヴェイ
形容詞動詞 接続詞 動詞 小辞 動詞
wont is when burns to char
~しがち (それは)~である  ~する時に(それは)燃やす 焦がすことを
燃やす時に焦がしがちである

væntは形容詞vanr(いつもの、慣れた)の中性単数主格強変化形vantの異形。単数主格。
 いやしかしvanrには(不足している、足りない)の意味もある。こっちだと、「燃やす時に焼くのに足りない」つまり「燃えにくい」になったりする?
erは動詞vera(be)の直接法現在三人称単数形。væntは中性だし、Ýrが主語ではなくて、不定人称文かな?とするとbrennrもsviðaも他動詞?
brennrは動詞brenna(火で燃やす、火に焼かれる)の直接法現在三人称単数形。
atは、続く動詞が不定詞であることを示す小辞。
sviðaは動詞svíða(焦がす、燃やす、焙る)の異形。不定詞。vænt erにつくみたい。
 女性名詞sviðaだと「焦がすこと、焼くこと、焙ること」の他に「(ノルウェーにおいて)焼畑のために伐採された林地」の意味がある。
 〔原文〕だと英訳が"it is wont to crackle when it burns."なんだけど、このto crackleは意訳?辞書を見た限りsvíðaに「パチパチ音がする」意味はない?(古ノルド語で「パチパチ音がする」はsprakaらしい)

『ᛦ(ユール)〈櫟〉は冬の樹々で最も青々としている 火をつけると焦げ易い』

 最近フォロワーさんに教えて貰った素敵な音楽グループFAUNさんが、『Baldur』という歌でこの詩のᛋ Sólの詩節を歌ってたの。かっこ良いの。
 遅ればせながらこんなジャンルの音楽があったことを知って、You tubeでペイガン・フォーク他ヴァイキング時代をモチーフにしたアーティストの皆様の曲を色々聴いていると、何やらこの詩を歌詞に引用していたりモチーフにしている名曲を複数見つけちゃったの(例:HeilungさんのNorupo)。

 分かるわぁ。
 まず頭韻、脚韻が心地良いし、ケニングもかっこいいし、それぞれの二行詩は、文章が繋がってるのもあるけど、一行目と二行目で全然関係なさそうなこと言ってたりするし、何を意味してるのか分からないところも多くて、それが何だか現代までに失われた文化の名残を嗅いでるみたいでミステリアスだし、ルーンを覚える役に立つし、みんな好きだよね。
 で、最近入手した『ルーン文字研究序説』凄すぎるテンションと相俟って、なんか気づいたら埃被ってた『エッダ』とか諸々本棚から引っ張り出してたの。ふしぎ。

※ルーンストーン画像は、
Johan Göransson著"Bautil"(1750)掲載木版画(No.593)を切り抜き加工したもの。
Sveriges depåbibliotek(スウェーデン寄託図書館)のデジタルコレクションより。
ノルウェーのストーン持ってこい?だってこれ素敵だったんだもん。
https://digital.ub.umu.se/node/249114/metadata?preview=249114%2F197%2Fsimple%2F0

原文
"Runic and heroic poems of the old Teutonic peoples"(Cambridge University Press 1915)
 THE NORWEGIAN RUNIC POEM(p35~38)
 https://www.arild-hauge.com/PDF/Runic%20and%20heroic%20poems%20of%20the%20old%20Teutonic%20peoples.pdf
 イギリス学士院のフェローBruce Dickinsさんの著。後にリーズ大学で中英語と古ノルド語の教授をやったり、ヨークシャーケルト研究会の会長をやったりしたお方。THE RUNIC POEMSの項目には、このノルウェーのルーン詩の他、10世紀の写本から写されたアングロサクソンのルーン詩、15世紀頃の作だというアイスランドのルーン詩とそれぞれの訳、9世紀の写本から写されたAbecedarium Nordmannicum(ノルマン人のアルファベット表)が載っている。

"Rune poems" https://en.wikisource.org/wiki/Rune_poems
 Wikisourseに上げられた上記の本からの引用。

参考・引用資料
1.『エッダ-北欧歌謡集』(新潮社 2005 第19刷)
 谷口幸男さんによる「古エッダ」及び「スノリのエッダ ギュルヴィたぶらかし」の翻訳。初版は1973年。
 知識0の初見ではあんまり面白くない。韻文を散文に訳してあるやつは大体そう。謎の固有名詞も多い。しかし、分かり易く楽しく書かれた北欧神話物語や、北欧神話をモチーフにしたかっこいいキャラクター、かっこいい名前の武器道具なんかに触れて元ネタを知りたくなった時、この本は一気に面白くなる。余談ながら、私の入り口はシブサワ・コウさんの『爆笑北欧神話』(光栄 1995)でしたわよ。

2."The Younger Edda (tr. Anderson)/Skáldskaparmál" https://en.wikisource.org/wiki/The_Younger_Edda_(tr._Anderson)/Sk%C3%A1ldskaparm%C3%A1l?uselang=ja
 ウィキソースにある、スノリ(スノッリ・ストゥルルソン)による"Skáldskaparmál(詩語法)"の英訳。これの翻訳は↑に収録されてないんだ。
 谷口幸男さんの『スノリ「エッダ」「詩語法」訳注』(『広島大学文学部紀要』43巻特輯号3 1983)の商業出版希望。

3.『ルーン文字研究序説』(八坂書房 2022)
 谷口幸男さんによる紀要論文『ルーネ文字研究序説』(『広島大学文学部紀要』30巻特輯号1 1971)、『ドイツのルーン碑文』(『広島ドイツ文学』10号 1996)、『ベルゲン出土のルーン碑文』(『大阪学院大学国際学論集』vol.12, no.1 2001)、『アイスランドのルーン碑文』(『大阪学院大学国際学論集』vol.5, no.1 1994)を元に、小澤実さんが編集、補訂、解説を加えた名著。ルーン詩3種とAbecedarium Nordmannicumの訳も載っている。
 ルーン文字の探究者には必携の書。それほどでもない生かじり(=私)にも十分に面白い。

4.『古アイスランド語入門』(大学書林 2006)
 下宮忠雄さん、金子貞雄さんの共著。日本語から古ノルド語が学べる希少な本。古アイスランド語の文法概説の他、いくつかの散文、古エッダの韻文の原文及び訳が載っている。
 文法書として使うには足りないが、古アイスランド語がどういうものかふわっと掴めるかも。動詞や名詞の原形(辞書形)はこんなんなんやな、とふんわり頭に入れておくと、分からない単語を辞書で引き易い。

5."Dictionary of the Old Norwegian Language" https://old-norwegian-dictionary.vercel.app/
 ノルウェーの司祭Johan Fritznerさんおよびその後継者によって、1886~1896年にかけて分冊で出版された古ノルウェー語⇒ノルウェー語リクスモールの辞書"Ordbog over det gamle norske Sprog"のオンライン版。
 なので出て来る訳は英語じゃない。繰り返す。英語じゃない。頑張った!Google翻訳が!

6."Cleasby & Vigfusson Old Norse dictionary" https://cleasby-vigfusson-dictionary.vercel.app/
 Richard CleasbyさんとGudbrand Vigfussonさんによる古ノルド語及び古アイスランド語⇒英語辞書のオンライン版。初版は1874年。なので英語はちょっと古いし、例文多過ぎて読み難い行替えして!とは思うけど、↑に比べれば、うん。

7."A Concise Dictionary of Old Icelandic" https://old-icelandic.vercel.app/
 Geir Zoëgaさんによる古アイスランド語⇒英語辞書"A Concise Dictionary of Old Icelandic"のオンライン版。初版は1910年。Cleasby & Vigfussonよりも簡潔で見易いのが特長。

8."The Skaldic Project" https://skaldic.org/m.php?p=skaldic
 中世の古ノルド語、アイスランド語で書かれたスカルド詩の文字資料を編集する国際プロジェクト。ヘイティやケニングの検索もできるし、一部の詩は、韻文を散文に直した場合の語順も示してくれる。しゅごい。

9."Wiktionary, the free dictionary" https://en.wiktionary.org/wiki/Wiktionary:Main_Page
 言わずと知れたウィクショナリー英語版。分からねー単語を適当につっこんで、目次にOld Norseが出てくればしめたもの。検索に出てこなくても、Icelandic, Norwegian Bokmål, Norwegian Nynorsk, Faroese等の同綴りや近似の語句から原形を辿れることもある。こともある!

10.『ニューエクスプレス+アイスランド語』(白水社 2022 第2刷)
 入江浩司さんの著。多言語学習者におなじみのシリーズ。CD付だし、音声ダウンロードもできる。選択肢の少なさを差し引いても、おそらく良著。

 現代アイスランド語の語彙や文法は、古ノルド語の子孫語の中で最も古い形態を残しているんだってよ。
 それは分かるよ。分かるけど、発音に関しては、絶対こんなんやなかったやろ!?何で綴りにないtが頻繁に挟まってくるんや!?bはバ行、dはダ行で説明されてるけど、ほとんどパ行とタ行じゃね?(※b,d,gは日本語と違って無声音なんや。p,t,kとの違いは、無気音か有気音かで、日本語ネイティブの耳には区別が付き辛いんや・・)
 このページの現代アイスランド語発音風ルビは、この本に準拠してるようなないような・・

11.『旧約聖書』(日本聖書協会 1974)
 私が生まれる前から家にあった古い口語訳聖書。

この文章書いてる人は、各言語に関しても北欧神話に関してもあんまり詳しくありません。
ド素人ゆえ、堂々と間違ったことを書いているかもしれません。
おかしな記述がありましたら当方の責任です。ご注意ください。


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