Collitopus〜古代神聖語〜

 『傍観神話』の世界においては、大きく分けて3種類の「魔法(原理がどうなってんだかよく分からない不思議な力)」があります。古代神聖語(コリトプス)、超能力(アルス)、魔法(マギクス)です。3種類とは言ってもそれぞれが全く別という訳ではなく、コリトプスはアルスの中に含まれ、アルスはマギクスの中に含まれます。この3種類の「魔法」について、意味の狭い方から順番に語りたいと思います。
 今更ですが、(そしてこのページに限りませんが)マニアックです。作者が自分の為に作っている資料ですので、そりゃあもうマニアックです。

※コリトプス、アルス、マギクスを使うには、神通力じんずうりき(グリス)が必要です。
 グリスとは、神霊属ナプトなら誰もが生まれつき備えている特殊な生命エネルギーですが、「契約(ゲッシュ)」により、神霊属ナプト以外の生物がこの特殊な生命エネルギーを纏うことも可能です。簡単に言えばMP(マジックポイント)みたいなもの。


T.Collitopus
 ラテン語で「高い(hill)」を意味する"collis"と「石灰華(tufa)」を意味する"tophus"をくっつけた造語。こだいしんせいご。
 ※石灰華とゆーのは、温泉の湧出口にこびりついてる、お湯の成分の結晶。とかそんなやつ。一見、何もないとこから現れたように見えません?

解説
 『傍観神話』の世界は、『黎明の書 堕落の章』にある通り、二つの違う次元が重なってできている世界です。普通に生物が暮らしていて無機物が存在する「物質の世界」、そして、精霊や神々の暮らしている「心の世界」。コリトプスというのは、昔神々が二つの世界を構築する時に使った呪文です。パソコンを動かす為のプログラミング言語とか、ホームページを作る為のhtmとかhtmlみたいなもんかと。
 呪文を唱えるだけで、世界の構造に直接手を加えたり、異世界の物体、生物を召喚したりできます。めちゃくちゃ卑怯で便利な「魔法」です。
 文字のない言語です。

制限
 ・生物(意思を持っているもの)に命令を下すには、その生物の真の名前(マァタ)を知る必要があります。
 ・この呪文が使えるのは、神々と神族ルパーラ、そして巨大な魂を持つ精霊だけです。
 神族ルパーラとは、神霊属ナプト族の中に稀に生まれる個体のこと。神そのもののように強大な神通力グリスを持ち、生まれつき「心の世界」と「物質の世界」を行き来する能力を持っているもののことです。神族ルパーラは先天的にコリトプスを知っているとされています(し、作中にもそう書きました)が、厳密には、自然の中からこの言葉を聞き取る耳、学習する力を持っているのが神族ルパーラだけと言った方が正しいかと。絶対音感みたいなもんですか。
 この不思議な聴覚を後天的に身につけることが不可能であり、自然界が呪文を執行する為に術者から莫大な神通力グリスを吸い取るというのが、生身では神族ルパーラしかコリトプスを使えない理由です。
 ただし、人というのは不可能に挑戦する生き物です。神族ルパーラではない神霊属ナプト人や人間がコリトプスを使う為の、裏ワザがいくつかあります。

文例
 自然界に何らかの改変を促す言語なので、使用例は全て命令文。
 基本的にS(主語)+V(動詞)の後にO(目的語)なりC(補語)なりが来る形。ただし、動詞が2語以上になると文の後ろに回ります。単語一つの動詞は僅かな例外を除き自動詞で、自動詞に他動詞的意味を持たせるには、「〜の状態にしろ」という意味の動詞をつけます。
 命令する相手を認識していれば主語を言う必要はないので、Sはしばしば省略されます。
 実際に作中に登場した呪文を例にとって説明します。ちなみに、ユーグディア大陸がある惑星上で唱えなければ、効果はありません。
 そのうち辞書でも作りたいけど・・ニーズはないだろうなぁ。

例1:トルノ・ダ・カッサ「その身より出でよ」
「物質の世界」に存在する生物の肉体から魂(「心の世界」に存在する体)を引き剥がす呪文。
トルノ カッサ                               
(私の元に)来い 〜の外に(の) 肉体

 メイシャの森の木をブチ折った緋紅に対し、グラーヌムが使った呪文。
 トランス状態になった緋紅も、琅珂の魂を奪おうとして使っている。

例2:トルノ・ス・フィガル「この地に戻り来い」
例1の呪文で肉体から引き剥がされた魂を引き寄せる呪文。
トルノ フィガル                    
(私の元に)来い 〜の中に(の) この世、「物質の世界」

 例1の呪文で幽霊になった緋紅の魂を、とりあえず自分の体に借り置きする為に、琅珂が使った呪文。
 呪文をかけられたのは、その前に言ってるソト・セス・アスゥルク・カリ・ナジェス「彼の地を彷徨するものよ」。つまり緋紅の魂。
 ソト(迷子)・セス(〜の内にいる)・アスゥルク(あの世、「心の世界」)・カリ(最も)・ナジェス(近くにいる)。直訳したら「あの世にいる迷子(の中で)一番近くにいる(奴)」。

例3:サルカ・ヤ・シーラ「あるべき場所へ」
自然界の中で、あるべき場所にないものを元の場所に戻す呪文。
サルカ シーラ                    
戻れ (再び)〜に 元の場所

 琅珂が例2の呪文で自分の体に入れた緋紅の魂を元の体に戻すのに使った呪文。
 彼は自分の体に緋紅の魂を受け入れた後、直接緋紅の体に触って、呪文の効力が及ぶ範囲を指定しています。
 わざわざこんな回りくどいことをしなくても、「あの世を彷徨っている魂の中で一度近くにいる奴は、この世のどこそこの場所にある体にさっさと戻って来い」という呪文を一つ唱えれば、宙に漂っている緋紅の魂を直接肉体に還すことが可能ではあります。
 しかし、言葉が長くなると言い間違いの可能性が増えます。音そのものが力を持つ言葉ですから、ちょっと舌を噛んだだけで世界にバグが生まれます。修正するのは一苦労。コリトプスの使い手は、言い間違いを何よりも怖れているのです。

例4:ヴァルス・ケラ・トゥルス「あの場所へ行け」
(生)物を行動させる呪文。
ヴァルス ケラ トゥルス                    
行け 〜に あそこ、あっち(の)

 トランス状態になった緋紅が翼馬の天狼に命じた呪文。緋紅が言う「あそこ」がどこか、天狼がしっかり理解していたから良かったものの、そうでなければ大変なことになっていました。天狼は「あそこ」がどこか分からないまま、体が擦り切れて死んでしまうまで世界中を飛び回っていたかもしれません。

例5:ソーン・ゼ・ターナ「禍言よ砕けろ」
他(人)から受けた嫌な命令をなかったことにする呪文。
ソーン ターナ                    
壊れろ、砕けろ 〜は (私に向けられた)呪文全て

 トランス状態の緋紅に例1の呪文をかけられた琅珂が反撃に使った言葉。

例6:ロキ・ア・ソーン「我に害するものを砕け」
身の回りにいる全てのものに自分の敵を攻撃させる呪文。敵から受ける攻撃呪文すら指定範囲内。
便利だが、周辺の精霊と仲が良くなかったら、手痛いしっぺ返しを喰うこともある。
ロキ ソーン                    
(私を)傷つけるもの全て 〜の状態にしろ 壊れろ、砕けろ

 トランス状態の緋紅の攻撃に備えて琅珂が唱えた呪文。
 主語は「俺の言葉を聞いてる奴全て」。「ソーン」の前に他動詞「ア」をつけ、動詞が二語以上になったので目的語の後ろに回しています。
 「ソーン・ゼ・ロキ」と違うのは、「ロキ」が主語(命令する相手)ではなく、目的語であること。

例7:アゥラ ウィシュク・ス・ケルス「来よ 水霊の君」
水霊王様のご尊顔を拝する為の呪文。
アゥラ ウィシュク ケルス             
(私の元へ)来て下さい 水霊 の中の 王、貴いもの

 琅珂が水霊王爽歌を呼び寄せる為に使った呪文。
 「アゥラ」は、「トルノ」よりも強制力が弱い。できれば来てというニュアンスの呼びかけ。

例8:ウィシュクヌトゥ アゥラ・ダ・トル・ヌラガン「水霊王よ 現し参れ」
水霊王様のご尊顔を拝する為の呪文。バージョン2
ウィシュクヌトゥ アゥラ トル ヌラガン
水霊王 (私の元へ)来て下さい 〜の外に 【冠詞】

 琅珂が更にしつこく水霊王を呼び寄せる為に使った呪文。
 「ウィシュク・ス・ケルス」より「ウィシュクヌトゥ」の方がちょっと親しげ。
 「トル」は「トゥルス」と同じ指示代名詞で、「ここ、この」ですが、名詞の前に付いたら「The」みたいな冠詞になります。無駄な語を極力省きたいコリトプスで冠詞を使うことはほとんどありません。あえて入れるのは、名詞に敬意を表する時。この場合、水霊王様のお力の顕現である「お雲様」に対して。「雲の外に出て来て下さい」の意味としては「アゥラ・ダ・ヌラガン」でよし。もっと失礼にすると、「トルノ・ダ・ヌラガン」。

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 ♪Music by Vagrancy.「水の玲瓏」