森の唄
森の唄 古語風訳 汝なんじの躯からを讃たたふべし 陽を占しめんとせむ枝ぶりを 高光りせし緑葉りょくようを 水を廻めぐらすその幹を 大地言向ことむく根差しをも 古いにしへの 火より結むすびしこの土に 初め根づきし白樺しらかばの 身より生ふしたる若き芽は 垂乳根たらちねの母を食い尽きし 父なる巨樹きょじゅを呑のみ込みて 弟おとなる宿木やどりぎ 寄し来こせず かくも大きに老成ねびゆかん 慳貪けんどんなりし森の王 汝の枝は天覆おほひ 汝の根差しは地を認したたむ 梢こずえの内に澪滾みおたぎち 風には種を運ばせん 樹雨きさめに水煙けぶり清きよらなる その躯からに毒どく熱ほとほりて 若芽に譲ゆずる光なく されど汝は貴あてなるや 己の生を執着しふねきて この世の恵みを搾しぼり取り 負け往ゆく生を顧かへりみぬ されど汝は森の父 死に往くものを見過ぐして 命の場所を奪はんと 生まれたものを撫なで目守まぼり 命の場所を造らんと その有様ありさまは一向ひたぶるに 世の理ことはりにつきづきし 罪も誉ほまれも絶えて似無にげなし 汝の如き命には 汝の命を讃たたふべし その産土うぶすなを言祝ことほがん 給たまふ恵みを愛かなしうし 廻もとほる仇あだを討ち掃はらふ 我の想いを伝つたうべし 汝に唄うたを捧ささぐべし 声ある限り謳うたひ継ぎ 長き命を乞こい祈のまん
森の唄 現代文語風訳 あなたの体を讃たたえよう 陽を占しめんとする枝ぶりを 高らかに光る緑葉りょくようを 水を廻めぐらすその幹を 大地を総すべる根っこをも 古いにしえの 火より生まれしこの土地に 初めに根づいた白樺しらかばの 身より出いでたる若き芽は 老い朽くちた母を食い尽くし 父なる巨樹きょじゅを呑のみ込んで 弟おとなる宿木やどりぎ 寄せつけず なんと偉大いだいになり果てた 貪欲どんよくなりし森の王 あなたの枝は天覆おおい あなたの根っこは地を治おさむ 梢こずえの内に水抱き 風には種を運ばせる 樹雨きさめに水煙けぶる清らかな その体には毒どくを持ち 若芽に譲ゆずる光なく それでもあなたは美しい 己の生に執着しゅうちゃくし この世の恵みを搾しぼり取り 負け往ゆく生を顧かえりみず それでもあなたは森の父 死に往くものを見過ごして 命の場所を奪おうと 生まれたものを育はぐくんで 命の場所を造ろうと その存在そんざいはどこまでも 世界の秩序ちつじょに調和して 罪も誉ほまれも相応ふさわしからぬ あなたの如き命には あなたの命を讃たたえよう その生誕せいたんを言祝ことほごう 給たまう恵みを慈いつくしみ 害為がいなすものを遠ざける 私の想いを伝つたえよう あなたに唄うたを捧ささげよう 声ある限り謳うたい継ぎ 長き命を冀こいねがう
森の唄。日本語訳バージョン。 琅珂が作中で歌ってるのは、君影創作言語。 『〜大地言向く根差しをも』までを、こちらで公開してます。 我ながら無駄にマニアック♪
♪「悠遠」 Music by Vagrancy.