Sailing Away

 この曲でも、繰り返しのコーラスがアイルランド語で歌われています。短いフレーズですが、文法的にはえらく難しい文章です。
 公式サイトのここをご覧下さい。英訳付歌詞を見ることができます。
 CDを持っていない人は、こちらで試聴してみて下さい(FLASHです)。イントロムービーが流れた後、AUDIO CLIPSをクリックしてから「SAILING AWAY 8」を選択すると曲が流れます。


 「口蓋化音?強勢のない音節だと長母音でも長くないだと?それは日本語か?」な私の耳には聞き取れねえよバカァ!な音を、無理矢理カタカナにしました。辞書の発音記号も横目で参考にしつつ、「ふ・・もうこれでいいさ」な諦めを優先。

単語帳
・D'fhág(ダアーグ)・・「去った」、「残した」。fágファーグ(去る、残す)の過去形。
・mé(メー)・・「私」。
・slán(スラーン)・・「健康」、「さらば(健康を)」。「さようなら」の表現でSlánスローン agatアガット(健康をあなたに)とも。
・ag(エグ)・・「〜に」。英語のat。
・na(ナ)・・複数定冠詞。続く名詞が母音の場合、頭にhをつける。
・daoine(ディーニ)・・「人々」。duineディナ(人)の複数形。
・tá(ター)・・「ある」、「いる」。存在動詞。
・fágtha(ファーカ)・・「残された」。fágファーグ(去る、残す)の動形容詞形。
・'san(サン)・・agusアガス(and)と単数定冠詞anアンの縮約形・・だと思う。辞書にないけど。
・talamh(タラヴ)・・「土地」。
・a(ア)・・「〜であるすべてのもの」。間接関係小辞。後に続く動詞を暗音化させる。
・rugadh(ロガウ)・・「(人は)生まれた」。不規則動詞beirベィルの過去自立形。
・istigh(アスティ)・・「中に」。副詞。
・i(イ)・・「〜の中に」。
・mo(モ)・・「私の」。後に続く動詞を軟音化させる。
・croí(クリー)・・「心」。
・sin(スィン)・・「それ以来」。
・mar(マール)・・「〜のような」。
・a(ア)・・直接関係小辞。英語のthatとか関係代名詞的なもの。後に続く動詞を軟音化させる。
・beas(ベス)・・「あるだろう」。存在動詞トー(辞書形bí)の肯定の未来形beidhベイの関係節形。
・chóiche(クリーヒャ)・・「決して〜ない」。副詞。


・規則動詞を過去形にするには、大雑把に言って頭が子音の動詞なら軟音化(頭から二番目にhを挿入)させたり、頭が母音の場合はd'をつけたり、頭がfの場合はd'をつけてhも挿入します。fが暗音化。d'に負けて発音されなくなります。
        fágファーグ(去る、残す)→d'fhágダアーグ(去った、残した)
   この法則を知らないと辞書も引けないんだ(T_T) んで、基本の語順はVSO。
        D'fhágダアーグ メー slánスラーン. (私はさようならを残した。)
        ※この曲のコーラスでは、長母音があんまり聞こえません。「ダアグ」と聞こえます。

・動形容詞とゆーやつは、その名の通り形容詞化した動詞で、英語の文法で言う「過去分詞の形容詞的用法」みたいなやつ。動詞(の語根)に-ta,-te,-tha,-the,-ithe,aitheをつけて作ります。普通の形容詞と同じように名詞を修飾したり存在動詞トーと一緒に主語の状態を表したりします。
        fágファーグ(去る、残す)→fágtheファーカ(置き去られた、残された)
    歌詞では主語と動詞が倒置してna daoine' tá fágthaとなってますが、基本のVSOで並べると、
        ター na daoineディーニ fágthaファーカ.(その人々は置き去られた状態にある。)
        ※áは日本語の「あ」より唇を閉めて出す長音で、「あー」とも「おー」とも聞こえます。ここのコーラスでは、どっちかっつーと「アー」。

・動詞の自立形というのは、主語がない時に取る形です。日本語の「〜と言われている」「〜とされている」みたいな主語のない曖昧な言い回しみたいなもんか?違うか。規則動詞の過去形を自立形にするには、頭から二番目のhも頭のd'も取っ払い、頭が母音の場合にはd'の代わりにhを被せて、-adh,-eadh,-íodh,-aíodhという語尾をつけます。
    不規則動詞beirベィルの場合は、過去形rugログにそのまま-adhがつくと過去自立形。
        Rugログ メー(私は生まれた。)→Rugadhロガウ メー(私の生まれた。)
    左の文章だとメーが主語なのに対して、右の文章では目的語です。何のこっちゃ。
    ※ドニゴール方言ではrugを「ログ」と発音しますが、コナマーラ、マンスター方言では「ルグ」だそうです。

・間接関係小辞aは、後に続く動詞を暗音化させるそうです。
    が、歌詞ではこうなっています。
        rugadhロガウa rugadhロガウ
    『コシュ・アーリゲ』によると、過去の自立形は↓のような小辞の前でも軟音化しない決まり。暗音化もしないんだろうか。

・直接関係小辞aは、例によって例の如く、後に続く動詞を軟音化させます。
        beasベスa bheasヴェィス

・存在動詞トーの肯定の未来形beidhベイは、直接関係節で形を変えます。↓こんな風に。
        Beidhベイ an fearアファール sástaサースタ.(その男は満足するだろう。)
        Sílimスィーラム an fearアファール a bheasア ヴェィス sástaサースタ.(私はその男が満足すると思う。)
    ※an fear・・「その男」 sásta・・「満足した(形容詞)」 sílim・・「(私は)思う」

・所有形容詞単数形moも、後に続く名詞の頭を軟音化させます。
        croíクリー(心)→mo chroíフリー(私の心)
        ※この曲のコーラスでは、あんまり軟音化っぽく聞こえません。どっちかっつーと「モ クリー」。


・・頭痛くなってきた。以下、文章の組み立て方が怪しい直訳

私はさよならを残した。残していく人々と、
そして私の生まれた土地の全てに。
私はさよならを残した。私の心の中の
その先二度と(まみえる)ことのないような人々に。

著作権侵害の意図はありません。もしも怒られた場合、如何なる権力にも屈します。
ここの文章書いた人は文法書と睨めっこしてるド素人です。
色々と間違ってる可能性大なので悪しからず。

参考文献