Chi vuol la zingarella

Giovanni Paisiello (1740 - 1816) :作曲
Giuseppe Palomba (1769-1825):作詞

Chi vuol la zingarella
graziosa accorta e bella?
Signori, eccola qua.

Le donne sul balcone
so bene indovinar.
I giovani al cantone
so meglio stuzzicar.


A vecchi innamorati
scaldar fo le cervella.
Chi vuol la zingarella?
Signori, eccola qua.


"Gli zingari in fiera"(市場のジプシーたち)より
 1789年11月21日にナポリのTeatro dei Fiorentini(フィオレンティーニ劇場)にて初演のオペラ。
 どんなお話か知りません。ちょっとググってみたところ、イタリアでもずっと上演されてなかったみたい。2008年11月26日にターラントで行なわれたパイジェッロさんのフェスティバルで復活公演したらしい。よく分からんけど、ジプシーが金持ちを誘惑して玉の輿作戦な、半分シリアス、半分ギャグな喜劇?
 読むのしんどいから、知りたい人はこちら。翻訳エンジンでも使って下さい。
 
 
 ところで、この「ジプシー」ってカタカナ英語もそうだけど、イタリア語のzingari{ジプシー男はzingaro(-i)、ジプシー女はzingara(-e)、ジプシー娘がzingarella(-e)で、ジプシー少年はzingarello(-i)か?}も、差別的ニュアンスがあるから使わない方がいいという風潮がある。日本人にはあんまりピンと来ないし、音の響きだけ聞いたら綺麗だと思うんだけど、辞書でzingaroを引くと「服装がだらしない人」という意味もある。少なくとも、イメージのいい言葉じゃないようで。ということで、最近では彼ら自身の言葉rom(複数形はroma)に倣ってromと呼ぶことが多いらしい。「アイヌ」と同じで「人間」って意味だって。
 今も残る偏見だけど、流浪の民である「ジプシー」は、土地の人々に小狡くて怪しくて変な格好で胡散臭い犯罪者予備軍だと思われてたみたい。でも、そこが逆に謎めいてて神秘的で魅力的だったのか、「ジプシー」を題材にした芸術作品はヨーロッパに数多い。そこに描かれてるのは、歌や踊りが得意で、占いもしてくれる、んでもってしっかり小狡い、多芸で陽気な人々。
 イタリア語のromは借用語だからなのか、それとも単にroma(ローマ)と混同しないようにってことなのか、男だろうが女だろうか単数だろうが複数だろうが無変化という珍しい名詞。「ロマの」という意味の形容詞も同形romで無変化。頭につく冠詞、修飾する名詞の形は性数に応じて変わるから、普通は文脈と合わせて理解できるんだろうけど、roma(ローマ)がトロンカメント(語尾切断)でもしようもんなら混同必至。


 ともあれ、Gli zingari in fieraの劇中歌Chi vuol la zingarellaは、オペラ本編そっちのけで声楽曲として結構有名。zinga〜って言ってるけど、古典は古典だから仕方ない。特に二つ目の詩節の脚韻が素敵だと思う。志方さんが「ロマの娘」の間奏で歌ってるのは、一つ目と二つ目の詩節。もう一箇所何言ってるのか分からないところがあるけど、A vecchi innamorati ..じゃない。

ズィンガッラ
Chi vuol la zingarella
代名詞 他動詞(原形:volere) 冠詞 名詞
(それが)欲しがる ジプシー娘(単)
ジプシー娘を欲しがるのは誰?

Chiは無変化の疑問詞。英語のWho。
vuolはvuoleのトロンカメント(語尾切断)形。
ziの発音は「ツィ」、「ズィ」、どっちもあり。

グラッツィーザ アッルタ ッラ
graziosa accorta e bella?
形容詞 形容詞 接続詞 形容詞
優美な 抜け目のない そして 美しい
優雅で聡明 そして美しい(ジプシー娘を)

accortaは再帰動詞accorgersiの過去分詞形。mi sono accortaだと「私は気付いた」。
何故か「慎重な、賢い、抜け目のない」という意味の形容詞にもなるらしい。・・うん。分かんない。
ここのフレーズで、当時のナポリ男(パロンバさん)が「ジプシー娘」をどう見ていたか分かるような気がする。

スィンニョーリ ッコラ
Signori, eccola qua.
名詞 副詞+代名詞 副詞
紳士(複数) ecco la Here she is さあ(ここに)
紳士諸君、ここにいますよ。

Signoriは冠詞つけずに呼びかけの形。
友達と待ち合わせの時に、「お待たせ、来たよ!」って感じでeccomi qua!とか言うらしい。

ンネ スル バルーネ
Le donne sul balcone
冠詞 名詞 縮約冠詞 名詞
婦人(複) su il 〜の上に バルコニー
バルコニーの上にいるご婦人方を

le・・女性名詞複数形につく定冠詞。でもフランス語だと男性名詞単数形につく定冠詞なんですよね。そっちは「ル」って読むんだけど。
あと、フランス語だと男女問わず名詞の複数形につく定冠詞がlesで、これを「レ」って読むんですよね。
ilなんかも伊語だと男性名詞単数形につく定冠詞だけど仏語だと人称代名詞「彼(he)」だったり・・
ロマンス語系統は同時に勉強すると身につくのが早いとか言うけど、常にごっちゃになって頭ぐるぐる。る〜ら〜れ〜♪

ーネ インドヴィール
so bene indovinar.
他動詞(原型:sapere) 副詞 他動詞
(私は)できる うまく 占うこと
うまく占うことができますよ

indovinarは不定詞のトロンカメント(語尾切断)形でいいのだろうか。

ジョーヴァニ アル カンーネ
I giovani al cantone
冠詞 名詞 縮約冠詞 名詞
若者(複) a il 〜の
街角の若者達の

cantone・・「部屋の隅」ではない筈。
状況分からんけど「バルコニーのご婦人方」にも話しかけてるなら、屋外だよな。

ッリョ ストゥッツィール
so meglio stuzzicar.
他動詞(原型:sapere) 副詞 他動詞
(私は)できる もっと 刺激すること
興味を引くことができますよ

stuzzicareは「つつく、いじくる、嫌がらせをする、そそる」。
これもトロンカメント。

ヴェッキ インナモーティ
A vecchi innamorati
前置詞 名詞 形容詞
〜に 老人(複) 恋をした(複)
恋するご老人たち

vecchioの男性・複数形はvecchi。

スカルール フォ チェルヴェッラ
scaldar fo le cervella.
他動詞 他動詞(原型:fare) 冠詞 名詞
熱する (私が)〜させる 脳(複)
あなたたちの頭を興奮させましょう

scaldareがトロンカメント。fare+不定詞で「〜させる」。
fareの1人称単数直説法はfaccioだけど、省略してfoにすることもありとか・・勘弁してよ。
leって三人称単数の人称代名詞(敬称)?でもlが大文字じゃないし。冠詞?なんでcervelloがaになって女性形に?
男性名詞cervelloは複数形になると性転換することもあるらしい・・
女性単数形っぽい見た目になって女性複数形用の冠詞を伴うという・・でも現代語ならi cervelliの方が主流か?使い分けが分からない。

さて、割とそのままだけど、意訳してみる。


ジプシー娘をお望みなのはどなた?
優雅に踊り 知恵深く 美しい私でしたら
皆様 ここにおりましてよ
 
バルコニーのご婦人方
あなたの運勢を占って差し上げましょうか
街角の若殿方
遊んであげてもよろしくてよ

私に釘づけの老紳士方
心を蕩かせて差し上げましょうか
ジプシー娘をお望みなのはどなた?
皆様 ここにおりましてよ



・・何かエロいのは私のせいじゃないと思う。こんな女を妄想して喜んでた18世紀のナポレターノがいけないんだ。
でも志方さんが歌ってると思ったら燃えないか?萌えでもいいけど。
勝手に一人称的になってるのは↑なこと考えた私のせいです。ごめんなさい。


歌詞は『古典イタリア名曲撰集T 中声用』より