statera stabilis ラテン語メモ
love solfege 『カロタクシス』より

ロマンからのエピックミュージックらしい。
歌手は真名辺あやさん。

メモはラテン語部分のみ。

追記:何とbandcampで無料で聴けるようになりました。
勿論惚れたらお金も払えます。

※長母音記号は勝手につけました。
※カナ読みは、黒字が教会式発音風ルビ、
青字が古典式発音風ルビです。前者の短音長音は適当です。古典式のアクセントは強弱ではなく高低ですが、ここではどうでもいいです。

statēra(スターラ)・・「天秤、竿秤、価値、戦車の轅」。第1変化女性名詞。単数主格。古代ギリシアの貨幣(男性名詞)στατήρ(スタール)に由来する。
 ※lībra(ーブラ)やtrutina(トティナ)と同義語。古典期においては、これらが竿の両端に皿を吊るした一対の天秤を指したのに対し、statēraは片側に皿または鉤、反対側に分銅を吊るし、これを左右に動かして重さを量る竿秤(steelyard)を指した。
stabilis(スビリス)・・「安定した、永続的な、不変の」。第3変化形容詞。男性または女性単数主格形。どう訳せばいいか微妙。

『不変の天秤』

参考
date, et dabitur vobis:
mensuram bonam, confertam, coagitatam,
supereffluentem dabunt in sinum vestrum;
eadem quippe mensura, qua mensi fueritis,
remetietur vobis

(Lucam 6:38)

与えよ。そうすれば、自分にも与えられるであろう。
人々はおし入れ、ゆすり入れ、
あふれ出るまでに量をよくして、あなたがたのふところに入れてくれるであろう。
あなたがたの量るその量りで、
自分にも量りかえされるであろう
から

(ルカによる福音書 第6章38節)
『新約聖書』(日本聖書協会 1954改訳)p95より引用


ーデム メンーラ クァ ンスィ リティス
Eādem mēnsūrā quā mēnsī fueritis,
ーデム メーンーラー クァ ーンスィー リティス
形容詞 名詞 関係代名詞 形容詞(分詞) 動詞
同じ 尺度を以て ~であるところの(女) (君たちが)量っているだろう
(君たちが)量っているだろう同じ尺度を以て

eādemは不規則変化代名詞または形容詞īdem(同じ、同一の、同じ人、同じもの)の女性単数奪格形。
mēnsūrāは第1変化女性名詞mēnsūra(測定、測定器、寸法、尺度)の単数奪格。
quāは関係代名詞quīの女性単数奪格形。
mēnsīは第4活用異態動詞mētior(計る、測定する、区画する、割り当てる、通過する、判断する)の完了分詞mēnsusの男性複数主格形。主語と性数が一致するので、「君たち」は男性一人以上を含む複数。ここでは述語形容詞。
 普通、完了分詞+sumは受動の意味になるけど、こいつは異態動詞なので能動。
fueritisは英語のbeに当たる不規則自動詞sumの直接法(能動)未来完了二人称複数形。"remētiētur vōbīs"の時点では既に完了している動作。
 ここ"mēnsī eritis(君たちが量り終えているだろう)"と複合時制の未来完了二人称複数男性形にしてもほぼ同じ意味になる気がする。どうやろ?
 ギリシア語原文だと"τῷ (γὰρ) αὐτῷ μέτρῳ ᾧ μετρεῖτε"「(何故なら)君たちの量る同じ尺度で」。直接法能動現在。ラテン語訳で未来完了にしたのは、「あんたらはこうするやろ?するとこうなるんやで」という因果をより強調したのかな?知らんけど。

『汝らが量りたるその秤を以て』

レメティートゥル ヴォービス
remētiētur vōbīs
レメーティートゥル ウォービース
動詞 人称代名詞
(それは)量り返すだろう 君たちに
(それは)君たちに量り返すだろう

remētiētur・・「(それは)量り返すだろう」。第4活用異体動詞remētior(はかり直す、等しく返す、辿り直す、考え直す、再び語る)の直接法能動未来三人称単数形。
 接頭辞re-(後ろへ、元に、逆に、再び、繰り返し、反対に)+mētior(計る、測定する、区画する、割り当てる、通過する、判断する)。
vōbīsは二人称複数、ここでは与格の人称代名詞。

『汝らに量り返さるべし』

ーデム メンーラ クァ ンスィ リティス
Eādem mēnsūrā quā mēnsī fueritis,
ーデム メーンーラー クァ ーンスィー リティス
形容詞 名詞 関係代名詞 形容詞(分詞) 動詞
同じ 尺度を以て ~であるところの(女) (君たちが)量っているだろう
(君たちが)量っているだろう同じ尺度を以て

『汝らが量りたるその秤を以て』

レメティートゥル ヴォービス
remētiētur vōbīs
レメーティートゥル ウォービース
動詞 人称代名詞
(それは)量り返すだろう 君たちに
(それは)君たちに量り返すだろう

『汝らに量り返さるべし』

参考
Vox clamantis:
" In deserto parate viam Domini, rectas facite in solitudine semitas Dei nostri.

(Isaiae 40:3)

呼ばわる者の声がする、
「荒野に
主の道を備え、さばくに、われわれの神のために、大路をまっすぐにせよ。

(イザヤ書 第40章3節)
『旧約聖書』(日本聖書協会 1955改訳)p996より引用

Ait:" Ego vox clamantis in deserto:
"Dirigite viam Domini", sicut dixit Isaias propheta ".

(Ioannem 1:23)

彼は言った、「わたしは、預言者イザヤが言ったように、
『主の道をまっすぐにせよと
荒野で呼ばわる者の声』である」。

(ヨハネによる福音書 第1章23節)
『新約聖書』(日本聖書協会 1954改訳)p95より引用

ヴォーチェス クラーンティウム イン ルト
vōcēs clāmantium in dēsertō
ウォーケース クラーンティウム イン デールトー
名詞 名詞(分詞) 前置詞 名詞(形容詞)
声(複)を 叫ぶ者たちの ~に 荒野(から)
荒野に叫ぶ者たちの声(複)を

vōcēsは第3変化c幹女性名詞vōx(声、言葉)の複数主格または対格。ここ、desertoで切れるなら主格だし、nolite timereと繋がるなら対格。たぶん対格かな?
 元ネタだと、ここは単数形。
clāmantiumは第1活用自他動詞clāmō(叫ぶ、大声で呼ぶ、宣言する)の現在分詞clāmānsの男性女性中性複数属格形。ここでは名詞化。
 元ネタだと、ここも単数形。
inは対格または奪格支配の前置詞。
dēsertōは第1第2変化形容詞dēsertus(見捨てられた、荒れた、住む者のない)の男性または中性単数奪格形。ここでは名詞化。

 元ネタの聖書における"Vox clamantis in deserto(荒野に呼ばわる者の声)"は、イエスの登場に先立ち、人々に洗礼を授けた洗礼者ヨハネを指す。
 上記のイザヤ書(第40章3節)、ヨハネによる福音書(第1章23節)の他、マタイ(第3章3節)、マルコ(第1章3節)、ルカ(第3章4節)の福音書にも出て来る。

 慣用句としては、「(正しいことを言っているのに)忠告や説得が聞き入れてもらえない人」のような意味で使われる。おそらくこの歌詞でもこういう意味だろう。

『荒野に呼ばわる者らの声を』

ーテ ティーレ
nōlīte timēre
ノーーテ ティーレ
動詞 動詞
(君たちは)するな 恐れることを
(君たちは)恐れるな

nōlīteは不規則自他動詞nōlō(欲しない、好まない、認めない、拒絶する、~するな)の命令法(二人称)複数形。ここでは動詞の不定法と共に否定命令(禁止)を作っている。
 否定の副詞nōnと不規則自他動詞volō(欲する、望む、定める、命じる、主張する、意図する)の合成形。
timēreは第2活用自他動詞timeō(恐れる、心配する)の、ここでは不定法能動現在形。

『恐るる勿れ』

ーテ ティーレ
āh nōlīte timēre
ノーーテ ティーレ
間投詞 動詞 動詞
ああ (君たちは)するな 恐れることを
ああ、(君たちは)恐れるな

『ああ、恐るる勿れ』

ーデム メンーラ クァ ンスィ リティス
Eādem mēnsūrā quā mēnsī fueritis,
ーデム メーンーラー クァ ーンスィー リティス
形容詞 名詞 関係代名詞 形容詞(分詞) 動詞
同じ 尺度を以て ~であるところの(女) (君たちが)量っているだろう
(君たちが)量っているだろう同じ尺度を以て

『汝らが量りたるその秤を以て』

レメティートゥル ヴォービス
remētiētur vōbīs
レメーティートゥル ウォービース
動詞 人称代名詞
(それは)量り返すだろう 君たちに
(それは)君たちに量り返すだろう

『汝らに量り返さるべし』

ーデム メンーラ クァ ンスィ リティス
Eādem mēnsūrā quā mēnsī fueritis,
ーデム メーンーラー クァ ーンスィー リティス
形容詞 名詞 関係代名詞 形容詞(分詞) 動詞
同じ 尺度を以て ~であるところの(女) (君たちが)量っているだろう
(君たちが)量っているだろう同じ尺度を以て

『汝らが量りたるその秤を以て』

レメティートゥル ヴォービス
remētiētur vōbīs
レメーティートゥル ウォービース
動詞 人称代名詞
(それは)量り返すだろう 君たちに
(それは)君たちに量り返すだろう

『汝らに量り返さるべし』

 X(twitter)で、マグニさんとうさにゃんさんのlove solfege広報部が、カラオケ支援に楽譜データを配布してくれたのをいいことに、歌詞カード未記載のオブリガート部分を追記&訳文を修正してみた。
 タイトルstatera stabilisを最初「吊り合った天秤」と訳してたけど、「不変の天秤」に変えた。これもしっくりくる訳かと言うと検討の余地があるけど。

 「世界は、自然は、人に様々なものを与える。ある時、あるものは人に有益で、ある時、あるものは禍である。人はそれらをどのように捉えるべきか。都合のいい時だけ受け入れて、障害となれば唾棄するのか。
 あらゆる事象を甘受し、そこから良きもの、美しきもの、価値あるものを見出すことができる者は、それらを手にすることができる。あなたたちが世界を秤にかけることは、取りも直さず、あなたたち自身が秤にかけられることである。
 これは不変の定めである。受け入れ難い誡めであるが、どうか聞き入れて欲しい」
 ――歌詞全体で、こんなことを言ってるのかな。たぶん。きっと。いまいちちゃんと分かってる気がしないけど
 
 イントロのピアノから素敵だし、エピックに舵を切ったところでぞくっとする。音楽も歌詞も厳かでいい。フルコーラスバージョンっていつかどこかで聞けますか?
 カラオケは撃沈した。テンポはゆっくりなんだけど変拍子でめっちゃ歌い難いぞ!真名辺さんはかっこ良く歌っていらっしゃるけども!あんな風には無理でも、練習して歌えるようになりたいな。前奏が長くてあんまりカラオケ向きの曲じゃないとか言ってはいけない。



素材を一部加工の上お借りしています↑

この文章書いてる人はラテン語に関してド素人です。
聖書に関しては更によく分かっとりません。
このページはあくまで『カロタクシス』とか『反響するプシケー』CD等買った人向け、
参考にならない辞書もどきであって、
著作権侵害の意図はありません。が、もし怒られたら消えます。


参考文献

引用資料
"NOVA VULGATA Bibliorum Sacrorum" https://www.vatican.va/archive/bible/nova_vulgata/documents/nova-vulgata_index_lt.html
"ΜΕΓΑΣ ΣΥΝΑΞΑΡΙΣΤΗΣ"内"ΚΑΤΑ ΛΟΥΚΑΝ ΣΤ'" https://www.synaxarion.gr/gr/cpgid/0c29aa7a773044feaacc9d19ffc3ee77/cmspage.aspx
『旧約聖書』(日本聖書協会 1955改訳)
『新約聖書』(日本聖書協会 1954改訳)


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