lucis ortus ラテン語メモ
love solfege 『lucis ortus』より

「夜明け」をテーマにリディア旋法で書かれた曲。
コーラス部の歌詞は歌詞カードにはないけど、
楽譜集『love solfege title songs 2017-2019』には、
書いて下さってるんですよ。最高。

メモはラテン語部分のみ。

歌手は真名辺あやさん。
ご本家様特設ページ

bandcampで無料で聴けるようになりました。
勿論惚れたらお金も払えます。

※長母音記号は勝手につけました。
※〔教〕はイタリア教会式発音風のカナです。

lūcisーキス)〔教:ーチス〕・・「日の」。第3変化c/g幹女性名詞lūxークス(光、輝き、昼、日光、一日)の単数属格。
ortusルトゥス)・・「(天体が)昇ること、日の出、夜明け、東方、誕生、始まり」。第4変化男性名詞。ここでは単数主格。

『夜明け(日の出)』

ecceッケ)(教:ッチェ)・・「ほら!、見ろ!」。間投詞。主格または対格が続く。
lūcisーキス)(教:ーチス)・・「日の」。第3変化c/g幹女性名詞lūxークス(光、輝き、昼、日光、一日)の単数属格。
ortusルトゥス)・・「(天体が)昇ること、日の出、夜明け、東方、誕生、始まり(が)」。第4変化男性名詞。ここでは単数主格。

『見て、夜明けだ』

ecceッケ)(教:ッチェ)・・「ほら!、見ろ!」。間投詞。主格または対格が続く。
lūcisーキス)(教:ーチス)・・「日の」。第3変化c/g幹女性名詞lūxークス(光、輝き、昼、日光、一日)の単数属格。
ortusルトゥス)・・「(天体が)昇ること、日の出、夜明け、東方、誕生、始まり(が)」。第4変化男性名詞。ここでは単数主格。

『見て、夜明けだ』

quae(クゥァエ)(教:クウェ〕・・「~であるところのもの(女たち)が」。関係代名詞quīクィーの、ここでは女性複数主格形で関係文を作っている。たぶんlūcēs{日光(複)}を指してる。前文のlūcisと数が一致してないので、前文とは繋がっていない。
omnēsムネース)(教:ムネス)・・第3変化形容詞omnisムニス(すべての)の、ここでは男性または女性複数対格形。ここでは名詞化して「全ての人々を」。
revēlant(レウェーラント)(教:レヴェーラント)・・「(それらは)暴く」。第1活用他動詞revēlō〔古:レウェーロー/教:レヴェーロ〕(あらわにする、覆いを取る、暴く、啓示する)の直接法能動現在三人称複数形。

『あらゆる人々を暴き出す陽の光が』

veniuntウェニウント)(教:ヴェニウント)・・「(それらは)来る」。第4活用自動詞veniō〔古:ウェニオー/教:ヴェニオ〕(来る、帰る)の直接法能動現在三人称複数形。
lūcisーキス)(教:ーチス)・・「日の」。第3変化c/g幹女性名詞lūxークス(光、輝き、昼、日光、一日)の単数属格。
ortūsルトゥース)・・「昇り(複)が」。第4変化男性名詞ortusルトゥスの複数主格。
  venit(それは来る)ではなくveniunt(それらは来る)なのは、今のことだけじゃなくいつも「日の出は来るよ」ってこと?

『夜明けが訪れる』

āhー)・・「ああ」。間投詞。

venītis(ウェーティス)(教:ヴェーティス)・・「(君たちは)来る」。第4活用自動詞veniō〔古:ウェニオー/教:ヴェニオ〕(来る、帰る)の直接法能動現在二人称複数形。主語はlūcēs{日光(複)}でいいの?
ad(アド)・・「~に」。対格支配の前置詞。
omnemムネム)・・「全体」。第3変化形容詞omnisムニス(すべての)の、ここでは女性単数対格形。単数形なので「全ての都市に」ではなく「都市全体に」。
urbemルベム)・・「都市(を)」。第3変化p/b幹女性名詞urbusルブス{(城壁に囲まれた)都市、首都、都市の住民、要点}の単数対格。

陽の光あなたたちは、都市にあまねく訪れる』

※「動きを止めた」辺りからのコーラス。

estスト)・・「(それは)いる」。英語のbeに当たる不規則自動詞sumの直接法(能動)現在三人称単数形。
nēmōーモー)(教:モ)・・「誰も~ない」。不定代名詞。主格。
 ・explānet(エクスプーネト)・・「(それは)詳論する」。第1活用他動詞explānō〔古:エクスプーノー/教:エクスプーノ〕(平らにする、説明する、詳論する、明らかにする)の接続法能動現在三人称単数形。
 ・āー)・・楽譜では"explaneta"になってるけど、なんすかこれ?間投詞?こんなとこに間投詞つかない?奪格支配の前置詞で「~に関して」?だとしたらcecidisseが動名詞の奪格cadendōになってるはず?
"explānet ā"(エクスプーネー)
turrisトゥッリス)・・「塔、櫓、城が」。第3変化i幹女性名詞の、たぶんここでは単数主格。不定法の意味上の主語は普通対格(turrimまたはturrem)だけども。複数対格turrīsの方か?いやバベルの塔何本もないな。でも「バベルの塔的なものが何度も滅んできた」という表現の可能性も?あかん。全然違うかもしれない。
Babelベル)・・「バベル(の)」。基本的には無変化の女性固有名詞。格変化する場合は第3変化っぽい。古代メソポタミアにあった都市の名前。ヘブライ語の女性名詞בָּבֶל(バヴェル)に由来。大元はアッカド語のBābilim(神の門)らしい※本来は楔形文字。ただし聖書は、(創世記第11章で)ヘブライ語のパアル動詞בָּלַל(バル 混乱させる、かき混ぜる)が語源だと言うとる。
 「これによって、その町の名はバベルと呼ばれた。主がそこで全地の言葉を乱されたからである」『旧約聖書』(日本聖書協会 1955)p12より引用
cecidisse(ケキディッセ)(教:チェチディッセ)・・「滅んだことを」。第3活用自動詞cadō〔古:ドー/教:ド〕(落ちる、没する、流れ下る、倒れる、陥落する、等)の不定法能動完了形。不定法は中性単数名詞扱いだけど、格変化はしない。ここでは対格で目的語になってるか、前置詞ā支配の奪格?う~ん?
 古典語の文法なら、不定法は主格か前置詞なしの対格としての用途に限られていて、前置詞がつくことはない。(属、与、奪格、または前置詞のつく対格の場合は動名詞を使う。)でも中世以降のラテン語だとないとは言えない?イタリア語だと「a+不定詞」を伴う動詞は普通にあるし。
 第3活用他動詞caedō〔古:カエドー/教:チェドー〕(切る、打つ、殺す、打ち倒す)の不定法能動完了形cecīdisse〔古:ケキーディッセ/教:チェチディッセ〕ではないよな?

『バベルの塔が崩壊したこと(を/について)論じる者は誰もいない』

※「星に刻まれた」辺り~「あらゆる愚かしさ」に重なるバックコーラス。

āeraーエラ)・・「空気に」。ギリシア語形第3変化男性または女性名詞āēr〔古:ーエール/教:ーエル〕(大気、空気、大空、雲、霧)のここでは単数対格。古典ギリシア語の男性名詞ἀήρアーール{(視界を遮る)霧、闇/空気、大気の状態、天候、気候}に由来。ここは目的地の対格かな。第一変化女性名詞aera〔古:アエラ/教:ラ〕(時代、時期)ではない。
 教会式発音の場合も、aとeは分音する。
novāウァー)(教:ヴァ)・・「新しい」。第1第2変化形容詞novus〔古:ウス/教:ヴス〕(新しい、新鮮な)の女性単数奪格形。
caeruleāカエルレアー)(教:チェルレア)・・「青い」。第1第2変化形容詞caeruleus〔古:カエルレウス/教:チェルレウス〕(青い、暗色の、濃い緑の、黒ずんだ)の女性単数奪格形。えーと、これcumが支配する形容詞二つが半分名詞化してる感じで訳していいかな?
cum(クム)・・「~と共に、~と一緒に、~を備えて」。奪格支配の前置詞。前置詞と言いながら後ろに来てるけど。
quiētam(クィータム)・・第1第2変化形容詞quiētus(平穏な、眠っている、静かにしている、平和な)の女性単数対格形。こいつは素直にāeraにつく。

『清新さと青さを宿して眠れる空気に』

veniuntウェニウント)(教:ヴェニウント)・・「(それらは)来る」。第4活用自動詞veniō〔古:ウェニオー/教:ヴェニオ〕(来る、帰る)の直接法能動現在三人称複数形。
lūcisーキス)(教:ーチス)・・「日の」。第3変化c/g幹女性名詞lūxークス(光、輝き、昼、日光、一日)の単数属格。
ortūsルトゥース)(教:ルトゥス)・・「昇り(複)は」。第4変化男性名詞ortusルトゥス{(天体が)昇ること、日の出、夜明け、東方、誕生、始まり}の、ここでは複数主格。

『夜明けが訪れる』

※「群青あおしじまだけが」辺り~「薄明を充たす」に重なるバックコーラス。

āhー)・・「ああ」。間投詞。

estスト)・・「(それは)いる」。英語のbeに当たる不規則自動詞sumの直接法(能動)現在三人称単数形。
nēmōーモー)(教:モ)・・「誰も~ない」。不定代名詞。主格。
 ・explānet(エクスプーネト)・・「(それは)詳論する」。第1活用他動詞explānō〔古:エクスプーノー/教:エクスプーノ〕(平らにする、説明する、詳論する、明らかにする)の接続法能動現在三人称単数形。
 ・āー)・・?
"explānet ā"(エクスプーネー)
turrisトゥッリス)・・「塔、櫓、城が」。第3変化i幹女性名詞の、たぶんここでは単数主格。あるいは複数対格turrīs〔古:トゥッリース/教:トゥッリス〕
Babelベル)・・「バベル(の)」。基本的には無変化の女性固有名詞。格変化する場合は第3変化っぽい。古代メソポタミアにあった都市の名前。
cecidisse(ケキディッセ)(教:チェチディッセ)・・「滅んだことを」。第3活用自動詞cadō〔古:ドー/教:ド〕(落ちる、没する、流れ下る、倒れる、陥落する、等)の不定法能動完了形。ここでは対格扱い。ひょっとするとā支配の奪格かもしれない。

『バベルの塔が崩壊したこと(を/について)論じる者は誰もいない』

※「星に記された」辺り~「あらゆる清らかさ」に重なるバックコーラス。

āeraーエラ)・・「空気に」。ギリシア語形第3変化男性または女性名詞āēr〔古:ーエール/教:ーエル〕(大気、空気、大空、雲、霧)のここでは単数対格。ここは目的地の対格かな。
novāウァー)(教:ヴァ)・・「新しい」。第1第2変化形容詞novus〔古:ウス/教:ヴス〕(新しい、新鮮な)の女性単数奪格形。
caeruleāカエルレアー)(教:チェルレア)・・「青い」。第1第2変化形容詞caeruleus〔古:カエルレウス/教:チェルレウス〕(青い、暗色の、濃い緑の、黒ずんだ)の女性単数奪格形。
cum(クム)・・「~と共に、~と一緒に、~を備えて」。奪格支配の前置詞。前置詞と言いながら後ろに来てるけど。
quiētam(クィータム)・・第1第2変化形容詞quiētus(平穏な、眠っている、静かにしている、平和な)の女性単数対格形。

『清新さと青さを宿して眠れる空気に』

veniuntウェニウント)(教:ヴェニウント)・・「(それらは)来る」。第4活用自動詞veniō〔古:ウェニオー/教:ヴェニオ〕(来る、帰る)の直接法能動現在三人称複数形。
lūcisーキス)(教:ーチス)・・「日の」。第3変化c/g幹女性名詞lūxークス(光、輝き、昼、日光、一日)の単数属格。
ortūsルトゥース)(教:ルトゥス)・・「昇り(複)は」。第4変化男性名詞ortusルトゥス{(天体が)昇ること、日の出、夜明け、東方、誕生、始まり}の、ここでは複数主格。

『夜明けが訪れる』

※「群青あおしじまだけが」辺り~「薄明を終える」に重なるバックコーラス。

āhー)・・「ああ」。間投詞。

 このコーラスのラテン語は古典式発音。
 訳、これでいいのか?だいぶあやしい。たぶん大体こんなこと言うとる?ぐらいに思って貰えれば。

 「夜明け」を描いた曲と言えばalbaもそうだけど、あちらは、昇っていく太陽に眩く照らされる中、新しい世界へ希望を託してる。対するこちらは、朝まだきの時間、まだ薄暗い中に、太陽の輝きがほら今射し込んだ!って瞬間かな。シンセが新しい朝の到来を壮大に盛り上げる。空気中にきらきらと光の粒が漂う。薄明の向こうに何があるのかは、まだ分からない。
 "aera nova caerulea"までで「アエラ ウァ カエルレア(新しい青い時代は)」と思いきや、"cum quietam"と続いて、あれ?奪格支配の前置詞に対格…?あ!これ「ーエラ ウァー カエルレアー クム クィータム(新しさと青さを備えた静かな空気に)」なのね!って時間差で分かるやつ。で、正しい文意が分かってもaera nova(新しい時代)の印象は頭に残ったままなので、実際の意味でも比喩的な意味でも「黎明」が今始まるんだ!って感じになる。

 コーラス部分も含めて歌詞を読むと、アルバム『lucis ortus』の最後に「BABEL(2019Remix ver.)」が収録された意味が更によく分かる。率直にBabel言うとるし。真名辺さんは確実に紺野さんの書いた「BABEL」の歌詞を意識して作詞してらっしゃるよね?
 しかし、Emeth Azurもtinkle carolも、このアルバムの楽曲全部イメージカラーが青系で、ジャケットもブックレットも美しくて、やっぱりアルバムごと全部聴くべきだな、うん。



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この文章書いてる人はラテン語に関してド素人です。
このページはあくまで『lucis ortus』とか『反響するプシケー』CD等買った人向け、
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参考文献
『旧約聖書』(日本聖書協会 1955)