Le Roi des Fées (La Légende de Thomas le Rhymer)
フランス語メモ
Cécile Corbel " Graal "より
" Graal "11曲目、アーサー王伝説の登場人物ではなく、
アーサー王伝説を人々に歌い聞かせたバード(バルド)、
韻律詩人トーマス(うたびとトマス)の歌。
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※動詞の法は、特に断りがない限り直説法です。
・le(ル)・・男性名詞単数形につく定冠詞。
・roi(ロワ)・・「王」。男性名詞単数形。
・des(デ)・・「~の」。縮約冠詞。前置詞de+名詞の複数形につく定冠詞lesの縮約。
・fées(フェ)・・「妖精たち」。女性名詞fée(妖精、仙女)の複数形。
・la(ラ)・・女性名詞単数形につく定冠詞。
・légende(レジャーンド)・・「伝説、言い伝え、銘、キャプション」。女性名詞単数形。
・de(ドゥ)・・「~の」。前置詞。
・Thomas(トマ)・・「トマ、トマス、トーマス」。男性固有名詞。新約聖書に登場する使徒トマス(Θωμᾶς)に由来する人名。
・le(ル)・・男性名詞単数形につく定冠詞。
・rhymer(ライマー)・・英語の名詞。rhyme(韻)を踏む人。「吟遊詩人、韻文詩人、(揶揄して)へぼ詩人」。
『妖精の王 韻律詩人トーマスの伝説』
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・dans(ダン)・・「~の中で」。前置詞。
・la(ラ)・・女性名詞単数形につく定冠詞。
・ville(ヴィル)・・「都市、町、市」。女性名詞単数形。
・d'Earlston(ダールストン)・・「アールストンの」。前置詞de+(性別不明の)固有名詞Earlston。ここでは、スコットランド南東部のスコティッシュボーダーズエリア、旧ベリックシャー県にある市場町(market town)のこと。13世紀にはErceldoune(マイナーな古地名なんで表記揺れあるけど、日本語カナ表記だと「エルセルドゥーン」か「アースルドゥーン」)と呼ばれていた。トマスの生まれ故郷。
『アールストンの町で、』
・lully lullay(ルル ルーレィ)・・英語の間投詞。発音は人による。lullyもlullayも両方lullaby(子守歌)から派生したオノマトペっぽい。子供を寝かしつける時などに発する声。
『ルル、ルーレイ』
・un(アン)・・「ある」。男性名詞単数形につく不定冠詞。
・homme(オム)・・「人間、人類、男」。男性名詞単数形。
《un homme(アノム)》
・joue(ジュー)・・間接他動詞あるいは自他動詞jouer(~で遊ぶ、~を演奏する、~を使う、等)の、ここでは三人称単数現在形。
・sur(スュル)・・「~に向かって」。前置詞。ここでは" Un homme joue sur sa harpe "で「男はハープを弾く」。
・sa(サ)・・「彼の、彼女の、それの」。三人称単数の所有形容詞女性単数形。
・harpe(アルプ)・・「ハープ、竪琴」。女性名詞単数形。
・d'or(ドール)・・「金色の」。前置詞de+男性名詞or(黄金、富、金色、貴重なもの)の単数形。
『とある男が黄金のハープを弾く』
・mais(メ)・・「だが、でも、いったい、さて」。接続詞。
・il(イル)・・「彼は、それは」。三人称単数男性主格の人称代名詞。
《mais il(メズィル)》
・ne(ヌ)・・「~ない」。否定の副詞。
・joue(ジュー)・・「(それは)演奏する」。間接他動詞あるいは自他動詞jouer(~で遊ぶ、~を演奏する、~を使う、等)の、ここでは三人称単数現在形。
・pour(プール)・・「~のために」。前置詞。
・personne(ペルソンヌ)・・不定代名詞。ここでは" ne~pour personne "で「誰のためにも~ない」。
『けれど、誰の為に奏でるのでもなく』
・lully lullay(ルル ルーレィ)・・英語の間投詞。
『ルル、ルーレイ』
・jour(ジュール)・・「1日、昼」。男性名詞単数形。
・et(エ)・・「そして、~と」。接続詞。
《jour et(ジューレ)》
・nuit(ニュイ)・・「夜」。女性名詞単数形。
・encor(アンコール)・・「また、もう一度」。副詞encore(まだ、なお、また、再び、もっと、とは言え)の詩形。発音変わらん。
・et(エ)・・「そして、~と」。接続詞。
《encor et(アンコーレ)》
・encor(アンコール)
『昼も夜も、幾度となく』
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・ô(オー)・・「おお、ああ」。間投詞。これも英語版The King of the Fairiesも、"O, o,"と呼びかけるところ、息多めで(フー、フー)とも聴こえる。
・ô(オー)
・apprends-moi(アプラーンモワ)・・「(君が)私に教えろ」。他動詞apprendre(~を学ぶ、習う、知る、教える、知らせる)の命令法二人称単数形+一人称単数の人称代名詞強勢形。
・ô(オー)・・「おお、ああ」。間投詞。
・ô(オー)
・la(ラ)・・女性名詞単数形につく定冠詞。
・chanson(シャンソン)・・「歌、歌謡、さえずり、叙事詩」。女性名詞単数形。
・qui(キ)・・「~するところの」。関係代名詞。
・ensorcelle(アンソルセル)・・「(それは)魔法にかける」。他動詞ensorceler(~を魔法にかける、魅惑する、惑わす)の、ここでは三人称単数現在形。
『おおい、おおい、魔法をかける歌を教えてくれ』
・à(ア)・・「~で」。前置詞。
・plus(プリュ)・・比較の副詞。
・de(ドゥ)・・前置詞。ここでは" plus de 数値 "で「~以上」。
・cent(サン)・・「100、100の」。基数詞、形容詞。単数形。
・lieues(リュー)・・「リュー、里」。女性名詞lieueの複数形。昔の距離の単位。陸路の場合は1リューが約4kmで、おおよそ日本の「1里」と同程度。海路の場合は1リューが約5.5km。おおよそ日本の3海里程度。この場合は漠然と「遠い距離」。英語版The King of Fairiesでは300マイル(three hundred miles from my home)となっている。
・de(ドゥ)・・「~から」。前置詞。
・chez(シェ)・・「~の家で」。前置詞。
・moi(モワ)・・「私」。一人称単数の人称代名詞強勢形。
『おれの家から100リューよりもっと遠いところで、』
・ô(オー)・・「おお、ああ」。間投詞。
・ô(オー)
・j'étais(ジェテ)・・「私は~だったものだ」。一人称単数主格の人称代名詞je(私は)+英語のbe動詞に当たる自動詞êtreの、ここでは一人称単数半過去形。
・le(ル)・・男性名詞単数形につく定冠詞。
・roi(ロワ)・・「王」。男性名詞単数形。
・des(デ)・・「~の」。縮約冠詞。前置詞de+名詞の複数形につく定冠詞lesの縮約。
・fées(フェ)・・「妖精たち」。女性名詞fée(妖精、仙女)の複数形。
『おおい、おおい、おれは妖精の王だったんだ』
・en(アン)・・「~で」。前置詞。
・bas(バ)・・「低い所、下の部分」。不変化の男性名詞。" en bas "で「下に」。
・sous(スー)・・「~の下に、~の麓に」。前置詞。
・les(レ)・・名詞の複数形につく定冠詞。
・rochers(ロシェ)・・「岩山(複)」。男性名詞rocher(岩山、岩壁、岩礁)の複数形。
『岩山の下で、』
・entends-tu(アンタンテュ)・・「君は聞こえるか?」。他動詞entendre(聞こえる、聴く)の、ここでは二人称単数現在形+二人称単数主格の人称代名詞。倒置疑問文。
・les(レ)・・名詞の複数形につく定冠詞。
・voix(ヴォワ)・・「声、鳴き声、意見、声の主(複)」。不変化の女性名詞。ここでは複数形。
・qui(キ)・・「~するところの」。関係代名詞。
・m'appellent(マペル)・・「(それらは)私を呼ぶ」。一人称単数目的格の人称代名詞me+他動詞appeler(~を呼ぶ、電話する、願う、求める)の三人称複数現在形。
『おれを呼ぶ声が聞こえるかい?』
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・mais(メ)・・「だが、でも、いったい、さて」。接続詞。
・sept(セット)・・「7、7つの」。基数詞、不変化の形容詞。
・années(アネ)・・「年(複)」。女性名詞année(年、年度、歳、時期)の複数形。
《sept années(セッタネ)》
・ont(オン)・・英語のhaveっぽい助動詞avoirの三人称複数現在形。ここでは過去分詞と共に複合過去を作っている。
・passé(パセ)・・自他動詞passer(通る、立ち寄る、移る、過ぎる、~を越える、~を過ごす、等)の過去分詞。自動詞の場合、複合過去の助動詞はêtreを使うことが多い。avoirを使うのは、行為、出来事に焦点がある時。" Sept années sont passées. "が単に「7年が過ぎた」で、"
Sept années ont passé. "だと「7年が経ったなあ」みたいな若干のしみじみ感が加わるんかな?どうなんやろ?
『けれど7年が経って、』
・lully lullay(ルル ルーレィ)・・英語の間投詞。
『ルル、ルーレイ』
・l'homme(ロム)・・「男」。頭語が母音またはhの単数名詞につく定冠詞l'+男性名詞homme(人間、人類、男)の単数形。
・pleure(プルル)・・「(それは)泣く」。自他動詞pleurer(泣く、涙を流す、泣きついて頼む、~を嘆く、悼む)の、ここでは三人称単数現在形。
・là(ラ)・・「そこ、あそこ」。副詞。
・sur(スュル)・・前置詞。" pleurer sur ~"で「~を嘆く、悲しむ」。文語的表現。
・son(ソン)・・「彼の、彼女の、それの」。三人称単数の所有形容詞。男性単数形。
・sort(ソール)・・「運命、境遇、くじ、成り行き、呪い」。男性名詞単数形。
『男はそこで自分の運命を嘆いている』
・les(レ)・・名詞の複数形につく定冠詞。
・portes(ポルト)・・「門(複)」。女性名詞porte(ドア、扉、門)の複数形。
・se(ス)・・三人称の再帰代名詞。
・sont(ソン)・・英語のbe動詞に当たる助動詞êtreの三人称複数現在形。ここでは代名動詞の過去分詞と共に複合過去を作っている。
・fermées(フェルメ)・・自他動詞fermer(~を閉める、閉じる、塞ぐ、休業する)の代名動詞形se fermer{(扉などが)閉まる、(傷などが)塞がる、自分を閉ざす}の過去分詞。女性複数形。" se sont fermées "で「(彼女らは)閉まった」。
・lully lullay(ルル ルーレィ)・・英語の間投詞。
・à(ア)・・前置詞。
・jamais(ジャメ)・・副詞。ここでは"a jamais"で「永久に、永遠に、いつまでも」。
・sur(スュル)・・「~に対して」。前置詞。
・sa(サ)・・「彼の、彼女の、それの」。三人称単数の所有形容詞女性単数形。
・harpe(アルプ)・・「ハープ、竪琴」。女性名詞単数形。
・d'or(ドール)・・「金色の」。前置詞de+男性名詞or(黄金、富、金色、貴重なもの)の単数形。
『彼の黄金のハープに、ルル、ルーレイ、門は永遠に閉ざされた』
・ô(オー)・・「おお、ああ」。間投詞。
・ô(オー)
・j'ai(ジェ)・・一人称単数の人称代名詞je(私は)+英語のhave動詞に当たる助動詞avoirの一人称単数現在形。ここでは過去分詞を伴って複合過去を作っている。
・perdu(ペルデュ)・・他動詞perdre(失う、なくす、見失う)の過去分詞。"J'ai perdu"で「私は失った」。
『おおい、おおい、おれは失くしてしまった』
・ô(オー)・・「おお、ああ」。間投詞。
・ô(オー)
・la(ラ)・・女性名詞単数形につく定冠詞。
・chanson(シャンソン)・・「歌、歌謡、さえずり、叙事詩」。女性名詞単数形。
・qui(キ)・・「~するところの」。関係代名詞。
・ensorcelle(アンソルセル)・・「(それは)魔法にかける」。他動詞ensorceler(~を魔法にかける、魅惑する、惑わす)の、ここでは三人称単数現在形。
『おおい、おおい、魔法をかける歌を』
・était-ce(エテス)・・「あれは~であったか?」。英語のbe動詞に当たる自動詞êtreの三人称単数半過去形+指示代名詞ce(これ、それ、あれ)。倒置疑問文。
・un(アン)・・「ある」。男性名詞単数形につく不定冠詞。
・rêve(レーヴ)・・「夢、幻想、憧れ」。男性名詞単数形。
・je(ジュ)・・「私は」。一人称単数主格の人称代名詞。
・ne(ヌ)・・「~ない」。否定の副詞。
・sais(セ)・・「(私は)分かっている」。他動詞savoir(知っている、分かっている)の一人称単数現在形。
・plus(プリュ)・・副詞。neとセットだと「もはや~ない、もう~ない」。
『あれは夢だったのか、もう分からない』
・ô(オー)・・「おお、ああ」。間投詞。
・ô(オー)
・j'étais(ジェテ)・・「私は~だったものだ」。一人称単数主格の人称代名詞
・le(ル)・・男性名詞単数形につく定冠詞。
・roi(ロワ)・・「王」。男性名詞単数形。
・des(デ)・・「~の」。縮約冠詞。前置詞
・fées(フェ)・・「妖精たち」。女性名詞
『おおい、おおい、おれは妖精の王だったんだ』
・maintenant(マントナン)・・「今、今では、今後、ところで」。副詞。
・sous(スー)・・「~の下に、~の麓に」。前置詞。
・les(レ)・・名詞の複数形につく定冠詞。
・rochers(ロシェ)・・「岩山(複)」。男性名詞rocher(岩山、岩壁、岩礁)の複数形。
『今となっては岩山の下で、』
・c'est(セ)・・「それは~だ」。指示代名詞ce(これ、それ)+英語のbe動詞に当たる自動詞êtreの三人称単数現在形。
・juste(ジュスト)・・「正しく、ちょうど、ぎりぎりに、ほんの、せいぜい」。副詞。
・le(ル)・・男性名詞単数形につく定冠詞。
・vent(ヴァン)・・「風」。男性名詞単数形。
・qui(キ)・・「~するところの」。関係代名詞。
・appellent(アペル)・・「(それらは)呼ぶ」。他動詞appeler(~を呼ぶ、電話する、願う、求める)の三人称複数現在形。
『せいぜい風が呼ぶばかり』
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・ô(オー)・・「おお、ああ」。間投詞。
・mon(モン)・・「私の」。一人称単数の所有形容詞。男性単数形。
・amour(アムール)・・「愛」。男性名詞単数形。ここでは"mon amour"で「愛する人」。
《mon amour(モナムール)》
・je(ジュ)・・「私は」。一人称単数主格の人称代名詞。
・t'ai(テ)・・二人称単数目的格の人称代名詞te+英語のhaveっぽい助動詞avoirの一人称単数現在形。ここでは過去分詞と共に複合過去を作っている。
・laissée(レセ)・・他動詞laisser(~を残す、置いておく、置き忘れる、離れる、放っておく)の過去分詞。女性単数形。
avoirの複合過去だと過去分詞は主語に合わせて性数変化しないけど、直接目的語が動詞の前に来る場合は、この直接目的語の性数に合わせて変化する。t'(te)は女性。"Je
t'ai laissée"で「私は君(女性)を残してきた、置いて行った」。
『おお、愛する君よ、おれは君を置いて行った』
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・si(スィ)・・「それほど、そんなに、とても」。副詞。 『ここからずっと遠くに』 |
・pour(プール)・・前置詞。不定詞につくと「~するために」。
・être(エートル)・・「~になること」。英語のbe動詞に当たる自動詞の不定詞。
《Pour être(プーレートル)》
・roi(ロワ)・・「王」。男性名詞単数形。
・d'un(ダン)・・「~の」。前置詞de+男性名詞単数形につく不定冠詞un。
・autre(オートル)・・「他の、別の」。不定形容詞単数形。
《d'un autre(ダノートル)》
・monde(モーンド)・・「世界」。男性名詞単数形。
『別の世界の王になるために』
・je(ジュ)・・「私は」。一人称単数主格の人称代名詞。
・vivais(ヴィヴェ)・・「(私は)生きていたものだ」。自他動詞vivre(生きる、暮らす、生計を立てる、~を生きる、体験する)の一人称単数半過去形。
・d'air(デール)・・「空気で」。前置詞de+男性名詞air(空気、空)の単数形。
・et(エ)・・「そして、~と」。接続詞。
《d'air et(デーレ)》
・de(ドゥ)・・「~で」。前置詞。
・rosée(ロゼ)・・「露」。女性名詞単数形。
『おれは空気と露で生きていた』
| ・les(レ)・・名詞の複数形につく定冠詞。 ・fées(フェ)・・「妖精たち」。女性名詞fée(妖精、仙女)の複数形。 ・m'avaient(マヴェ)・・一人称単数目的格の人称代名詞me+英語のhaveっぽい他動詞avoirの三人称複数半過去形。ここでは過去分詞と共に大過去を作っている。 ・choisi(ショワズィ)・・他動詞choisir(~を選ぶ、選択する、決める)の過去分詞。" m'avaient choisi "で「(それらは)私を選んでいた」。" Je vivais d'air et de rosée "や" J'étais le roi d'un autre monde "の時点で完了している出来事。 『妖精たちがおれを選んで、』 |
・j'étais(ジェテ)・・「私は~だったものだ」。一人称単数主格の人称代名詞je(私は)+英語のbe動詞に当たる自動詞êtreの、ここでは一人称単数半過去形。
・le(ル)・・男性名詞単数形につく定冠詞。
・roi(ロワ)・・「王」。男性名詞単数形。
・d'un(ダン)・・「~の」。前置詞de+男性名詞単数形につく不定冠詞un。
・autre(オートル)・・「他の、別の」。不定形容詞単数形。
《d'un autre(ダノートル)》
・monde(モーンド)・・「世界」。男性名詞単数形。
『おれは別の世界の王だったんだ』
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・ô(オー)・・「おお、ああ」。間投詞。
・mon(モン)・・「私の」。一人称単数の所有形容詞。男性単数形。
・amour(アムール)・・「愛」。男性名詞単数形。ここでは"mon amour"で「愛する人」。
《mon amour(モナムール)》
・je(ジュ)・・「私は」。一人称単数主格の人称代名詞。
・t'ai(テ)・・二人称単数目的格の人称代名詞te+英語のhaveっぽい助動詞avoirの一人称単数現在形。ここでは過去分詞と共に複合過去を作っている。
・laissée(レセ)・・他動詞laisser(~を残す、置いておく、置き忘れる、離れる、放っておく)の過去分詞。女性単数形。"Je t'ai laissée"で「私は君(女性)を残してきた、置いて行った」。
『おお、愛する君よ、おれは君を置いて行った』
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・si(スィ)・・「それほど、そんなに、とても」。副詞。 『ここからずっと遠くに』 |
・pour(プール)・・前置詞。不定詞につくと「~するために」。
・être(エートル)・・「~になること」。英語のbe動詞に当たる自動詞の不定詞。
《Pour être(プーレートル)》
・roi(ロワ)・・「王」。男性名詞単数形。
・d'un(ダン)・・「~の」。前置詞de+男性名詞単数形につく不定冠詞un。
・autre(オートル)・・「他の、別の」。不定形容詞単数形。
《d'un autre(ダノートル)》
・monde(モーンド)・・「世界」。男性名詞単数形。
『別の世界の王になるために』
・je(ジュ)・・「私は」。一人称単数主格の人称代名詞。
・vivais(ヴィヴェ)・・「(私は)生きていたものだ」。自他動詞vivre(生きる、暮らす、生計を立てる、~を生きる、体験する)の一人称単数半過去形。
・d'air(デール)・・「空気で」。前置詞de+男性名詞air(空気、空)の単数形。
・et(エ)・・「そして、~と」。接続詞。
《d'air et(デーレ)》
・de(ドゥ)・・「~で」。前置詞。
・rosée(ロゼ)・・「露」。女性名詞単数形。
『おれは空気と露で生きていた』
| ・les(レ)・・名詞の複数形につく定冠詞。 ・fées(フェ)・・「妖精たち」。女性名詞fée(妖精、仙女)の複数形。 ・m'avaient(マヴェ)・・一人称単数目的格の人称代名詞me+英語のhaveっぽい他動詞avoirの三人称複数半過去形。ここでは過去分詞と共に大過去を作っている。 ・choisi(ショワズィ)・・他動詞choisir(~を選ぶ、選択する、決める)の過去分詞。" m'avaient choisi "で「(それらは)私を選んでいた」。 『妖精たちがおれを選んで、』 |
・j'étais(ジェテ)・・「私は~だったものだ」。一人称単数主格の人称代名詞je(私は)+英語のbe動詞に当たる自動詞êtreの、ここでは一人称単数半過去形。
・le(ル)・・男性名詞単数形につく定冠詞。
・roi(ロワ)・・「王」。男性名詞単数形。
・d'un(ダン)・・「~の」。前置詞de+男性名詞単数形につく不定冠詞un。
・autre(オートル)・・「他の、別の」。不定形容詞単数形。
《d'un autre(ダノートル)》
・monde(モーンド)・・「世界」。男性名詞単数形。
『おれは別の世界の王だったんだ』
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・sous(スー)・・「~の下に、~の麓に」。前置詞。
・le(ル)・・男性名詞単数形につく定冠詞。
・chêne(シェンヌ)・・「オーク」。男性名詞単数形。※日本語で言う樫、楢を含むコナラ属の木全般を指す。
・d'Eildon(デイルドン)・・「イールドンの」。前置詞de+(性別不明の)固有名詞Eildon。ここでは、スコットランド南東部のスコティッシュボーダーズエリアにあるEildon Hillsのこと(日本語カナ表記だと「イールドンの丘」または「エイルドンの丘」)。
『イールドンのオークの下で、』
・un(アン)・・男性名詞単数形につく不定冠詞。
・vieux(ヴィユー)・・「年取った、年老いた、古い」。形容詞。男性単数形。
・dragon(ドラゴン)・・「ドラゴン、竜、厳格な監督者」。男性名詞単数形。
・sommeille(ソメイ)・・「(それは)転寝する」。自動詞sommeiller(転寝する、まどろむ、活動を休止している、休眠している)の、ここでは三人称単数現在形。
『年老いたドラゴンが微睡んでいる』
・là(ラ)・・「そこ、あそこ」。副詞。
・où(ウー)・・「~するところの」。関係代名詞。場所、時、状態を表す名詞につく。
・la(ラ)・・女性名詞単数形につく定冠詞。
・source(スルス)・・「源泉、泉、源、根源、由来、情報源、原典」。女性名詞単数形。
・donne(ドヌ)・・「(それは)~をもたらす」。自他動詞donner(~を与える、~を支払う、~をもたらす、収穫をもたらす)の三人称単数現在形。
・le(ル)・・男性名詞単数形につく定冠詞。
・lait(レ)・・「ミルク、乳」。男性名詞単数形。
・le(ル)・・男性名詞単数形につく定冠詞。
・vin(ヴァン)・・「ワイン、葡萄酒」。男性名詞単数形。
・et(エ)・・「そして、~と」。接続詞。
・le(ル)・・男性名詞単数形につく定冠詞。
・miel(ミエル)・・「蜂蜜」。男性名詞単数形。
『乳とワインと蜜の川が、湧き出す泉のあるところに』
『泉が乳、ワイン、そして蜂蜜をもたらすそこに』
・garde-le(ガルドル)・・「(君は)そのことを~のままにしろ」。他動詞garder(~の世話をする、~を見張る、~を保存する、取っておく、~に留まる、等)の命令法二人称単数形+中性代名詞le(そのことを)。ここでは" garder A B "で「AをBの状態に保つ」。
・secret(スクレ)・・「秘密、隠し事」。男性名詞単数形。
『それは秘密にしておきなさい』
・tu(テュ)・・「君が」。二人称単数主格の人称代名詞。
・dois(ドゥワ)・・「(君は)~しなければならない」。他動詞devoir(~しなければならない、~するに違いない、必ず~する)の、ここでは二人称単数現在形。不定詞を伴う。
・rester(レステ)・・「留まる、~のままでいる、残っていること」。自動詞の不定詞。
・muet(ミュエ)・・「口のきけない、無言の、黙った、無記入の、無音の」。形容詞。男性単数形。
『口を閉ざしたままでいるのです』
・garde-le(ガルドル)・・「(君は)そのことを~のままにしろ」。他動詞garder(~の世話をする、~を見張る、~を保存する、取っておく、~に留まる、等)の命令法二人称単数形+中性代名詞le(そのことを)。ここでは" garder A B "で「AをBの状態に保つ」。
・secret(スクレ)・・「秘密、隠し事」。男性名詞単数形。
『それは秘密にしておきなさい』
・tu(テュ)・・「君が」。二人称単数主格の人称代名詞。
・dois(ドゥワ)・・「(君は)~しなければならない」。他動詞devoir(~しなければならない、~するに違いない、必ず~する)の、ここでは二人称単数現在形。不定詞を伴う。
・rester(レステ)・・「留まる、~のままでいる、残っていること」。自動詞の不定詞。
・muet(ミュエ)・・「口のきけない、無言の、黙った、無記入の、無音の」。形容詞。男性単数形。
『口を閉ざしたままでいるのです』
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・sous(スー)・・「~の下に、~の麓に」。前置詞。
・le(ル)・・男性名詞単数形につく定冠詞。
・chêne(シェンヌ)・・「オーク」。男性名詞単数形。※日本語で言う樫、楢を含むコナラ属の木全般を指す。
・d'Eildon(デイルドン)・・「イールドンの」。前置詞de+(性別不明の)固有名詞Eildon。
『イールドンのオークの下で、』
・un(アン)・・男性名詞単数形につく不定冠詞。
・vieux(ヴィユー)・・「年取った、年老いた、古い」。形容詞。男性単数形。
・dragon(ドラゴン)・・「ドラゴン、竜、厳格な監督者」。男性名詞単数形。
・sommeille(ソメイ)・・「(それは)転寝する」。自動詞sommeiller(転寝する、まどろむ、活動を休止している、休眠している)の、ここでは三人称単数現在形。
『年老いたドラゴンが微睡んでいる』
・là(ラ)・・「そこ、あそこ」。副詞。
・où(ウー)・・「~するところの」。関係代名詞。場所、時、状態を表す名詞につく。
・la(ラ)・・女性名詞単数形につく定冠詞。
・source(スルス)・・「源泉、泉、源、根源、由来、情報源、原典」。女性名詞単数形。
・donne(ドヌ)・・「(それは)~をもたらす」。自他動詞donner(~を与える、~を支払う、~をもたらす、収穫をもたらす)の三人称単数現在形。
・le(ル)・・男性名詞単数形につく定冠詞。
・lait(レ)・・「ミルク、乳」。男性名詞単数形。
・le(ル)・・男性名詞単数形につく定冠詞。
・vin(ヴァン)・・「ワイン、葡萄酒」。男性名詞単数形。
・et(エ)・・「そして、~と」。接続詞。
・le(ル)・・男性名詞単数形につく定冠詞。
・miel(ミエル)・・「蜂蜜」。男性名詞単数形。
『乳とワインと蜜の川が、湧き出す泉のあるところに』
・garde-le(ガルドル)・・「(君は)そのことを~のままにしろ」。他動詞garder(~の世話をする、~を見張る、~を保存する、取っておく、~に留まる、等)の命令法二人称単数形+中性代名詞le(そのことを)。ここでは" garder A B "で「AをBの状態に保つ」。
・secret(スクレ)・・「秘密、隠し事」。男性名詞単数形。
『それは秘密にしておきなさい』
・tu(テュ)・・「君が」。二人称単数主格の人称代名詞。
・dois(ドゥワ)・・「(君は)~しなければならない」。他動詞devoir(~しなければならない、~するに違いない、必ず~する)の、ここでは二人称単数現在形。不定詞を伴う。
・rester(レステ)・・「留まる、~のままでいる、残っていること」。自動詞の不定詞。
・muet(ミュエ)・・「口のきけない、無言の、黙った、無記入の、無音の」。形容詞。男性単数形。
『口を閉ざしたままでいるのです』
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韻律詩人トーマス(Thomas le Rhymer/Thomas the Rhymer)は、13世紀に生きたスコットランドの予言者であり、詩人だった。
彼の名を冠するバラッドは、この時代に遡る。
トーマス・ライマー(Thomas Rhymer)のバラッドは、ある日、トーマスが妖精の女王にキスをして、一緒に妖精の王国へと出かけて行ったと物語る。
女王に死すべき人間の世界へ戻れと言われるまで、彼はほんの一晩そこに滞在し、帰ってみれば、7年経っていることに気が付いた。
加えて、女王は若者にハープ弾き、あるいは予言者になることを提案し、彼は「予言者」を選んだ。
何年か後に、トーマスは妖精の国を再訪し、そこから二度と戻らなかったと言う。
もしも彼が「ハープ弾き」を選んでいたら、どうなっていただろう?
妖精王国への門は半開きのままだっただろうか?
この物語は、私に詩人ジョン・キーツ(John Keats)の有名なバラッド、« La Belle Dame sans Merci »を思い出させる。
純粋なロマン主義且つアーサー王ものの様式で、彼は名も無き騎士と「妖精の子」だと言う謎の女性との遭遇を描写している。
その騎士は、荒涼とした肌寒い丘の上で、その美しく若い女性とどのように出会い、馬に乗せて行ったのかを物語る。
けれど、彼が丘の上でのこの不思議な遭遇の話をした時、夢から覚めたばかりなのか、死んでいるのかは分からない……
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| La Belle Dame sans Merci I O what can ail thee, knight-at-arms, Alone and palely loitering? The sedge has withered from the lake, And no birds sing. II O what can ail thee, knight-at-arms, So haggard and so woe-begone? The squirrel's granary is full, And the harvest's done. III I see a lily on thy brow, With anguish moist and fever-dew, And on thy cheeks a fading rose Fast withereth too. IV I met a lady in the meads, Full beautiful—a faery's child, Her hair was long, her foot was light, And her eyes were wild. V I made a garland for her head, And bracelets too, and fragrant zone; She looked at me as she did love, And made sweet moan VI I set her on my pacing steed, And nothing else saw all day long, For sidelong would she bend, and sing A faery's song. VII She found me roots of relish sweet, And honey wild, and manna-dew, And sure in language strange she said— ‘I love thee true’. VIII She took me to her Elfin grot, And there she wept and sighed full sore, And there I shut her wild wild eyes With kisses four. IX And there she lullèd me asleep, And there I dreamed—Ah! woe betide!— The latest dream I ever dreamt On the cold hill side. X I saw pale kings and princes too, Pale warriors, death-pale were they all; They cried—‘La Belle Dame sans Merci Thee hath in thrall!’ XI I saw their starved lips in the gloam, With horrid warning gapèd wide, And I awoke and found me here, On the cold hill’s side. XII And this is why I sojourn here, Alone and palely loitering, Though the sedge is withered from the lake, And no birds sing. |
美しき非情の女 I 何事ありて思い煩う 甲冑ゆゆしき騎士よ、 ただ独り血の気も失せて廻りつつ。 湖に菅は末枯れて移ろい 啼く鳥は絶えてなし。 II 何事ありて思い煩う 甲冑ゆゆしき騎士よ、 かくも萎え かくもかなしみに拉がれて。 栗鼠の穀倉は満ち足らい 収穫の秋は終りぬ。 III 君が額に百合の花見ゆ 苦悩と熱にしとどに濡れて、 君が頬には あせゆく薔薇 また 速やかに凋みつつ。 IV たかはらに遇いし女あり 美の極み――仙女の子なり、 その髪長く 足かろやかに その目は妖し。 V 頭にかざす花環を編みて与えぬ 腕に釧も 芳しき腰帯をも、 女は恋うるがに吾を目守りて 甘やかに声を洩らしぬ。 VI 歩みを運ぶわが駒に騎せ 吾はひもすがら他をかえりみず、 横ざまに身を傾げかの女歌いし故に 神仙の歌のひとふし。 VII わがために美味しき草の根を見出でたり 天然の蜂蜜を マナの雫を、 異様の言の葉ながら紛れもなく声に出せり―― 「まことに君を愛す」と。 VIII 棲みなせる仙窟に吾を導き 女は哭き 溢るる歎きの息を吐けり、 彼処にて吾は塞ぎぬ 妖しとも妖しきかの目を 四たびの接吻をもて。 IX 彼処にてかの女吾を眠りに誘い 彼処にて吾は夢みぬ――ああ 災厄なる哉―― わが見たるついのその夢 肌寒き丘のなぞえに。 X 吾は見たりき 血の気の失せし諸国の王また王子らを 血の気の失せし武士どもを 悉く亡者の如く蒼ざめて。 彼らは叫びぬ――「美しき非情の女 汝が心をば捉えたり」と。 XI 吾は見たりき 夕闇に 餓えやつれたる唇の おぞましき警めを告げうち開くそのさまを、 目醒めてみれば わが身はこの地にありぬ 肌寒き丘のなぞえに。 XII さればこそ この地を去りやらず ただ独り血の気も失せて廻るなれ、 湖に菅は末枯れて移ろい 啼く鳥は絶えてなけれど。 |
※上記原文及び(宮崎雄行さんによる)対訳は、〔参7〕p118~125より引用。
※CDブックではフランス語訳のみ掲載。
※この詩は、様々な方が日本語訳なさっている。web上で読めるものだと、
武田雅子さんの訳や、
えーじさんの訳の方が分かり易いかもしれない。
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韻律詩人トーマスの物語はまた、妖精に誘拐される人間が出て来るケルトやブルターニュの多くの伝説のことも思い起こさせる。
※註この現実と並存する異界の国では、時間が人の世と同じようには流れない。不運な人が、妖精たちと一緒にほんの数時間めくるめく時を過ごしたと思って、現実に帰って来た時、実際に地上では何年も、それどころか何世紀も過ぎ去っている。不幸な人はそこで、自分の家が廃墟と化し、近親者、友人たち、家族も子供たちも皆、とっくの昔に亡くなっていることに気が付くのだ……
また、時には、妖精たちが生まれたばかりの人間の赤ちゃんを、自分たちの子供、あるいは醜い小さなトロールと取り替えてしまうこともある。
子供の頃、この類のお話がすごく怖かったのを覚えてる!
最近、この妖精による子供の取り換えは、ケルト文化だけではなく、ヨーロッパの――北から南まで――民間伝承全般に広く普及した信仰だったことを知った。
(Cécile Corbelによる楽曲解説)
※註 原文は« ce royaume parallèle »。ここでは、日本語で言う「パラレルワールド(平行世界、並行世界)」とは違う意味っぽい。
この歌が" Graal "に入っている理由は、スコットランドの詩人で作家ウォルター・スコット(Walter Scott)さんのバラッド"Thomas
the Rhymer"三部作の"Part 3"を読めば分かる。19世紀初めに彼が編纂した"Minstrelsy
of the Scottish Border(スコティシュボーダーの詩歌集)"に収録されている。web上ではこちらで読める。
"Thomas the Rhymer, Part 1"では、トーマスが妖精の女王と出会い、彼女にキスをして妖精の国に連れて行かれ、7年間地上から姿を消す。"Part
2"では、人の世に帰って来たトーマスが元居た場所で目を醒まし、スコットランドの未来について様々に不吉な予言をする。Part 1, 2は古い伝承を元に改訂したものらしいけど、"Part
3"は完全にスコットさんの創作。
更に7年が過ぎ、スコットランド中が戦火に包まれる中、アースルドゥーンのトーマス・レアモントの邸宅で宴が開かれた。
食事が終わると、トーマスは妖精の国の歌比べ(minstrel strife)で勝ち取った妖精のハープ(elfin harp)を手に、アーサー王の円卓の騎士を歌う。
人々は静まり返り、湖の戦士ランスロット、貴婦人のために血を流したガウェイン、他に並ぶ者なきライオネル、喜びの城、アヴァロンの魔法の谷、ブランウェイン(イゾルデの侍女か?)、サグラモール、悪魔生まれの魔術師マーリン、そしてトリストレム(トリスタン)とイゾルデの悲恋の物語を、トーマスが朗々と歌い上げるのを聴いた。
宴が終わり、夜になると、人々は月明かりの下で「ファルナリー(Farnalie)※アースルドゥーン近郊の地名の雪のように白い」牡鹿と牝鹿が堂々と並んで歩いているのを目撃した。この奇妙な光景を伝えられたトーマスは、ベッドから飛び起きた。時が来たことを知ったのだ。
彼は父祖より受け継いだ古いレアモントの邸宅を何度も振り返り、愛しい我が家とアースルドゥーンに何度も別れを告げて、鹿たちと共にリーダー川を渡って行った。
トーマスが生きた人間として人々の前に現れることは二度となかったと言う。
トーマスは、13世紀に中英語で書かれたロマンス詩"Sir Tristrem(トリストレム卿)"の作者と言われていて、スコットさんのバラッドで彼がトリスタンとイゾルデの歌を歌うのも、故なきことではない。トーマス・レアモントは、スコットランドの人々に魔術師マーリンにも匹敵する予言者と見做され、彼の物語は様々に語り伝えられた。
スコットさんの"Thomas the Rhymer, Part 1"は、19世紀後期にアメリカの学者フランシス・ジェームズ・チャイルド(Francis
James Child)さんが編纂した"The English and Scottish Popular Ballads(イングランドとスコットランドの民衆バラッド集)"、通称チャイルド・バラッド(Child
Ballads)にも"Thomas Rhymer, Child37C"として収録されている。
チャイルドさんは、ほぼ同じ詩のバージョン違いも集めていて、ここに収録された微妙に違うChild37A,B,Cがこちらで読める。(後から更にDとEも追加されたらしい。)
この内、Child37Aの邦訳(薮下卓郎さんによる)がこちらのサイトの下部「訳詩の箱」で読めるので、解説も含めて是非ご覧頂きたい。『うたびとトマス』、素晴らしいから。
A版では、トーマスが「草の生えた土手(grassy bank)」に寝転んでいる時、妖精の女王が「シダの茂る丘(fernie brae)」を馬で越えて来るけど、B版C版では具体的な地名を出している。トーマスが寝転んでいるのは「ハントリーの土手(Huntlie
banks/Huntlie bank)」で、妖精の女王は「イールドンの丘の木の側(by the Eildon Tree)」を馬で下って来る。
キーツさんが1819年に書いたバラッド" La Belle Dame sans Merci "は 、上記Thomas Rhymerのバラッドの影響を受けて書かれたもの。タイトルと第10節の一部だけフランス語なのは、15世紀フランスの詩人で政治作家アラン・シャルティエ(Alain Chartier)さんが書いた宮廷恋愛物語討論詩"
La Belle Dame sans Mercy "をリスペクトしてのことらしい。
永井豊実さんは、紀要論文『『つれなき美女』のロマンス』において、この物語の騎士と妖精の子である美女がランスロットとグィネヴィアを暗示していると言う。
湖の乙女は当然としても、ほとんどの物語で人の子として生まれているモーガンにしろ、グィネヴィアにしろ、アーサー王伝説に登場する主要な女性キャラクターには、どうにも人ならざるもの、異界の妖精のイメージが付き纏う。Une Reine(Excalibur)のページでも語った通り、グィネヴィアはケルトの伝承における「主権の女神(Sovereignty goddess)」の性質を持つ。また、グィネヴィアのウェールズ語名グウェンフウィヴァール(Gwenhwyfar)は、中世ウェールズ語で「白い妖精(幽霊、幻影)」とも解釈できる。
一度美しい妖精に魅入られてしまった者は、例え現世に帰って来られても、心はずっと妖精の国に囚われてしまう。二度と元の生活には戻れないのだ。
この歌は、"Songbook vol.3"及び"Songbook vol.1"日本盤にもボーナストラックとして収録された英語の歌、(The) King of the Fairiesのフランス語版である。
上記のメモは、この英語版の歌詞カードを参考に" Graal "CDブックには書かれていない間投詞を補っている。
セシルさんの言ってることがvol.3の歌詞解説とちょい違うのは、制作の下敷きにしたトーマス・(ザ・)ライマーのバラッドのバージョンが違うからだろうな。
それぞれの言語で音楽に合う美しい響きを追求してるから、歌詞の内容が違うのは当然なんだけど、他に大きな違いがあるとすれば、前奏かなぁ?幽寂たる霧の中を進むような趣ある音楽に乗せて、The
King of the Fairiesでは、妖精のお喋りを思わせる囁き声が入っている。一方のLe Roi des Féesにはこれがない。
それと、2:48~の英語版が、
| I left family and friends (since centuries) become the king of the fairies I slept on silver and gold (roses opened for you) I was the king of the fairies |
おれは家族も友人も置いて来た。 (何世紀も前に) 妖精の王になり、 おれは金と銀の上で眠った。 (薔薇はあなたのために咲いた) おれは妖精の王だったんだ。 |
※上記左は"Songbook vol.3 renaissance"King of the Fairies歌詞カードより引用。
トーマスと妖精たちとの掛け合いになっているのに対して、
| Ô mon amour je t'ai laissée Si loin d'ici Pour être roi d'un autre monde Je vivais d'air et de rosée Les fées m'avaient choisi J'étais le roi d'un autre monde |
おお、愛する君よ、おれは君を置いて行った。 (ここからずっと遠くに) 別の世界の王になるために。 おれは空気と露で生きていた。 (妖精たちがおれを選んで、) おれは別の世界の王だったんだ。 |
※上記左は" Graal "CDブックp40より引用。
仏語版はトーマス一人の独白になっている。
どっちがいいかと言うと、どっちも美しくて最高なんですがね!
"lully lullay"と言ってたり、最後に"You shall hold your tongue(口を閉じていなさい)"、"you
shall keep it to yourself(そのことは胸にしまっておきなさい。)"あるいは" Garde-le secret(それは秘密にしておきなさい)
"、" Tu dois rester muet(口を閉ざしたままでいるのです) "とデクレッシェンドで繰り返して終ったりする辺り、この歌は子守歌なのだろうか?
「このおはなしはこれでおしまい。さあ、おくちをとじておねんねしようね」みたいな?
"But Thomas, ye maun hold your tongue, Whatever you may hear or see,
For gin ae word you should chance to speak, You will neer get back to your
ain countrie."〔参5〕より引用。
『けれどトマス おまえがみたりきくことは ひとにいってはなりません もし一言でもしゃべったら 二度と故郷へは帰れない』〔参2〕「訳詞の箱」より引用。
いや、怖いわ!子供がこれ聞きながら寝たら妖精の国に攫われて行きそうだわ!
CDブックはいいぞ。セシルさんご本人による挿絵がすごく美しいぞ。こちらの公式ホームページ通販で買えるぞ。
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参考・引用資料
1.『ロワイヤル仏和中辞典 第2版』(旺文社 2005)
2.『魅惑の物語世界 やまなかみつよしのバラッド・トーク』内『第13話 妖精の国に行った実在の詩人『うたびとトマス』』https://balladtalk.com/1-20/13-13.html
3.『魅惑の物語世界 やまなかみつよしのバラッド・トーク第2部バラッド詩』内『第114話 トマス伝説の変遷—第一部(スコットからキプリングまで)』 https://balladtalk.com/%E7%AC%AC111%E8%A9%B1%E3%80%9C%E7%AC%AC120%E8%A9%B1/333-114-pt1-scott-to-kipling.html
4."Allpoetry"内"Sir Walter Scott/Thomas the Rhymer" https://allpoetry.com/Thomas-the-Rhymer
5."Internet Sacred Texts Archive"内"The Child Ballads: 37.
Thomas Rymer" https://sacred-texts.com/neu/eng/child/ch037.htm
6."Wikipedia"内"Thomas the Rhymer" https://en.wikipedia.org/wiki/Thomas_the_Rhymer
7.『対訳 キーツ詩集――イギリス詩人選(10)』(岩波書店 2023第10刷)
8."Poetry Foundation"内"La Belle Dame sans Merci: A Ballad" https://www.poetryfoundation.org/poems/44475/la-belle-dame-sans-merci-a-ballad
9.『花形文化通信』内『【ポエトリーの小窓】その24「キーツのナイチンゲール」 文・武田雅子』 https://hanabun.press/2025/01/21/takedamasako_24/
10.『ノートブック』内『拙訳キーツ「美しき非情の女」my poor translation of "La Belle Dame sans
Merci" by John Keats』 http://eiji-takagi.cocolog-nifty.com/notebook/2023/01/post-ad9b60.html
11.『城西大学研究年報.人文・社会科学編18号 『つれなき美女』のロマンス』(城西大学 1994) https://libir.josai.ac.jp/il/meta_pub/G0000284repository_JOS-KJ00000176884
12.『立命館言語文化研究 33巻3号 スコットランドにおけるバラッド文化の展開 : スコティッシュ・アイデンティティ探求の諸相』(立命館大学国際言語文化研究所 2022) https://ritsumei.repo.nii.ac.jp/records/16890
13.『アーサー王神話大事典』(原書房 2018)
ネイティブのフランス語にボロ耳の日本人が無理矢理カタカナ読みを当てつつ訳したらこうなった。
訳にセンスがないのも、カナが発音とかけ離れてるのも仕様です(が、明らかな誤訳があれば指摘プリーズ)。
そしてこれ書いてる人のアーサー王伝説やバラッド関連知識は付け焼き刃のにわかです。
このページはあくまでCDブックや配信サービスの" Graal "買った人向け、仏語ド素人によるメモ書きであって、
著作権侵害の意図はありません。が、怒られたらすぐ消します。