Istoria〜Musa〜 ギリシア語メモ0.目次


Ιστορία
Μούσα

Ιστορία・・それは、『歴史ヒストリー
Ιστορία・・それは、『物語ストーリー
人から人へ 口から口へ
時を越えて継がれ行くもの


 『Istoria〜Musa〜』とは、
 Vagrancyが主催し、我らが歌姫志方あきこ様他素敵な作曲家の皆様の手で織り上げられたコンセプト・アルバム。ギリシア神話に登場する芸術と文芸の守護神たち、9柱の姉妹神の名を冠した曲集です。
 コンセプトに合わせて、志方さんが作編曲を担当された「Kalliope」と「Erato」を含む4曲の歌曲にギリシア語(デモティキ)コーラスが盛り込まれています。ちなみにMusa(Μούσα)は単数形で、全員まとめると複数形Κο. Mūsai(Μοῦσαι)/Δη. Muses(Μούσες)。

 つーことで、学生時代古典ギリシア語の文献を読む必要に駆られて勉強を始めた筈が間違えて現代ギリシア語を齧ってしまったお馬鹿による辞書もどきです。結局どっちも中途半端に手をつけて混乱しただけだったという。
 日本人の知ってるギリシア語の歌って“Τα Παιδιά του Πειραιά(邦題;ピレウスの伊達男たち/『日曜はダメよ』の主題歌)”ぐらいだよなぁと思ってたけど、まさか志方さんが歌ってくれるなんて。昔の大ボケは無駄じゃなかった・・と思いたい。

Καλλιόπη Κοカリオペー Δηカリオピ
 意味:美しい声の者
Ευτέρπη Κοエゥテルペー Δηエフテルピ
 意味:善い喜び
Ερατώ Κοエラトー Δηエラト
 意味:愛らしい者
Τερψιχόρα Κοテルプスィコラー Δηテルプスィホラ
 意味:楽しい舞踊
Κλειώ Κοクレィオー Δηクリオ
 意味:称える者
Θάλεια Κοタレィアー Δηサリア
 意味:花咲く
Μελπομένη Κοメルポメネー Δηメルポメニ
 意味:奏でるもの
Ουρανία Κοウーラニアー Δηウラニア
 意味:天の
Πολυμνία Κοポリュムニアー Δηポリムニア
 意味:多くの賛歌
※古典(コイネー)風読み=Κο  現代(デモティキ)風読み=Δη
※ギリシア文字は鋭アクセントのみの現代綴り。
※Τερψιχόρη
Κοテルプスィコレー Δηテルプスィホリ)とも。


 Istoriaのギリシア語。これも「軌跡」と同じくデモティキ(現代の口語)です。女神達のお名前書いたついでに一応補足すると、現代語と古典語では、同じギリシア文字でも読み方に差異があります。
 私のボロ耳のせいかもしれませんが、この『Istoria』にせよ、『Harmonia』の「軌跡」にせよ、志方さんのδの発音は[d]に聴こえます。現代語だと英語thatとかtheとかのthに近い発音なので、辞書もどきのルビはザ行を当てていますが、ダ行に置き換えた方が志方さんの発音に近いかも。δικαιοσύνηは「ズィキェオスィニ」より「ディキェオスィニ」、τραγουδάωは「トラグザオ」より「トラグダオ」。まあ、初めから外国語をカタカナ表記できないことは承知の上ですが。
 「ギリシア(語)」か「ギリシャ(語)」か、それが問題だ。原語に忠実にすんのがここ数年の流行?「エラス」とか「エリニカ」になっちまいやすぜ。Vagrancyの「ギリシャ語」に合わせるべきかもしれんけど、当サイトは今んとこ「ギリシア語」で統一。
 参考までに、以下どうでもいい豆知識。

現代ギリシア語古典ギリシア語の見分け方
 記号に注目。母音の上についてるのが´ばかりなら現代語。`とか^とか’もついてたら古典語(もしくは擬古典語)です。

現代語(デモティキ)母音の読み方
 短母音と複合母音:α=[a](ア)、ε,αι=[e](エ)、η,ι,υ,ει,οι,υι=[i](イ)、ο,ω=[o](オ)、ου=[y](ュ)
 二重母音:αυ[av](アヴ),[af](アフ)、ευ[ev](エヴ),[ef](エフ)

現代語子音の読み方
 β=[v]、γ=[γ],[j]、δ[ð]、ζ[z]、θ[θ]、κ[k],[kj]、λ[l]、μ[m]、ν[n]、ξ[ks]、π[p]、ρ[r]、σ[s],[z]、τ[t]、φ[f]、χ[x],[ç]、ψ[ps]、γγ[ŋg]、γκ[g]、γχ[ŋx]、μπ[b],[mb]、ντ[d],[nd]、τζ[dz]
 同じ子音が続いた時は、γγ以外は1音として発音する。
  例:θάλασσα(サラサ)

現代語のアクセント
 鋭(強勢)アクセント(´)のみ。アクセント部分を強く発音する。


古典語(コイネー)母音の読み方
 短母音:α=[a](ア)、ε=[e](エ)、ι=[i](イ)、ο=[o](オ)、υ=[y](ュ)
 長母音:α=[ā](アー)、η=[ē](エー)、ι=[ī](イー)、ω=[ō](オー)、υ=[ÿ](ュー)
 二重母音:αι=[ai](アィ)、ει=[ei](エィ)、οι=[oi](オィ)、υι=[yi](ュィ)、
       αυ=[au](アゥ)、ευ=[eu](エゥ)、ου=[ū](ウー)、ηυ=[ēu](エーゥ)

古典語子音の読み方
 β=[b]、γ=[g]、δ[d]、ζ[zd],[dz]、θ[th]、κ[k]、λ[l]、μ[m]、ν[n]、ξ[ks]、π[p]、ρ[rh]、σ[s]、τ[t]、φ[ph]、χ[kh]、ψ[ps]、γγ[ŋg]、γκ[ŋk]、γχ[ŋkh]、γξ[ŋks]
 子音を伴わない母音の上(大文字の場合左上)に有気記号(’を左右反転)がつくと、[h]行の音になる。無気記号(普通の’)がついていたら、そのまま読む。
 同じ子音が続いた時は、基本的に2音として発音する。
  例:θάλασσα(タラサ:タラッサ)

古典語のアクセント
 鋭アクセント(´)、重アクセント(`)、曲アクセント(^)がある。
 鋭アクセントは高く、重アクセントは低く発音する。
 曲アクセントは長く読む母音(長母音か二重母音)の前半を高く、後半を低く発音する。


ギリシア好きなら楽しいかもしれない資料
http://www.hellenica.de/Griechenland/Mythos/GR/Mouses.html
 ムーサたちの図像が紹介されています。

・『古代ギリシャの音楽〜ミューズへの讃歌〜』(グレゴリオ・パニアグワ指揮 アトリウム・ムジケー古楽合奏団)
原題:"MUSIQUE DE LA GRÈCE ANTIQUE Atrium Musicae de Madrid/Gregorio Paniagua"

 スペイン、マドリードに本拠を置く古音楽専門合奏団による、古代ギリシア音楽の再現を試みたCD。楽器の復元、音楽理論の研究、僅かに残る記録の断片からの想像を加えて組み立てられ、演奏されている。1978年の録音。2006年にリマスタリングXRCDで再版。お堅い学術研究というものではなく、かと言って娯楽性の高い音楽でもないが、古代の音色に思いを馳せるのは楽しい。楽器や曲目の解説も面白い。
 色々とプロフィールが気になるケタローさんが見つけられないCDって、もしかしてこれのこと?


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